さて、舞台監督として頑張っていた演目は「美女と野獣」。
原作ではなく、ディズニーのアニメーションを下敷きにしていました。
さて、今回の演出(僕じゃありません。多少強引なところはあれど気のいいバスケ部のO君です)は、
残酷?なことに野獣役と変身が解けた後の王子役を分ける、という配役を採用していました。
さて、野獣役はともかくとして、王子役はほんとに良くお似合いのT君でした。
彼は、当時はやっていたモード系のファッションが良く似合うお洒落さんで、女の子のようにきれいな顔立ちで、華奢で、ひげもほとんどないような、王子タイツ?でさえ似合いそうなほどの美少年でした。
彼は舞台美術と兼任で、美術の方は連日ほんとに良く頑張っていましたが、稽古のほうは逃げ回っていました。
そんな逃げ回るT君を捕まえて1度稽古をした演出は、あくまで嫌がる彼に嫌気が差したのか、本気でこの演技はやばい、と思ったのか、突如首を言い渡し、
なぜか僕に代役が振られたのでした。(個人演技賞なんて取るんじゃなかった・・・。)
ギャグでベルが男になっているわけでもなく、ベル役の子はそれなりにかわいい子で、頭も良いしマジメなので、演技もきちんとしてくれていて好感触でしたが、なにしろ王子役です。
いじめられっこや悪役ならともかく、醜い野獣からもとのハンサムな王子になれと言うわけです。
・・・嫌ですよね。あまつさえ元のT君が逃げ回ったのもわかります。
ただ、僕は舞台監督でしたし、芝居を壊すことはしたくなかった。
最初に野獣に変えられる部分と最後の「ベル、僕だよ」だけでしたから、セリフは少ないし、稽古にもそんなに時間は取られない。
ゆえに生涯8度目の俳優をやることになるのでした。
さて、王子役をやることになりましたが、舞台監督としての仕事は相変わらずです。
劇団の舞台監督のように、音響・美術・照明などそれぞれのセクションの仕事の進行をチェックし、(なぜか)野獣とベルにパーティーダンス(ワルツを基にした)を振り付け、非常にあわただしく当日を迎えました。
ちなみに、午前中はドライアイスマシンのために大量のお湯を沸かして魔法瓶に詰める仕事で手一杯でした。この日、人生で初めて栄養ドリンクなるものを飲んだと思います。
そして本番、僕は死にかけることになります。
ドライアイスは何の為に使ったかというと、もちろん野獣から王子への変身シーンのためです。ストロボをたき、目潰し(舞台奥から客席に向けられる眩しいライト)をして、ドライアイスで白い霧を作り、2人が入れ替わる段取りです。
当然地を這って出演します。
そうです。
理科の成績がよかった皆さんはお分かりだと思いますが、ドライアイスとは二酸化炭素のこと。
当然空気より重いのです。
二酸化炭素の充満する、床を這い回っていた僕は、吸えども吸えども楽にならないという水中で溺れているような苦しみを味わいました。
あれ、一瞬パニックになります。
普通に呼吸しているつもりなのに、どんどん苦しくなっていくのです。
とはいえ、なんとか明転したのち、芝居をする僕の演技は、・・・よかったんです。
映像で見ると、去年の芝居臭さが抜けて、ものすごく自然にベルを抱きしめていました。
ベル役の子に片思いしていた友達の話を聞き、姫川亜弓さながら恋する男の眼を盗んでおいてよかったです。
高2当時は当然彼女はおらず、苦肉の策で友人の恋(実らず…)のお手伝いという役作りのおかげで、しっかり集中して気持ちを込めて台詞を言えました。
このときの成果は、去年というか一昨年の失敗を踏まえて、もう一人の自分(客観的に舞台上の自分を見つめる眼)が出現したことです。
舞台監督として舞台の進行が気になって中三のときのように失敗したくない、と思い、入念に準備し、イメージトレーニングしていた成果だったのでしょうか。
ビデオの映像と自分が演技として思い描いていた映像がぴったり一致したのです。
演技しながらもう一人の自分として外から見る自分の映像とぴたり重なっていました。
多分、これ以上の演技は今もまだやれていない気がします。
自分の中で最高の演技を挙げろと言われたらこれを挙げますね。
さて、後日談です。
舞台監督としての頑張りは舞台美術賞として結実しました。
美術デザインというよりは総合的な賞として設定されていたのです。
そして、気になっていることがあります。ものすごく。
王子役の最後の衣装は、わざとぼろぼろのブラックジーンズを膝までで切ったものをはいて、上は白いシャツだったんですが・・・、
ジーンズのチャックが開いていたのです。
舞台袖で着替えたのですが、転換など忙しいときが続いたので、そこのチェックを怠ったのです。
舞台の映像を見る限り、チャックが開いていることは全然分からないのですが、
王子役として衣装のままで体育館から出る時に、写真を一緒に撮って欲しいと(女の子に)言われて、
うれしがりの僕は、撮ったのです。(たいした衣装でも王子役にぴったりでもないのに)
そのときの写真のズボンのチャックが開いていなかったかが、とっても心配なのです。
チャックが開いている王子なんて、おもいきり夢を壊しますもんね。
たとえ僕が小栗旬だったとしても興ざめでしょう・・・。
もし万一この記事を見ていて実際写真をもっている人はこっそりメッセージをください。
わりときつい腰周りだったので、上のボタンが閉まっている限り開いているようには見えなかったと思うんだけれど・・・。
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