がんステージIVの坂本龍一、パートナー女性との“覚悟の入籍”を決断か
現在のパートナーとの入籍を考えているという(時事通信フォト)
白髪の男性がピアノの鍵盤にゆっくりと両手を乗せる。頬は心なしかこけ、鍵盤をたたく指にはしわが増えた。演奏は体力を使う。短時間しか弾けない日もあるが、何かに導かれるように連日ピアノに向き合うという。 【写真】元妻・矢野顕子の美しき横顔。他、戦メリでのビートたけしらとの会見。忌野清志郎との懐かしきツーショット
男性は坂本龍一(70才)。6月7日に発売された月刊文芸誌『新潮』(7月号)で始めた連載で、自身のがんがステージIVであることを明かし、包み隠さず病状を綴ったことで、日本中に衝撃を与えた。同誌は発売直後から売り切れの書店が続出しているという。 連載のタイトルは、『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』。一見、悲観的に読める言葉だが、坂本は別の思いをこのタイトルに込めているのかもしれない。現在の坂本は音楽漬けの日々を送っている。それはいままでにないほどに──。
坂本を病魔が襲ったのは2014年のことだった。病名は中咽頭がん。坂本は予定していたコンサートやアルバム制作などを中止して治療に専念し、放射線治療によってがんは寛解した。 だが復帰から5年後の2020年6月、再びがんが見つかる。病院での検査を受け、直腸がんと診断された。帰国後に診てもらった病院で、坂本は衝撃的な事実を告げられた。 「何も治療をしなければ余命半年」「強い抗がん剤を用いても、5年生存率は50%」 セカンドオピニオンでは、がんが最も進行した段階を示す「ステージIV」であり、両肺にも転移していることが判明。坂本は昨年1月に手術を受けた。 手術は無事に終わったものの、両腕には点滴、腹には5本の管を入れた闘病生活が始まった。さらに、傷口が回復するにつれて別の問題に悩まされた。1週間ごとに新たな合併症が見つかる状況に陥ったのだ。食事も喉を通らずに、体重は10kg以上減少した。体力の回復を待って、その年の10月と12月には、2回に分けて両方の肺に転移したがんを摘出する手術を受けている。 「手術によって、いま取り除ける腫瘍はすべて切除できたようです。ただ、病巣はまだ残っていて、増殖を続けている。今後は薬による治療を続ける必要があるそうです」(坂本の知人)
4人の子供とパートナーに
坂本は現在、日本の自宅マンションで生活している。そして坂本は、プライベートでも大きな決断を下していた。 過去に2回の結婚と離婚を経験している坂本には、現在、4人の子供がいる。東京藝大在学中に結婚した一般女性との間に長女。1982年に結婚した矢野顕子(67才)との間には矢野の連れ子と、ミュージシャンの坂本美雨(42才)。そして、現在のパートナーであるA子さんとの間には息子が生まれている。
「A子さんとの出会いは1987年。彼女は舞台美術を手がけるアーティストで、坂本さんがツアーコンサートの美術担当に抜擢したことがきっかけでした。1990年には2人の間に子供ができましたが、矢野さんは2人の交際を認めつつも、離婚はしなかった。 矢野さんと別居したのは1992年、正式離婚は2006年ですが、その間もA子さんとの関係はずっと続いていました。2014年のがん判明からこれまで坂本さんの闘病を支えてきたのはA子さんです」(芸能記者) もし未婚のまま自分が死ねば、遺産の相続などさまざまな問題が発生しかねない。そのため坂本は、近々A子さんとの入籍を考えているという。A子さんとも子供たちとも、少しでも長くいたい。曲作りのためにも、1分でも長く生きたい。だが葛藤もある。
医療の発達により人間の寿命は画期的に延びた。日本では「人生100年時代」と当たり前のようにいわれるようになったが、人類の長い歴史からみれば、ごく最近のことにすぎない。 「坂本さんはつらい治療を行ってまで、無理して命を延ばす必要があるのか。自然に任せて、最小限のケアだけで最期を迎えることが人間の生き方なのではないかという考えも持っています。その一方で、自分は外科手術や化学療法など、あらゆる手段を尽くしてきた。現実を受け入れて達観しているとはいえ、死に方に関する考え方の矛盾に悩むこともあるようです」(前出・坂本の知人) がんと闘うのではなく、がんとともに生きる──覚悟の中で坂本はどんな音楽を紡ぐのだろうか。
山下達郎、沖縄の歴史に独特な思い 新譜「SOFTLY」発売で独占取材 全国ツアー、那覇で11月最終公演
6/17(金) 7:32配信
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オリジナルアルバム「SOFTLY」をリリースする山下達郎(提供)
