なくもの哲学と歴史ブログ

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西洋、東洋哲学
世界史、日本史
西洋神話

オリンポス12神「ヘパイストス」

2023-10-30 12:40:00 | 西洋の神話

【ヘパイストス】

 ヘパイストスは、ゼウスとヘラの子です。または、ヘラが一人で産みました。通常、ヘパイストスは、ヒゲのある中年男だとされています。ヘパイストスは、母親であるヘラからは、冷遇されました。容姿が醜く、ねじ曲がった身体をしていたからです。さらに生まれたばかりの時、天上から投げ落とされ、両足を折りました。そのせいで、びっこになったとされています。ヘパイストスの持ち物の一つが斧です。ある時、ゼウスが頭痛で苦しんでいました。原因は、ゼウスが巨人の女性を飲み込んだからです。ヘパイストスは、治療のためにゼウスの頭を斧で割りました。その頭から出てきたのが、知恵の女神アテナです。 

 【火山の神】

 ゼウスは、ヘパイストスに、エトナ火山に封じ込めた怪物テュポンの監視を命じました。ヘパイストスは、もともと鍛冶屋の神です。そのため、エトナ火山を自分の仕事場「鍛冶場」にしました。また、ヘパイストスは、火山を擬人化した神だとされています。そこから、炎や火の代名詞とされました。ヘパイストスの語源は「炉」や「燃やす」です。一説では、ヘパイストスは、炎の身体をしていたとされています。灼熱した鉄石を持ち、火焔の川を迸り出させることが出来ました。 

 【鍛治の神】

 ヘラに捨てられたヘパイストスを育てたのは、海の女神ティテスです。ティテスの海底の洞窟には、9年間滞在しました。そこで習得したのが鍛治の技術です。器用な片目の巨人サイクロプスにも技術を教え、自分の弟子にしました。ヘパイストスは、鍛治の神だったので「金床」と「金槌」も持っています。その金槌は、創造の象徴です。ヘパイストスは、あらゆる職人の守り神だとされています。神々の魔法の武具を作ったのは、ヘパイストスです。ヘパイストスは、仕事熱心で、神々の中で最も勤勉でした。鍛造した物は、ゼウスの雷霆や盾、アポロンとアルテミスの弓と矢、ヘルメスの鎌などです。ティテスに頼まれて、英雄アキレウスの武具も作りました。鍛造した物は、武具だけに限りません。トロイア戦争の原因になった不和のリンゴも作りました。また、太陽すら鍛造したとされています。土と水を混ぜ捏ねて、人類最初の女パンドラに形を与えたのもヘパイストスでした。

 【ヘラと黄金の玉座】

 本来なら、ヘパイストスは、由緒ある最高神ゼウスと正妻ヘラの子です。しかし、オリンポスの神々からは、外されていました。そのため、ヘパイストスは、ある計画を立てます。神々の中での正当な地位を取り戻すため、ヘラのために黄金の王座を作り、それを贈り物としました。実は、この玉座には、罠が仕掛けられており、ヘラが座った瞬間、身動きが取れないように拘束されてしまいます。ヘパイストスは、拘束を解く代わりに、自分をオリンポスの神々に入れるように要求し、ヘラが、渋々この要求を受け入れ、やっと拘束が解かれました。その上、最も美しい女神であるアフロディーテと結婚させています。

 【アフロディーテの夫】 

 アフロディーテは、愛の女神です。そのため、恋愛に関しては自由奔放でした。実は、アフロディーテとの結婚は、復讐心の強いヘラの企てだったとされています。アフロディーテが、美青年の軍神アレスと浮気をして、ヘパイストスを苦しめたからです。しかし、ヘパイストスは、アフロディーテを大変愛していたので、その浮気を許しました。ヘパイストスの異名の一つが、寝取られ男です。散々浮気をされたにも関わらず、ヘパイストスは自分を幸せ者だと思っていました。そのため、ヘラの復讐は失敗したとも言えます。アフロディーテのためには、相手を魅力するケストス「憧憬の帯」と呼ばれる魔法の帯を作りました。



