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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

尺八奏者・藤原道山語る

2019-06-23 | 芸術・文化・科学・歴史

2019年3月27日読売新聞朝刊に、尺八奏者の藤原道山氏のインタビューがあります。
その記事は、アナウンサーの中井美穂さんが文化人との対談をするシリーズ企画「中井美穂の見染めました」としてのもの。「和楽器の貴公子」という二つ名を持つ演奏家の素顔に迫ります。

この藤原道山氏は、現在、ソロ演奏の他、「古武道」というバンド(チェロ奏者の古川展生、キーボード奏者の妹尾武両名ふくめた)活動もあったり、じつに多彩なジャンルの音楽家たちとコラボレーションをしたりするのが特徴。まさに和楽の異才。邦楽もジャズもロックも、そしてポップスも、とにかくなんでもござれの御仁なのですが、じつは意外なところにも参加していたりもします。

その公式ホームページのディスコグラフィでは、アニメーション作品への参加は、映画「手塚治虫のブッダ」や高橋留美子原作の「境界のRINNE」しか紹介されていません。ところが、ある特定マニアック作品の愛好者ならば、すでにご存じのはずですよね?──そう、アニメ「神無月の巫女」なんです!

アニメ「神無月の巫女」の音楽担当は、こちらも言わずと知れた作曲家の窪田ミナさん。
NHK大河ドラマ「ゲゲゲの女房」の音楽担当でも有名な。千歌音のテーマなどの繊細かつしなやかなピアノ曲などは窪田さんの音楽的感性のたまものというべきですが。神無月の巫女BGMの一部の尺八演奏は、この藤原道山氏なのですね。アニメ公式サイトにも、収録当時の報告があります。「担当Hの業務報告 第十五回 (2004年12月7日)」

尺八演奏は、アニメCM前後のアイキャッチや、ツバサのテーマなどがそうです。
あいにく神無月の巫女のサントラは旧版DVDの初回特典付録でして、市販されることがなかったせいか、あまりこの事実が知られていないのは惜しいですね。このアニメBGM考察については、アニソン専門研究ブログ「アニメソング綺譚(きたん)~レビューの覇道~」さんのレヴュー 「『神無月の巫女 オリジナルサウンドトラック』レビュー」全三回が秀逸ですので、そちらを参照なさってください。BGMが使用されたアニメの箇所が詳細に分析されていて、すばらしいです。

さて、今回の新聞紙面での氏の対談に戻りますと。
東京芸大ご出身で、人間国宝山本邦山に師事。2001年、すでに十代にしてCDデビューを果たしてから、活躍すさまじい。祖母が筝曲家、両親からはジャズやロックを聴かされ、子ども時代はリコーダーでアニメ主題歌を吹いていたという。なんと、今でいうなら、ニコニコ動画の歌ってみた、演奏してみたの人(?)でした。尺八をはじめたのは十歳。現在は、精力的な演奏活動のかたわら、大師範として弟子の育成にもあたっています。

尺八テクニックのポイントは、息遣い、指捌き、そして首の振り。
息で音色を変え、指で旋律を奏で、首で音程の変化。この微妙な組み合わせ。演者の気持ちが直に演奏に出てしまいやすいのだそうです。

歌舞伎や能楽などの伝統芸能の世界はそうですが、新進気鋭のホープが出てくると、その世界の広報活動を期待されがちです。
道山氏の場合、尺八から「時代劇の一場面の効果音といったあまり好ましくないイメージ」を覆したかったとのことで、デビュー当時はあえて、尺八らしくない音色にしてみたのだとか。たしかに、木枯らし背負った虚無僧すがたの浪人がさも寂しげに吹いてそうなイメージがありますよね。テレビの時代劇が少なくなっているので、他のジャンルに進出したのは、戦略的によかったのかもしれないですね。

音楽ジャンルの型破りといいますか、ミックスといいますか、幅広い分野に尺八の音を介入させたその音楽活動は、古典曲の演奏や後進の育成をおろそかにはしていないことで、あまり批判をうけてはいないとされています。そういえば、ネットで検索したら、NHK教育のこども番組で、かなり愉快なすがたで出演されていましたね。歌舞伎でもアニメを題材にすることも珍しくなくなってきたので、これから伝統の世界にも新しい挑戦が生まれて、文化がいろいろな方向へ開花していくのかもしれないですね。


ところで、皆さんは和楽器に親しんだことがありますか?
私の卒業した高校には全国的に実績のある邦楽部があり、その部員で同級生(かなり美人な方です)が、いまでも長唄と三味線奏者として活躍しています。母校の大学には邦楽演奏の夏期講習がありまして、参加したかったのですが、オーケストラ形式で最後に演奏会があるというので、音感のない私は断念してしまいました。よくよく考えたら、貴重な体験だったので、単位はとれなくていい覚悟で、試しに楽器に触ってみたかったなという気がしないでもありません。そんな私は、家になぜか横笛(家族の誰かが京都旅行のお土産で買った…?)があったので、子どもの頃、吹いては遊んでみたことがあります。その音色は…もはや語るまでもないですね。まずは、小学生時代のハーモニカかピアニカからやりなおさないと…。吹奏楽器は呼吸をつかうので、健康にいいような気がします。


*神無月の巫女BGM集*
神無月の巫女の歌姫・KOTOKO嬢の歌う主題歌&挿入歌や、窪田ミナさん作曲のBGMについて。ED「agony」が動画サイトで謎の人気をあつめていますが…。


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