関川夏央氏は、言うまでもなく 谷口とのコンビで、「事件屋稼業」・「『坊ちゃん』の時代」などの、名作を生んできた人物である。
しかし、関川氏は「大うそつき」である(笑)。
関川は、彼のエッセイ(対談も彼の創作?)のなかで、谷口との出会いを、完全に、フィクション化しているのである。関川氏の書いた「谷口先生登場」のシーンを、集めてみた。
途中、谷口先生にかなり「失礼」なことも書いてあります>すみません。 m(__)m
80 単行本「無防備都市」
日本・フィリピンの混血。10年にわたるヒッピー生活を送る。・・・・・・・。香港で関川と出会い、その後日本でオモチャ屋を開業し、失敗。生活のためマンガ家となる。
80 単行本「リンド3! vol.4」
47階に、ふたりの男がやってきた。
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その窓のもたれ、ビールのグラスを手にした白系ロシアの殺し屋のような痩せた男は、谷口という名前だった。
もうひとり、・・・・・・太った男は関川といった。
ふたりは低い声で話はじめた。
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関川 「漫画パンチの編集部から、動物の話を描きたがっているが、物語に苦慮している描き手がいる。ひとつ台本を書いてくれないか、といわれたのがキッカケだった。」
谷口 「俺は動物・・・・・・・ま、哺乳類が描きたくてしかたがなかった。君は、ところが、人間しか書きたくないという」
関川 「そうだ。はじめて会ったときは、互いの敵意の火花で、タバコに火がついた」
谷口 「いまは・・・・・・?」
関川 「いまも・・・・・・・戦いだろうな」
谷口 「(笑)結局、しだいに、要求はなにもない、のようなスタイルに変化していった」
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81 雑誌「ふゅーじょんぷろだくと」掲載 「谷口ジローとの4年間プラス2時間」
日本・フィリピンの混血。10年にわたるヒッピー生活を送る。その後日本でオモチャ屋を開業し、失敗。生活のためまんが家となる。
(谷口に関川がインタビューの形式。)
関川: 関川です。
谷口: 谷口です。
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編集者: あのー、おふたりは初対面・・・・・
関川: のわけがないでしょ。
81 単行本「名探偵に名前はいらない」
(関川の原作者としての)デビュー作は。>谷口ジローとやった仕事です。
82 雑誌「ブリッコ」掲載「原作屋稼業 題1話 1977年の冬のにおい」
・・・・(関川が)受話器をとりあげると、旧友のフジワラの声が聞こえた。・・・・・
「そのおまえのくだらない経験を洗濯機に突っこんで1度あらいな。それから書きな。」
「書く?」
「そうさ。マンガのストーリーをかけってんだ」
「ほう?」
「半分フィリピンの絵描きがいる」
とフジワラは言った。
「絵は達者なんだ。しかしツラもそうだがセンスが日本人離れしている。だがらまだ一流じゃない、やつをなんとかするためには、とおれは考えたのさ。つまり、毒を制するには毒をもってせよ、だ。」
「毒? おれが毒だってか」
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・・・・・・・(マンガのストーリーを)書きあげたカレンダーをまるめてドブくさい出版社にとどけると、彼は、アマチ・シゲルのような表情をつくって10万円をおれに渡した。カレンダーはそばにいたヒゲの男にぽんと放り投げた。
油を塗ったように輝く浅黒い肌を持ったその男は、カレダーの裏側の文字のすべてを読み終わると、ひと言も口をきかず、ただ挑戦的な微笑を浮かべただけで明るい冬の街へ出ていった。やつはタニグチ・ジローってんだ、とフジワラがいった。
85 単行本「暴力街21分署 無防備都市」
(谷口は)・・・・・深夜、地下鉄工事の労働者として働きながら、私立探偵をめざしてアイフル探偵学校に入学。ここで、関川夏央と出会う。
1976年から、「夢と希望うをもってマンガをつくろう」を合言葉に関川とマンガを製作し、ついに自分の天職を発見したと感じる。
86(96) 単行本「事件屋稼業1 Revised Edition」
・・・・(関川の)青春の怒涛はつづく。小豆の先物取引に手を出して文なしとなり、空腹に耐えかねて、カレンダーの裏に書いたマンガ用のストーリーを売った端た金で吉野家の牛丼を杭、鯨のベーコンを買うようなチンケな日々を送るうち、日比混血の血の気の多いマンガ家、ジロ・タニグチを知る。双葉女子高前の土手で桜の花びらを散らす乱闘ののち、ともに昭和維新の歌をうたって和解する。
88 単行本「マンガ批評体系 第1巻」
・・・・・1977年2月のすざましく寒い日に谷口ジローと水道橋のたもとではじめて会い、一瞥のうちにたがいに相手を値踏もうとしつつ小さな敵意の火花を交し合って以来、・・・・・」
97 単行本「不機嫌亭漱石」
谷口と関川が出会ったのは1977年であった。そのとき谷口は29歳、関川は27歳であった。・・・・・・しかし現在はふたりのめざすところがやや離れ・・・・・。