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『ぐるぐる』紹介、その4:演出家インタビュー

恒例の演出家インタビューです。みなさまご承知の通り、自作自演のインタビューですが,まさに「演出の目」が明かされます。

ー今回の作品製作の経緯を教えてください。
先週の氏田さんインタビューでかなり明かされましたが、前回の公演『七転罵倒』が俳優が自分に取材した作品で、『あずき粒』が小説の演劇化だったので、何らか今までの集大成を創りたい気持ちになってはいました。俳優が自分のことを語るように見せかけて、人間存在の普遍的な、本質的な何かを表現したい、と思いました。

ー作品の気に入っているところは何ですか?
一言でいうと、運命を受け入れないところですね。今、「演劇入門」の授業を担当している枚方なぎさ高校で、2006年のシェイクスピア『ジュリエット-Julie Capulet-』をリライトしようとしています。この作品は「ロミオが出てこない」「ジュリエットが複数人いる」という事に焦点が当たりがちですが、当時14歳だった妹に当てた「人生を切り開くのは、自分だ」というメッセージが根幹にあります。通常『ロミオとジュリエット』は運命に翻弄される若い男女の物語と捉えられがちですが、ジュリエットはそうじゃない。言い寄ってくるロミオに対して、「いや、結婚してからじゃないと・・・」と言い切れる彼女は、自由意志を最大限用いている信念の人です。
今回の作品も、入院と手術によってうっすらと「死」が見えた時、あるいは世間でも年齢を重ねた時に、結構「死」は当たり前だから、もうすぐ「死んじゃう」からと“諦める”ことが言わば「カッコいい」と思われている気がします。「死を受け入れる」とか「死ぬ運命だった」とか「前世が・・・」とか。
でも僕がこの作品を構想した時に最初に浮かんだのは聖書の“思いもよらないことがいつ誰にでも起きる”という言葉です。いわゆる運命予定説がガラガラと音を立てて崩れ去る言葉ですね。不慮のアクシデントは誰にでも降りかかる。「死」は生者にはやはり受け入れ難い不合理なもの、理不尽なものだと思います。それで、そうしたものが見えたとしても、ちゃんと「生」を全うする。主人公は役者だから、演劇をする。「もう人生の終わりが見えたから・・・」と言わずに次の作品創作へと向かう、そういう感じがとっても好きです。

ー今回、演出にとって挑戦となっていることはありますか?
発話に今までこだわってきていて、今回の作品は集大成にしていきたい、と思っています。朗読、講演、モノローグ、ダイアローグ、何気ない会話、演劇のせりふ、日常生活での台詞の引用。その全てを変えてみたい。でも実は私たちは何気なくそれをやっています。子供に対する話し方、親に対する話し方、配偶者に対する話し方。人が違えば、発話も変わってくる。それをどう表現するかですね。
また、 2006年の『ハーフ-Where the heart will be-』も、演じる俳優自身の事に見えるオートフィクション形式で書いた作品で、今回、再挑戦することになります。小劇場演劇が知り合い中心に観に来てくださることを逆手に取って興味を引く手法です。この方法の良いところは、劇団テーゼである「日常の中の非日常」という事をストレートに押し出す事ができる点です。本当にある生活、人生、日常から物語を紡ぎ出すので、その新鮮さを失わないように、その日常感、共感の土台となるナチュラルさを失わないように、と思っています。

ー最後に、観客の皆様に一言!
今回の試演会で読まれる聖書のもう一つの言葉に“泣くのに時があり、笑うのに時がある。“があります。
今の時代、戦争・地震・パンデミック、暗い話題には事欠きません。でも、私たちはそうした中にあって、一人一人がいろんな人生の困難に直面し、対峙しています。私たちが内にこもってしまう時、孤独を感じるかもしれませんが、ふと目を上げると、他の人も独りで闘っている。
そんな風に他の人の人生を垣間見ることができる時、それが演劇を観る時なのかもしれません。
いつ観るの?今でしょ!(東進の林修さんすみません、借ります)



ソリテュード<孤独>シリーズ試演会
“あなたは一人だ。そして、私も一人なんだ。”

『ぐるぐる―countless traces—』(氏田敦『入院メモ』より)
“ぐるぐる、てくてく。よりみち、まわりみちして、歩いてく。”
 作:クスキユウ 演出:松浦友 出演:氏田敦(劇団冬芽舎)

“思いもよらないことがいつ誰にでも起きる”
入院と手術を機に声の不調に苦しみ、見えざる“死”と対峙する俳優。
今まで演じたキャラクターと共に闘い、無事に本番を迎えるまでを、チェーホフや聖書、また尾崎放哉、小林一茶の俳句などの引用と共に上演。
演じること、生きることの本質を、多様な発話によって表現する。

2022年5月14日(土)16:30開演 (第39回5月祭参加)
(開場は15分前、上演予定時間20分)

<会場>枚方市立楠葉生涯学習市民センター3階視聴覚室
 〒573-1118 大阪府枚方市楠葉並木2丁目29-5 
<アクセス> 京阪樟葉駅から東へ800m:徒歩約10分
京阪バス、あさひバス停 徒歩約2分
<参加費>500円 
高校生以下無料(要学生証、小学生以下は保護者同伴が必要)
<予約・問い合わせ>
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