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第1話『陰で見守る劇作家』その2

 演出と衣装の間で話が進む。
 話題のシーンは、ダイキ・リュウキのキキ(危機かも)コンビとイズミさんが共演するシーンで、ここがこの作品最大の見せ場だ。

 元ネタのウルトラセブン「狙われた街」(監督・実相寺昭雄、脚本・金城哲夫)でのメトロン星人との戦いを再現して欲しいのだ。
 実際には用務員の川上リュウキと不良生徒大田ダイキの戦いなのだが。

 稽古場で自由に作ってもらうために、ここはあまり詳しく書かなかった。わざわざ川上の名前も、本名の龍騎(リュウキ)では出さずに(他は皆面倒だから本名をそのまま使った)暖(だん)と改名してモロボシダンっぽくしているのに、二人そろってブツブツ言う。 

 そろそろ状況説明をしないと分かんないよね。

 うちの高校は毎年三年生が相当に気合の入った演目を文化祭で上演する。ブロードウエーかウエストエンドか渚高校かっていうぐらいの。
 実は、クラスの三分の一ぐらいは模擬店をやりたがっていたんだけど、演劇派が多数決で押し勝った。
 実際、夏休みはプライベート無しで、全時間芝居に突っ込むって感じだ。
 
 何を隠そうこの俺、安藤倭人(アンドウヤマト)は二年の時に舞台芸術賞を取った2年5組「美女と野獣」の舞台監督だった。
 それで、最初から進行役に入り、ガンガン意見を言ってたら俺が台本を書く事になった。劇作家ってほどじゃないけど。
 学校中をロケハンで巡り、一番端っこの階段の四階で起こる、よくある学園モノの「タバコを吸う不良たち」っていうシーンから書き始めた。

 タバコを吸ってる不良役がダイキ。まあ似合う。
 だから、短ラン制服の裏には猛虎の刺繍っていう衣装はバッチリで、そりゃあ怖い先輩に見えることだろう。
 
 リュウキは用務員さんという設定。
 こいつも背が高いし顔おっさんやし、なかなかいい配役なんだけど、いかんせん動きがふらつくし、基本猫背なんだよね。
 高校生らしくグデーってしてて、なんだか締まりがない。いや、はっきり言うと、だらしがない。

 まあタバコの煙に仕込まれた薬で高校生化する(つまり幼稚化する)設定だから、いいっちゃいいんだけど。
 
 でも今の話は、衣装兼任のイズミさんが演じる先生が不良のダイキを注意してたら、歯向かうから用務員リュウキが成敗しに来るシーン。
 だから、しゃんとして欲しいんだけどね。
 
 で、そんなに普通のお芝居じゃあ面白くないし、SFテイストも加えたいなーって思って、大好きなウルトラセブン第八話「狙われた街 」を下敷きにした話を作ったんだ。
 タバコに混ぜられた赤い薬は人を怒りっぽく暴力的に変える力があって、地球人の信頼を打ち砕いて自滅させようとするメトロン星人の謀略だった、っていう話。 

 すごいだろ。ちゃぶ台を挟んで向かい合うモロボシダン(セブンに変身する前の人間の姿)とメトロン星人っていうシュールな場面が有名だけど、地球人が自滅するのを待つ敵っていう発想とか見事だよね。

何より、異邦人であるセブン自身が敵と戦っていくこと自体が、果たして正しいことなのか迷いながら話が進行していくのが、多くのファンを集める理由だと思う。
 

 
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