オリンポス12神の「アレス」

2023-10-28 19:24:00 | 西洋の神話

【アレス】

 アレスは、神々の王ゼウスと、正妻ヘラの子です。通常、槍と盾を持つ美青年として描かれます。♂「オスマーク」は、槍と盾を持つアレスの姿を図案化したものです。アレスのシンボルカラーは赤で、赤い宝石であるルビーが「マルスの石」だとされています。ルビーには、アレスが宿るとされ「勝利の石」として、戦場に向かう兵士たちは、よく身につけていました。それ以外にも、アレスをシンボルとするものは、たくさんあります。例えば、トランプのハートのジャックは、アレスがモデルで、3月がアレスの月です。アレスは「鶏」「ホトトギス」「キツツキ」「ハゲタカ」などを聖鳥としています。また「トネリコ」が聖木で「スミレ」が聖花です。

 【軍神アレス】 

 アレスは、戦争の神として最も勇敢な者です。闘争心に溢れ「盾を貫通する者」や「城壁の破壊者」と言う異名を持ちます。アレスは、戦争の「狂乱」や「破壊」の象徴です。主に戦争の実戦を担当する荒ぶる神として、戦争をけしかけ、煽りました。アレスは、戦いの神として槍の名手です。通常、手には、鉄製の槍と盾を持っています。その鉄は、アレスのシンボルでした。または、血潮に染った短剣を持つことがあります。この短剣は、人殺し「戦争」の象徴でした。 アレスは、青銅製の無敵の鎧を付け、羽飾りのついた黄金製の戦士の兜をかぶっています。戦場では、火を吐く馬車を乗り回していました。その馬たちの名は「恐怖」「火」「炎」「災難」です。馬は、戦争の象徴とされています。また、闘争と破壊の象徴として、イノシシが聖獣でした。

 【神々の嫌われ者】 

 野蛮で血を好むアレスは、恐怖の父と呼ばれ、人々に恐れられていました。凶暴で、残忍な性格のアレスは、神々の中でも嫌われ者だったとされています。しかし、その中でハデスだけは友人でした。戦争が冥府の住人を増やしてくれるからです。血を好み、憎しみを吹き込むとされる争いの女王エリスも仲良しでした。エリスは、アレスの双子の妹です。アレスと並んで戦車に乗り、戦場を金切り声を上げて駆け回りました。トロイア戦争の原因を作ったのは、エリスです。ある時、不和のリンゴを三人の女神の前に投げ入れました。それが戦争のきっかけとなったとされています。

 【アフロディーテの恋人】 

 アレスの恋人は、美の女神アフロディーテです。アレスとアフロディーテは、相思相愛でした。アフロディーテは、アレスの野獣のような激しさに魅了されていたとされています。ただし、アフロディーテの夫は、鍛冶屋の神ヘパイストスでした。そのためアレスは、不倫をしていたことになります。ヘパイストスは、アフロディーテとの密会の現場を抑え、罠で捉えて見せ物にしました。一説では、エロスが、アレスとアフロディーテの息子だとされています。 また、二人の娘には、ハルモニアがいました。ハルモニアの夫は、テーバイを建設したカドモスです。カドモスは、アレスの泉に住む大蛇を殺しました。その歯を埋めたら、テーバイ人の祖が出てきたとされています。カドモスは、アレスの大蛇を殺した罪滅ぼしのために、8年間下僕として働きました。

 【蛮族の父】 

 アレスは、ギリシャ人にとっては、蛮族の地であるトラキアで崇拝されていました。そのため、ギリシャではあまり人気がなかったのかもしれません。アレスは、女性の騎馬軍団アマゾン族の祖だとされています。アマゾン族の女王ペンテシレイアは、アレスの娘でした。ペンテシレイアは、大変美しい姿をしかったとされています。彼女は、トロイア戦争に参戦し、アキレウスと一騎討ちを演じました。 

 【ローマ時代】 

 アレスは、ギリシャ神話では、その残忍で凶暴な性格から、神々の嫌われ者でした。その上、人間の英雄であるヘラクレスやデオメデスにも一騎討ちで敗北しています。アレスは、ギリシャ神話の中では、何かと不遇な扱いでした。しかし、ローマ時代には、ゼウスに次いで崇拝されました。なぜならアレスは、ローマを建国したロムルスの父だったからです。ロムルスは、雌のオオカミに育てられました。そのため、アレスの聖獸もオオカミだとされています。また、ローマ時代には、農耕の神ともされるようになりました。


太陽神アポロンについて

2023-10-27 11:15:00 | 西洋の神話

【アポロン】

 アポロンは、ゼウスと大地の女神レトの子として生まれました。レトは、うずらに変身したゼウスと交わって身篭ったとされています。ゼウスの正妻は、ヘラだったので、アポロンは不倫の子供でした。しかし、アポロンは、ギリシャの理想であり、永遠の若さを持った美青年だとされています。初代ローマ皇帝オクタビアヌスの守護神だったので、ローマ時代になってからも人々から愛されました。

