goo流・キャラネタブログ

ニュースなどを扱います。
あと場合によっては小説というかお話を書く事もあるでしょう。

青春の嵐 第10話「ゴールデンウィーク最終日の騒乱」

2015年11月19日 20時46分39秒 | 青春の嵐
迎えたゴールデンウィーク。この年のゴールデンウィークは例年としては珍しく
十日間にも及ぶ。敬二の方も最初の数日は気を揉んだ。だが、日数が経つにつれ
半ば安心していた。これならもう連休明けは大丈夫である。・・・そう思った矢先
ゴールデンウィークも最終日を迎えた日の昼前の事である。
実家の自室でネットでもやりながら過ごしていると、
突然自分のスマホに警察署から電話がかかってきたのである。
(これは、よもや!?)
敬二は悪い予感を感じつつ、スマホを手に取り液晶画面越しのスイッチを押して耳に当てる
すると、予感は的中だった。警察署の職員が言う事には
尾場寛一が、年が自分より上の高校生ひとりをリーダー格とする少年グループ数名と
やり合ったというのである。それを聞いて驚いた敬二は直ちに車に乗り警察署に向かった。

敬二の中では思った。寛一が目上の少年グループとやり合ったと聞いたのだ。
流石にボロボロの姿では無いだろうかと考えた。
あれこれ考えながら警察署に辿り着く。
そこで受付の職員に尋ねる。
「貴方が尾場寛一くんの通ってる学校の先生なんですね?」
「はい。私は新潟市立豊栄小学校の石原敬二です。それで尾場は何処に!?」
職員に案内されて行くとそこに寛一は居た。寛一は特に何処にも怪我した形跡は見られない。
「尾場っ!一体これはどういう事だッ!?何でこういう事になったッ!?」
怒鳴る敬二に対して、寛一は、忌々し気な表情で呟くように返答する。
「あいつらが、オレがショッピングセンター内を歩いてたら突如やって来て刃物をチラつかせて
"金を出せ""金を出さないと痛い目に遭うぞ"って囲んで来たんだよ。
だから、ボコボコにしてやっただけだよ。なのに、この無能で税金泥棒なこのオッサンは
強盗やった向こうを罰せずに、こっちを悪者扱いしやがったんだよ。」
それを聞いて、トレンチコートを羽織った如何にも漫画やアニメに出てそうな
ステレオタイプの格好の警部と思われる中年の男性が思わず気色ばんで声を荒げる。
「無能で税金泥棒のオッサンとは誰の事だ、こんガキが!」
寛一も負けじと逆に相手を舐め切った態度で、すかしたように言う。
「お前が駆けつけるのが遅いのが悪いんだから仕方無かろうが?
文句あるならその弛んだ腹を何とかしろや。オレの通ってる学校の石原なんか
アンタのような不健康な体型とは間逆に位置するぜ。
まったく、強盗と被害者のこっちの区別もつかんとはココの警察署長も
さぞ苦労が耐えんだろう。こんな給料泥棒じゃあ。」
「なんだと、コノヤロー!」
このやりとりを聞いて周囲は、思わず呆然としある者は笑いを堪えるので精一杯だ。
敬二は、二人の言い争いを聞いて唖然としながら、事の真相を警察の関係者に訊く。
事の発端は、寛一の言うとおり向こうの少年グループがナイフを片手に
寛一に金の無心をして強盗を試みた事が原因だし、その事は
店内の防犯カメラにも一部始終が録画されているし、その日の店内に居た
客の一部と従業員からの目撃証言も得られている。
ただ問題なのは寛一がそれで怯むどころか、彼らを全員その場で
虫の息になるほど完全に叩きのめした事だ。
そして店内に警察の関係者が駆けつけたのが寛一に少年グループが全員
叩きのめされて随分経ってからの事である。
では、その間にお店の者とか警備の者とかは何をやってたかというと
遠巻きに様子を見ているだけで止めに入るとか少年グループを力ずくで店外に追い出すなり
警備室に連行するなりする訳でも無く、寛一からすれば一向に頼りにならないようだった。
無論、これも防犯カメラには録画の証拠となっている。
結局、この防犯カメラ映像が日が経つにつれ、なまじ記憶が曖昧になりやすくなり
証言が二転三転しやすい人間より顛末を見届けた真の証言者という皮肉となり
加害者の少年グループを刑事起訴に追い込み、店内で起こった事件において
何もやろうとしなかった防犯カメラ映像内の店の従業員と警備員が
後日、店と店と警備員の派遣契約を請け負っている警備会社から解雇通知を受け取る結果となった。

そしてこの警部はというと、何で現場への到着が遅かったのかという寛一の質問に対し
当初は新潟駅前で起きた事件に対処したから遅れたと言ったが
すぐに若い女性職員から「貴方は、今日朝から病院に健康診断に行ってたのでは?」と
言われ、すぐに答えに窮した。やがて寛一に対する返答が二転三転した挙句、
朝、行きつけの病院での健康診断を受けてからそのまま職場の警察署に行くはずだったのに
途中で喫茶店に寄りそこで砂糖を沢山入れた紅茶を飲んでくつろいでて、
その店を出た所で寛一の件の報せを警察署のオペレーターから受けた事がバレる事態に陥った。
要するに、本当は朝、定期健診に行ってそのまま職場に行けば良かったモノを
途中で寄り道してサボりをした挙句、起きてもいない新潟駅前での事件をでっち上げて
折角、店内に居合わせた他の客か従業員と思われる通報で
ショッピングセンター内で少年グループに囲まれていた寛一への救援に間に合わなかった言い訳に
しようとしたのである。それだけでも遺憾な事なのに素直に非を認めず
言を二転三転させるという、本来、ペテン師を逮捕するべき立場にある者がペテン師まがいのような
舌先三寸で寛一の事を言い包めようとしたのである。
寛一はもはや怒る気も失せ苦笑いし、早くから警察署内に居た母加奈子は呆れ
他の職員は、ある者は軽蔑しある者は詰る。
敬二に至っては、大いに憤慨する。
(こんなヤツなんかと同じ公務員とは思いたくない)
結局、この警部はこのあと諭旨免職処分へと追い込まれて行ったのである。