なくもの哲学と歴史ブログ

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西洋、東洋哲学
世界史、日本史
西洋神話

タロットカードの「皇帝」

2023-11-24 09:55:00 | タロットカード

4 

 皇帝のカード番号は4です。4という数字は、世界の基礎だとされています。古来、世界は、四つのものによって均衡が保たれているとされました。その4つとは、四元素「火土水風」と呼ばれる世界の構成要素のことです。四で構成されているものは、四元素の他にもあります。例えば、方位「東西南北」、四季「春夏秋冬」、四則演算「+−×÷」、状態「湿、乾、温、冷」などです。それらが、世界全体に秩序や安定性を与えているとされています。この現実の世界も「縦」「横」「高さ」「時間」からなる4次元です。

 タロットカードには、つながりがあります。前のカードの女帝は、ただ何かを生産するだけでした。それに対して、皇帝は、何かを新しく生み出したりはしません。皇帝の役割は、女帝の生産行為を停止させ、その生産されたものを、適所に配置していくことです。何事も正しい位置になければ機能しません。特定の位置に配置されなければ、実際に具現化しないからです。

 【権力者】

 皇帝のカードは「権力」を象徴しています。皇帝とは、いくつもの国を支配する国家の最高指導者です。そのため、権力者の象徴としての王冠を被り、王笏を持っています。皇帝の王笏は、アンク十字です。アンク十字は「生命」や「生産性」を象徴しています。それを持つことは、生命を支配していることを意味していました。 また、皇帝は、鷲の盾を持っています。空の王者である鷲は、権力の象徴です。そのため、王家の紋章としてよく使われました。また皇帝は、地球儀を持っています。地球儀の球体は、地上的な現実の象徴です。その上にある十字架は「霊」を象徴しています。アンク十字の地球儀を持つことは、皇帝が、現実と精神の世界を支配していることを意味していました。 

 【支配者】 

 皇帝の支配は、人々にルールを強制するものです。そのため、独断的な部分もあります。皇帝は、自分の命令に反対する者を認めません。強制的に人々をある方向に向かわせようとします。しかし、上に立つ者には、責任がともないます。そのため、間違いが許されません。皇帝の支配が、厳格なのはそのためです。カードの川の水量が少ないのは、情に流されないことを意味しています。皇帝が座る王座は、固く安定感がありました。それは、堅固な支配の象徴です。皇帝の統治は、何事にも動じませんでした。

 【指導者】

 権力者としての皇帝は、人々の先頭に立つ指導者です。そのため、優れた統率力が必要でした。現在、皇帝は、周囲と戦闘中です。しかし、自分自身で戦うわけではありません。その戦いは、優勢であるとされています。皇帝が着ている鎧と衣は赤です。赤は「情熱」や「勇気」を象徴しています。皇帝が座る椅子の牡羊は「牡羊座」や「火星」の象徴です。火星は「力」「行動」「闘争」を象徴する男性原理だとされています。それと対になるのが、女性原理である金星です。牡羊座は、一年のサイクルの最初なので、物事の始まりを意味しています。最初なのは、皇帝が人々の先頭に立つべき存在だからです。

 【成功者】 

 皇帝には、野心や実行力があります。常に領土を広げ、拡張してきました。皇帝は、現実的な世界の成功者だとされています。カードの岩山「禿山」は、現実社会の「厳しさ」や「試練」の象徴です。皇帝は、それらを乗り越えてきました。そこから得られたものは、物質的な恵みや現世利益です。皇帝は、地上での目的が達成され、絶頂期にいます。ただし、その繁栄が永遠に約束されたわけではありません。交差する足は、今のところは、幸運を保持しているということを意味しています。



タロットカード「女帝」

2023-11-21 11:21:00 | タロットカード

【生産】

 タロットの女帝のカードは、生産性を象徴しています。女帝は、絶えず何かを生み出し続ける存在です。その生産には、終わりがなく、また決して、同じものを作りませんでした。女帝のカードから、世界が初めて動き出します。全てが流動的になり、その流れは、一時も固定化されません。世界は展開され、顕在化に向かいます。女帝は、ただ生産するだけで、考えもしなければ、反省もしません。数字の3は、結合による新しい生命の誕生を意味しています。 

