太平洋を望む美しい景観の港町・鼻崎町。先祖代々からの住人と新たな入居者が混在するその町で生まれ育った久美香は、幼稚園の頃に交通事故に遭い、小学生になっても車椅子生活を送っている。一方、陶芸家のすみれは、久美香を広告塔に車椅子利用者を支援するブランドの立ち上げを思いつく。出だしは上々だったが、ある噂がネット上で流れ、徐々に歯車が狂い始め―。緊迫の心理ミステリー。
感想にも書いたことだけど、現状に満足し、精一杯生きている人間は、ユートピアなどないことを重々知っている。
これは、この作品に限ったことじゃないが、現状を必死かつ満足に生きている人間は過去の栄光に縋ったりはしない。逆に過去の栄光(武勇伝)ばかり語る人間は、現状に満足していないか、怠惰な生き方をしているのであると私は思う。
比較論では決して幸福にはなれないことを教えてくれる一冊。
『ユートピア (集英社文庫)』の感想
「地に足付けて生きている人間は、この世界にユートピアなどないことを知っている」
この作中の言葉が世界観と筆者の主張全てであると感じた。
ちっぽけなマウントの取り合いほど見苦しいものはないと教えてくれた。
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