 トランプのクラブのジャックは、アポロンがモデルだとされています。夏がアポロンの季節だったので、蝉がアポロンの使いとされました。また、オオカミや蛇を聖獣とすることがあります。 怪物テュポンから逃れる時は、カラスまたは、タカに変身しました。そのため、それらはアポロンの聖鳥とされています。

 【予言の神】 

 嫉妬したヘラは、レトを迫害します。ヘラの命令で、大蛇ピュトンが、レトが安心して出産できないように追い回しました。そこで、ゼウスが、隠れ家として用意したのがデロス島です。レトは、デロス島で、アポロンと妹のアルテミスを産みました。「オリーブ」または「シュロ」の木の下で産んだので、それらはアポロンの聖樹とされています。その後アポロンは、イルカに変身して、ギリシャにやってきました。

 ピュトンは、ヘラの聖地であるデルフォイの番人だったとされています。誕生したばかりのアポロンは、レトを救うため、黄金の矢でピュトンを退治し、デルフォイに自分の神殿を築きました。アポロンは、運命の女神テミスに養育されたので、人々に予言や神託を授けることが出来たとされています。その予言は、直接的ではなく「語らず、隠さず、標を給うなり」という謎めいたものでした。その予言を伝えたのは、アポロンの巫女です。アポロンの予言の力は、人間にも与えることが出来たとされています。愛していた王女カサンドラに予言の力を与えました。しかし、カサンドラは、アポロンに捨てられることを予言してしまいます。そのため、アポロンの愛を拒絶しました。その報復として、アポロンは、カサンドラの予言を誰も信じないものにします。

 【医術の神】 

 アポロンの持つ黄金の矢は、太陽光線の象徴でした。宿敵ピュトンは、暗い場所で増殖する「腐敗」だとされています。太陽の光は、腐敗を止めるものとして、医学と結びつけられました。アポロンの神殿は、最初の病院だったとされています。医神アスクレピオスは、アポロンの息子です。アポロンも「治癒者」呼ばれ、病気を癒やす医術の神とされました。しかも医術だけではなく、生死をも司るとされています。疫病神として疫病の矢を放つこともありました。そのことから、疫病を媒介するネズミが聖獣だとされています。

 【太陽神】 

 アポロンは、医術で人々を癒やし、恵みを与える光明神です。そのため、太陽神ヘリオスと同一視されました。アポロンには「輝く」と言う意味を持つ「ボイポス」という異名があります。その武装は「黄金の剣」「黄金の弓」など黄金ものでした。また、輝くダイヤモンドが、アポロンの宝石だとされ、太陽の色である、赤か黄色がシンボルカラーです。アポロンは、ヘリオス同様、四頭の馬または、白鳥が引く太陽の戦車を乗物としています。戦車の車輪もまた太陽の象徴でした。ヘリオスの聖鳥である「雄鶏」は、アポロンの聖鳥でもあります。雄鶏は、朝に鳴くので、太陽の象徴だとされました。

 【植物の神】 

  太陽の光は、植物を育てるので、アポロンは植物の神ともされました。アポロンは、月桂樹の冠をかぶっています。その月桂樹は、かつて愛したニンフのダプネが変身したものでした。同じく愛した者に、ヒアシンスの語源となったヒュアキントスという少年がいます。ヒュアキントスは、頭に円盤が当たって血を流して死にました。その血から「ヒアシンス」が咲いたとされています。アポロンには、人間を植物に変える力もありました。ある時は、謝って可愛がっていた鹿を殺し、嘆き悲しむ少年を、悲しみの象徴である糸杉に変えたこともあります。

 【弓の神】 

 アポロンは、狩人で弓の技術に優れていたので「遠矢射るアポロン」と呼ばれました。その腕で、自分の母を侮辱した人間たちを射殺したこともあります。アポロンは、慈悲深い面もありましたが、驕る人間には冷酷だったからです。トロイア戦争では、トロイア側に立ち、多くのギリシャ兵を倒しました。アポロンは、元々外来の神だったので、トロイア側についたとされています。トロイアの王子パリスの矢を導き、ギリシャの英雄アキレウスの弱点を射抜きました。アポロンは、兵士の神と呼ばれ、弓術以外にも戦いに強いとされます。ボクシングを創始し、ある時は城壁を素手で破壊しました。本来、アポロンは、遊牧民に起源を持つ外来の神だとされています。そのため、羊飼いの守護神でもありました。 