 【母性】 

 女帝は「結婚」「妊娠」「出産」を経て、母親になった女性です。そのため、母性を司っていました。女帝は、出産することによって人間を創造します。カードの女帝も妊娠中です。そのため、白いマタニティドレスを着ています。白いマタニティドレスは「女性性」や「純粋さ」の象徴です。そのドレスは、ザクロ柄をしています。ザクロは「女性」「妊娠」「豊穣性」「多産」の象徴です。

 【豊穣】 

 カードには、美しい小川が流れています。小川は、生命を育む「命の水」の象徴です。その背後には、その水の恵みで豊かに実った穀物畑が広がっています。その収穫物は、人々の努力の成果です。女帝のモデルは、ギリシャの女神デメテルだとされています。デメテルは、豊穣と多産を司る大地母神です。そのため、カードの自然豊かな庭園は、あらゆる実りに恵まれています。女帝が座るゆったりした王座は、豊かさと繁栄の象徴です。王座の赤いクッションは「恋愛」や「結婚」への情熱を表しています。赤なのは、情熱の色だからです。 

 【女教皇との関係】 

 タロットの2番のカード「女教皇」と女帝は、女性の二つの側面です。女教皇は、精神的豊かさを、女帝は、物質的な豊かさを象徴しています。女帝の豊かさは、外面的です。そのため、女教皇と女帝は、対極にあります。物質世界の生産は、精神世界の喪失を意味していました。何かを手に入れることは、その欲求が消えることだからです。

 カードの背景の黄色は、太陽を表しています。太陽は、光や知性の象徴です。女帝の知性は、女教皇のように神秘的なものではありません。どちらかと言えば現実的な知性だからです。

 【愛】

 女帝は、武器を持っていません。それは、他人を攻撃せず、平和を愛することを意味しています。女帝の持ち物は「金星」のマークが入った「ハート」型の盾です。ハートは「人の心」や「愛」を象徴しています。金星の方は、ギリシャ神話の愛の女神アフロディーテのことです。また、女帝は、鷲の盾を持っていることもあります。鷲は、権力の象徴です。そのため、よく王家の紋章に描かれました。その鷲を描くことは、女性の中の最高位であることを意味しています。

 【支配者】 

 女帝は、左手に「黄金の王笏」を持っています。黄金の王笏には、天上界とつながってるという意味がありました。王笏の十字架は「霊」を、球体は「地上の世界」を表しています。球体を持つことには、手の中に世界をおさめているという意味がありました。女帝がつけている7つの真珠のネックレスは、7つの惑星を象徴しています。12個の星の付いた王冠には、宇宙の生みの母親であるという意味がありました。その星々は、黄道12宮のことです。それは、六芒星の形をしていました。六芒星は、支配を意味しています。


タロットカードの「女教皇」

2023-11-18 11:29:00 | タロットカード

【女教皇】 

 女皇帝のカードは、伝説上の人物とされる女教皇「ヨハンナ」がモデルだとされています。しかし、本来、カトリック教会には、女性の教皇はいません。そのため、女皇帝は、反ローマ教皇のシンボルではないかとされています。ちなみに、女帝のカードとは、同一人物です。

 別の説では、女教皇は、キリストの母、聖母マリアだとされています。聖母マリアは、死後、天の女王となりました。大空と深い海の青が、聖母マリアを象徴する色です。そのため、女皇帝も青い衣装を着ています。それは、高い精神性の象徴でした。

 【書物】 

 女教皇は「トーラー」という書物を持っています。トーラーとは、ユダヤ教の律法書のことです。それは、高度な知識や学問の象徴とされています。女教皇の持つ書物には、宇宙の情報が織り込まれていました。人間には、それを容易に読み解くことが出来きません。書物は、ベールで半分隠れています。それは、宇宙の謎を全て解き明かすことが出来ないことを意味していました。人間に理解出来ることは、ごく一部にすぎません。

 知識とは、人類共通の財産です。女教皇は、その知識の管理しています。知識というものは、先祖から引き継いだものです。それは、自分だけの力で作り出せるものではありません。また、女教皇は、理性的で、慎み深く、冷静でした。そのため、公平なものの見方の象徴とされています。

 【記憶の倉庫】

 書物は、過去の記録を内蔵する図書館のようなものです。それは、必要なものをいくらでも出せる「データベース」や「記憶の倉庫」のようなものだとされています。記憶とは、物質的な宇宙そのものです。それは、万物の中に潜在的に眠っています。現在において、その全てが現れているわけではありません。時間の経過によって、その記憶は展開されていきます。それが現象として現れるのが、この世界です。人間の無意識の中にも、その記憶は内在しています。 

