golden days

nonsense sentence contents and fictional experiments

past present future

2009-05-20 | Weblog
散歩中に考え事をしていて、ふと見知らぬ道に迷い込んだ。気にせず歩き続けていたら、いつのまにか約20年前、二十歳の頃に住んでいたことのある地域に出た。久しぶりで懐かしく、思わず、その時住んでいた家が今現在どうなっているだろうかと気になったので、赴いてみた。

周囲の家はだいぶ建て直されたけれども、街の骨格と雰囲気は当時とあまり変わっていなかった。住んでいた家も外装を塗り直したのだろう、あの頃よりも心なしかキレイになっている気がする。住んでいた2階の部屋の窓には小綺麗なレースのカーテンが掛かって風に揺れていて、誰かが住んでいる様子だった。

ふとその窓辺に人影が写ったので、見上げていた顔をそらした。もし相手に見られたとしても怪しく思われない程度に、誰か待っているふりをしながら、再びチラリと窓を見上げた。そして驚いたことに、そこに見えたのは煙草を指に挟みながらはるか遠くを眺め、何かを思い耽っている約20年前の自分自身の姿だった。

彼は、一体何をそんなに考えているのだろうというくらいに遠くを眺めながら動かなかった。彼女のこと?仕事のこと?将来のこと?そして、煙草の灰が落ちそうになるくらい、遠くの一点を凝視していた。果たしてあの時の自分は、何を考えていたのだろうか。思い出そうとしても、容易には思い出せない。

約20年前には、結婚して子供もいる今のような生活になるなんて全く想像もつかなかったし、家も建てて移り住み、生活環境は相当変わった。そして、こんなにも仕事関係や家庭内のゴタゴタに疲れ果て、人生における失望の底に這いつくばって生活することになるなんて、思ってもみなかった。思わず、約20年前の自分に声を掛けてやりたい気持ちにさえなった。

次の瞬間、遠くの一点を凝視していた視線が下りてきてふと目が合った。私は焦ることなくニコッと会釈をすると、彼もかすかに微笑んだ。私は道路に視線を落として歩き出した。歩き出してからもあの頃の自分の周りに起こっていた出来事から今までの、約20年というあっという間に過ぎ去った歳月を思い返していた。

ある雑貨店が目に入った時に、そういえばトイレットペーパーが切れていたことを思い出し立ち寄った。レジで並んでいた時に、初老の男に列を譲った。彼は恐縮しながら私の前に並び、購入しようとしていたもののチョイスが全く同じことに気がついて、お互い笑い合った。その男の目尻に皺を寄せて人なつっこく微笑む感じや、笑うとタレ目になる感じが、どこかで見たことのある、なんだか懐かしい表情に思えた。

初老の男と別れて雑貨店を出てから、家路につく間に今日の散歩中の出来事に思いを巡らせていた。その時にふと、さっきの初老の男は、さらに約20年後の私の姿だったのではないかと思い至った。

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