【芸術の神】

 アポロンは、芸術全般の神です。芸術によって夢幻の世界を作り出したとされています。アポロンは、詩歌の世界ヘリコン山の詩神ムーサの主人です。特に音楽の神として竪琴を持つとされています。アポロンの子には、竪琴の名手オルペウスがいました。オルペウスの竪琴の音色は、冥府の王ハデスをも魅力したとされています。また、アポロンは笛の名手でもありました。アポロンは、神に敬意を払わない者には、罰を与えることもあります。ある時は、無礼にもアポロンに笛の勝負を挑んできたサチュロスを打ち負かし、そのうえ殺してしまいました。



オリンポス12神「ヘルメス」

2023-10-24 20:06:00 | 西洋の神話

【ヘルメス】

 ヘルメスは、オリンポス12神の一人です。通常、髭がない細身の美しい青年だとされています。ヘルメスは、ゼウスと女巨人マイアの子として生まれました。マイアは、山の神「アトラス」の娘だとされています。ただし、ゼウスの正妻は、結婚の女神ヘラでした。そのため、ヘルメスは、不倫で出来た子供ということになります。ヘラは、嫉妬深く、復讐心の強い女神だったので、本来ならば、ヘルメスは憎まれるはずでした。しかし、ヘルメスは、人懐っこい性格だったので、特別にヘラにも可愛がられたとされています。

 【死者の案内人と風の神】

 ヘルメスは、死者の魂を導き、冥府へ案内する神だとされています。そのため、死んだ妻を取り戻すため、冥府へ下ったオルペウスにも同行しました。冥府に関連する神として同一視されたのが、エジプトのアヌビス神です。死者を案内することから、ヘルメスは、旅人の守護神ともされました。 

 ヘルメスの翼のついた旅行帽を「ペタソス」と言います。靴は「タラリア」と呼ばれる翼のついた黄金のサンダルでした。それを履けば、空を飛ぶことが出来きたとされています。タラリアは、ペルセウスがメデゥーサを退治する時に貸しました。ヘルメスには、飛行能力があります。その力で、現世と冥府、昼と夜の世界など、世界中を自由自在に飛び回ったことから「道路」「交通」を司る旅人の神とされました。ヘルメスは、風のように世界中を駆け回ったので、風の神ともされています。時に春風を起こし、植物の種子を撒き散らしました。

 【商業の神と伝令役】

 古代の世界では、旅人は商人でもありました。商人は、旅をしながら行商して回っていたからです。ヘルメスは、神々の中でも、頭の回転が早く、狡猾な策略家だったとされています。そのずる賢さは、商売と結びつけられ「交易」「市場」を守護する商業の神ともされました。商売には、ギャンブル性があります。そのため、賭博の神とされました。サイコロも、ヘルメスが発明したとされています。

 また商人というものは、情報の運搬者でした。そのため、ヘルメスは、情報の神ともされています。ヘルメスは、神々の中で、一番足が早く、雄弁だったので、情報を運ぶゼウスの伝令役とされました。そこから付けられたあだ名が「ゼウスの使い走り」です。

 ヘルメスは、大変成長が早かったとされています。また、すばしっこいく、泥棒の才能もあったので、生まれて間もなくアポロンの牛を盗みました。アポロンは、占いによってヘルメスが犯人だと見抜きましたが、ヘルメスは、巧みな嘘で誤魔化そうとします。その嘘と盗みの才能は、人類最初の女性パンドラが与えたものでした。

 【音楽と牧畜の神】

 ヘルメスは、竪琴を発明したので、音楽の神だとされています。その竪琴をアポロンが欲しがったので、牛泥棒のお詫びに贈りました。その代わりにアポロンが与えたのが「ケーニュケイオン」と言う使者の杖です。この交換が商売の始まりだとされています。「ケーニュケイオン」は、伝令の証でした。別名を「カドウケス」と言います。ケーニュケイオンには、柄に二匹の蛇が巻きつき、ヘルメスの翼がついていました。その杖は、商業と交通または交渉のシンボルだとされています。

 ゼウスは、人間の王女イオと浮気をしていたので、バレるのを恐れてイオを雌牛に変えて隠しました。しかし、ヘラは、この雌牛の正体を疑います。そこで、雌牛をゼウスから譲り受け、百眼の巨人アルゴスに見張らせました。ゼウスの命を受け、そのイオを奪還したのがヘルメスです。音楽の神でもあったヘルメスは相手を眠らせることが出来る「葦笛」を発明していました。