世界的に再評価の機運が高まる「シティポップ」を代表するアーティスト山下達郎が、11年ぶりのオリジナルアルバム「SOFTLY」の発売を前に沖縄タイムスの単独インタビューに応じた。さらに、山下が在籍したシュガー・ベイブをシティポップの“始祖”と位置付け、山下をシティポップの“最重要人物”と指摘する栗本斉(「『シティポップの基本』がこの100枚でわかる!」著者)がレビューを寄せた。(東京報道部・照屋剛志) この記事の他の写真・図を見る 【東京】22日に発売する11年ぶりのオリジナルアルバム「SOFTLY」について、山下達郎は「時間をかけ、試行錯誤して作り上げた。聴き手それぞれの感性で楽しんでほしい」と呼びかけ、11日から始まった全国ツアーの最終地に沖縄を選んだことに「リゾートのイメージもあるが、沖縄が歩んだ独自の歴史も大切にしたい」と語る。
アルバムのタイトル「SOFTLY」には「動乱の時代を、音楽で優しく柔らかく包み込みたい」との思いを込めた。収録は全15曲。映画「未来のミライ」のオープニングテーマとなる「ミライのテーマ」、エンディングテーマの「うたのきしゃ」のほか、映画やテレビドラマの主題歌、CMソングなどの力作が並ぶ。 CDだけでなく、アナログ・レコード、カセットテープもそろえた。自身はレコード派という山下は「時代によって聴き方も変わる。好きなスタイルで聴いてほしい」。CDの初回盤には「PAPER DOLL」「パレード」などのライブ音源7曲も収録されている。 ジャケットは漫画「テルマエ・ロマエ」で人気のヤマザキマリが手がけた山下自身の肖像画。イタリアフィレンツェで油絵を学んだヤマザキに自ら頼んだといい「本物の絵はもっとすごいよ」と笑う。 ライブツアーは11日の東京を皮切りに24都市で47公演を展開予定。最終地の沖縄では11月20、22日、那覇文化芸術劇場なはーとで開催する。 「高気圧ガール」など数々の沖縄キャンペーンソングを手がけてきたこともあり、「沖縄は身近な存在」とする。「琉球王国から続く歴史や文化、沖縄戦や日本復帰などの経験も重く受け止めている。独特な思いがある」と語った。 今後の音楽活動について、来年は70歳の節目を迎えるとし、「自分のやりたいことをやるだけ。できる限り現役を続けていきたい」と話した。 詳しくはオフィシャルサイトから https://www.tatsuro.co.jp/ 王道とアップデートに絶妙さ
■栗本斉 「SOFTLY」レビュー 待望。その言葉がこれほど似合う作品はあっただろうか。「SOFTLY」は、11年ぶりに届けられた山下達郎の新作である。もちろん、この11年の間には新曲を届けてくれていたし、コロナ禍になるまでは毎年のようにコンサートツアーも行っていた。でもやはり、彼の音楽はアルバムという形でじっくりと聴きたい。 そして期待にたがわず、「SOFTLY」は、あの伸びやかな歌声をたっぷりと堪能できる傑作に仕上がっている。トレードマークの一つであるアカペラのコーラスで幕を開け、現代的なダンスサウンドの「LOVE’S ON FIRE」から、軽快な映画「未来のミライ」の主題歌「ミライのテーマ」へとなだれ込む。「CHEER UP! THE SUMMER」や「LEHUA’ MY LOVE」などは、これからの季節にドライブしながら聴きたいサマーソングの決定版と言ってもいいだろう。熱唱する「YOU(ユー)」には思わず心を動かされるし、英語で歌う「ANGEL OF THE LIGHT」のコーラスワークには思わずほれぼれする。ラストの「REBORN(リボーン)」を聴けば誰しも、彼の歌の表現力と説得力に圧倒されるだろう。 山下達郎ほどのキャリアがあれば、マンネリと言われてもおかしくはない。その半面、新しいことをしようとすれば、どこか無理に感じることもある。しかし、本作では王道の“達郎節”を聴かせてファンを安心させると同時に、プログラミングされたリズムやシンセサイザーの音色などに流行のサウンドを取り入れてアップデートされている。そのあたりのさじ加減も絶妙だ。 また、彼なりの社会派メッセージが盛り込まれているのも特徴である。その顕著な例が、「OPPRESSION BLUES(弾圧のブルース)」だ。世界中で起こっている紛争や圧政に対するメッセージソングで、「どうして? 何も、出来ないの?」と問いかける。 「夏だ! 海だ! タツローだ!」なんていうキャッチコピーとともに耳に心地よいポップスを歌うスタイルは健在ながら、50年近いミュージシャン人生で培った深みや奥行きを感じさせる楽曲群。まさに、日本のポップスの金字塔と言える傑作である。 (音楽と旅のライター・選曲家)