 【二元性】 

 女教皇のカードの番号は2です。2は、万物の二元性を表しています。しかし、2には、まだ方向性がありません。それは、均衡した状態を表しています。万物は、相反するものがあってこそ、バランスを保てるものです。そのため、片方だけでは、成立することが出来きません。カードの白黒の二つの柱は「光と闇」「陰と陽」「男女」などを表しています。それは、物事の二面性の表現です。柱が、黒と白なのは、無意識界への入り口だからだとされています。

 【大地】 

 女教皇は、自然の神秘の象徴です。その自然は、大地として表現されます。安定した不動の大地は、永遠性の象徴です。そのため、女教皇は、椅子に座って、そこから動きません。大地を象徴するのが、女神ヘラやイシスのような大地母神です。大地母神が、女教皇のモデルだという説もあります。また、大地とは、自然の神殿のようなものです。神殿の奥は、不可侵の聖域とされています。それは、人間には、未知の領域があることを意味していました。

 【月】 

 女教皇は、受動的な存在です。そのため、質料「素材」のようなものだとされています。女教皇は、自分から何か出来るわけではありません。外部からの刺激がないと動けないからです。そのため、受動的な女性として描かれます。

 受動的なものを象徴するものが月です。月は、女性原理とされています。女教皇が被っているのが、三日月と満月をかたどった三重の冠です。月は、満ち欠けを繰り返します。それは、移ろいやすい女性の心情の象徴でした。女教皇には、天上界から、予言を受け取る能力もあったとされています。波立つ衣装が、これから起こる変化の予兆です。女教皇には、未来に関する予言を人々に提供する役目もありました。


タロットカードの「魔術師」

2023-11-16 19:21:00 | タロットカード

【魔術師】

 魔術師は、愚者と同一人物とされています。愚者は、純粋無垢な状態で、まだ何者でもありません。そのため、手付かずの楽園にいます。魔術師は、愚者がその楽園から出てきた最初の姿です。魔術師のカードには、ようやく旅への準備が整い、新しい世界への扉が開かれてる状況が描かれています。1という数字は、これから新しいことを始める最初のカードです。ゼロは、世界の全体性を象徴しています。それは、まだ何も表現されていません。数字のカードから、始めて世界は展開されます。 

 【商人】 

 魔術師は、ゼロと1を行き来することが出来る「越境者」です。越境者は、商人にたとえられます。商人とは、旅をしながら生活をする異邦人です。外で得たものを他のところに持ち込み、いろんなものを移動させました。例えば、異国の新しい文化などです。時には、古い慣習を破壊し、新風を巻き起こしました。

 商人の神とされるのが、ギリシャ神話のヘルメスです。惑星では「水星」が、金属では「水銀」がヘルメスだとされています。ヘルメスは、全ての変化するものの象徴です。また、死者の魂を導く者として、あの世とこの世をつなぐ仲介者とされています。時には、神々の伝令役として、人間に天からのメッセージを届けました。ヘルメスがその役目に適任だったのは、コミュニケーション能力が高かったからだとされています。

 【錬金術師】

 魔術師とは、錬金術師のことです。錬金術師は、他人から言われた仕事をする労働者ではありません。創造力によって、新たに世界を作り出す者です。錬金術師は、ゼロから1を生み出す者とされています。カードでは、天と地を指し、錬金術の儀式を行なっています。錬金術師とは、天上から情報を受け取って、それを具現化する者です。それまでの世界は、具体的でありませんでした。錬金術師は、それを具現化し、地上に新たなものを作り出そうとしています。

【四元素】 

 絵柄の机は、大地の象徴です。その上には「棒」「剣」「聖杯」「金貨」が置かれています。それらは、四元素の象徴です。棒「ワンド」は火、剣「ソード」は風、聖杯「カップ」は水、金貨「ペンタクルス」は地を表しています。その四大元素は、世界の構成要素です。魔術師は、その4大元素をもとに新たな物質を作り出そうとしています。それらを自由に使いこなすことが出来きるのが魔術師という存在です。ただし、道具を使わないと、物質を生成することが出来きませんでした。左手は、大地を指差し、足が大地に接触しています。それは、四元素が、大地から引き出されていることを意味していました。その大地とは、世界のことです。 