 ヘルメスは、アルゴスの前で、その笛を吹き、百個の眼を全て眠らせたので、夢と眠りの神ともされます。ヘルメスは、アルゴスが眠ったところで「ハルパー」と言う武器で首を切り落としました。ハルパーとは、鎌のように湾曲した刀剣のことです。この刀剣は、怪物メデゥーサの首を切るために、英雄ペルセウスにも貸しました。ヘルメスは、雌牛となったイオを守ったことから、牧畜の神ともされています。そのため、牧畜が盛んなアルカディア地方で崇拝されるようになりました。

 【文化英雄】

 ヘルメスは、竪琴や笛以外にも、様々な物を発明しました。例えば、文明に不可欠な「アルファベット」「天文学」「度量衡」などです。火起こしの技術を発見し、神々や人間に教えたのもヘルメスでした。ヘルメスは、人々に様々な技術を与えた文化英雄だとされています。

 ギリシャの神々は、信仰されなくなりましたが、西洋の文化の中には残りました。例えば、トランプのスペードのジャックは、ヘルメスがモデルです。5月は、ヘルメスの月だとされています。ヘルメスは、気分が変わりやすく、その流動性から水銀のシンボルとされました。また、ヘルメスのシンボルカラーは緑です。ヘルメスは、巨人から逃れる時、トキに変身したので、トキを聖鳥としています。



マネとその作品

2023-10-22 19:21:00 | 世界史

【マネ】
 エドゥアールマネは「近代画家の父」「美術界の革命児」とされています。印象派の「創始者」「先駆者」でしたが、本人は、印象派グループ展には、一度も参加していませんでした。マネは、裕福なブルジョワ出身で、粋で、ダンディーなパリジャンだったとされています。そのため、趣味が良く、流行には敏感でした。マネは、皮肉屋でしたが、人付き合いは良かったとされています。小説家のゾラや、詩人のボードレールとは、交流がありました。マネが、絵のテーマとしたのが、近代のパリを生きる人々です。都市の街頭風景など、日常の一コマをとらえ、パリの現実を描きました。マネは、印象派の影響を受けています。そのため、伝統的な様式にとらわれず、アカデミズムな絵画とは一線を画していました。

【草上の昼食】
 マネの「草上の昼食」は、近代美術の始まりとされる作品です。「草上の昼食」には、裸の女性と男性が談笑しながら、ピクニックをしている姿が描かれていました。絵の女性は、パリの娼婦だとされています。草上の昼食は、現実の女性の裸を描いたため、サロンからは、激しく非難されました。それまでの常識では、裸婦というものは、理想的に描くべきものであり、対象は神話か歴史上の人物に限られていたからです。

 マネは、サロンでの成功を望み、出展を続けていました。そのサロンで、入選したのが「オランピア」という作品です。オランピアも、草上の昼食と同様に娼婦を描いた作品でした。絵の「髪飾りの蘭」「首のチョーカー」「ショール」などは、富と官能のシンボルだとされます。オランピアとは、娼婦の源氏名のことでした。

【笛を吹く少年】
 オルセー美術館に所蔵されている「笛を吹く少年」は、マネの代表作の一つです。この絵は、歴史を変えた1枚だとされています。「笛を吹く少年」には、ジャポニスムの影響がありました。ジャポニスムとは、当時のフランスで流行していた「日本趣味」のことです。マネは、日本の「浮世絵」や「水墨画」を模倣しました。そのため、マネの絵は「はっきりした輪郭」と「平面的」なのが特徴です。遠近感がなかったので、トランプのカードのようだと酷評されました。また、この絵の背景には何も描かれていません。それは、スペインのベラスケスの影響だとされています。マネは、遠近法を使わず、コントラストの強い色を用いることで、少年の存在感きわだたせました。

【フォリーベルジェールのバー】
 「フォリーベルジェールのバー」は、死の前年に描いた作品です。マネは、この作品を描いた翌年に、51歳で亡くなっています。死因は、梅毒で左足を切断ことです。フォリーベルジェールのバーは、最晩年の傑作とされています。絵には、意識が中央にいる女性に向かうように、人物だけを浮かび上がらせる工夫がされてました。絵のアンニュイな表情をしたメイドも、娼婦だとされています。フォリーベルジェールのバーは、当時の現実に生きた人々を表現した作品です。そのバーは、今でもある実在する有名なパリのミュージックホールです。当時は、バレエやサーカスが行われていました。