玄関の戸を開けると雨上がりの庭いっぱいに、クチナシの甘ったるい香りが漂っていた。
入院中の枕元に「ほら、咲いたで・・」って、真っ赤な包装紙に一輪のクチナシを包んで持って来てくれた。
葉っぱに虫が付いていて包装紙はしわしわだった・・。そのことを「本当にお父さんらしい」って・・優しさも大雑把も毎年笑っていた。
でも・・、もう二度と笑えなくなかった。
真っ白な花からも葉っぱからもぽつりぽつりと流れて・・流れて落ち続けるしずく。
昨日はお見舞いに久しぶりに医大へ行った。
救急で運ばれた医大のベットで、「お前は俺を裏切るのか!」って形相を変えて叫んだ主人。処置が辛いから嫌だと言ったのに私はそれをスルーしたからだった。でも、大量出血で命に関わる時だったから、そんな言葉に耳を貸す余裕がなかったのだけれど・・。
でもそんな主人に、「一緒に家に帰ろう」って決めた。
それはそれで良かったのだ。それから終わりの日まで二十日ほどとても穏やかな時間を過ごせたから。
でも・・
帰りの電車のホームに、おじいさんがコンビニのお弁当をぶら下げて行くのが見えた。
「あんたにはあんなことはさせなかったよね。最期まで私が一緒に居たものね。」
そんな言葉を心でつぶやいて気付いた。それは何か言い訳みたいで・・そういえばずっと言い訳ばかりしているようだと・・。
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ムベ
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