 【ウロボロス】 

 魔術師の頭上、または帽子にあるのが、無限大のマークです。無限大のマークは、メビウスの輪とも言います。それは、宇宙の真理を表しています。無限大のマークは、魔術師が、あらゆるものを生み出せることを意味していました。それは、ウロボロスで表現されます。ウロボロスとは、自分の尾を飲む蛇です。それは、始めも終わりもない永遠を象徴しています。蛇は、脱皮するので「生と死」「不老不死」の象徴とされました。ウロボロスは、循環性を表しています。循環性とは、周期的な生成過程の繰り返しです。また、ウロボロスは、全一の象徴でもあります。全一とは、全体が一つだという意味です。全体の中では、対立原理が同時に存在し、それらが調和していました。



北欧神話「ヨルムンガンド」について

2023-11-15 12:18:00 | 西洋の神話

【ヨルムンガンド】
 ヨルムンガンド「ミズガルズオルム」は、巨人のロキとアングルボサの子として生まれました。名前の意味は、大いなるガンド「精霊」や「大地の杖」です。兄弟には、魔狼フェンリルや冥界の女王ヘルがいます。ヨルムンガンドは「ヨトゥンヘイム」で育てられました。ヨトゥンヘイムとは、霜と山「丘」の巨人が住む国です。世界の東に位置し、絶対零度が支配する銀世界だとされています。

 神々の王オーディンは、ヨルムンガンドの存在に脅威を感じ、海に捨てました。しかし、ヨルムンガンドは、世界の最下層の深海で成長します。そこで、大地を取り巻き、自分の尾を咥えられるほどに大きくなったので「世界蛇」と呼ばれました。ヨルムンガンドは、その大きな体で、洪水や大津波を起こすとされています。

【霜の巨人】
 ヨルムンガンドは、大蛇とされていますが、霜の巨人に属していました。霜の巨人「ヨトゥン」とは、巨人の王「ユミル」の脇汗や、両足から誕生した自然の精霊だとされています。原初の巨人ユミルが、神々に殺された時、その死体からは、いろんな種族が誕生しました。そもそも、巨人とは、大自然の根源的な力を擬人化したものだとされています。

 霜の巨人は、ミズガルズ「人間界」やアースガルズ「神々の世界」にとっては、脅威となる存在でした。ミドガルドとは「真ん中にある地帯」という意味です。別名を中つ国とも言います。そこには、人間が住んでいました。神々と巨人には、それぞれに交流があったとされています。神々の世界というものは、自然界「巨人」に対する文明社会を象徴していました。文明というものも、自然に依存しなければ成立しません。そのため、神々と巨人は、敵対しながらも、相互依存関係にありました。

【トール】
 ヨルムンガンドは、雷神トールと深い因縁がありました。トールは、ミドガルドの守護者であり、巨人と戦う戦神とされています。ヨルムンガンドは、トールと合計で三度も戦いました。1度目は、トールが、海の巨人ヒュミルと釣りに行った時のことです。トールは、ヨルムンガンドを釣り上げましたが、船が転覆しそうになったので、ミョルニルで叩こうとしました。ミョルニルとは「粉砕するもの」という意味を持つ、真っ赤に焼け槌のことです。しかし、ヒュミルが、釣糸を切ったので、ヨルムンガンドは、海中へ逃れました。 

 二度目は、トールが、ウートガルザ・ロキの宮殿に行った時のことです。ウートガルザ・ロキは、幻術が得意な巨人だったので、トールは、まんまと幻術にかかってしまいました。トールには、そうした魔術に対する耐性がなかったとされています。そのうえで、ウートガルザ・ロキは、力比べを持ちかけ、トールが、巨大な猫だと思って持ち上げたものが、ヨルムンガンドでした。

【ラグナロク】
 最後の戦いとなったのが、ラグナロク「世界の終わりの日」の時です。ラグナロクが近づくと、太陽が暗くなり、星々は消え、過酷な冬が続き、人々の道徳は乱れました。その時、封印されていた悪「ロキ」や「フェンリル」などが解き放たれ、巨人たちとともに、神々や人間の世界に進撃して来るとされています。ラグナロクでは、ヨルムンガンドも、陸に上がって、トールと戦いました。トールは、ミョルニルを三度投げつけ、ヨルムンガンドを殺害しましたが、死に際に、ヨルムンガンドも、毒霧を吹きかけ、トールを殺しています。ラグナロクでは、主要な神々は死に絶え、最後まで生き残った炎の巨人スルトが、世界を焼き尽くし、9つの世界は海に没しました。