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石ころ

足口を鍛えたこと

妹に誘われて今年も山に登った。あらかじめ「今年の紅葉はたいしたことないよ。」と聞いて居たので、覚悟はしての紅葉見物だったのだけれど、下から山を見上げただけで「本当に駄目だね。今日は足口を鍛えよう。」
山道を歩きながらおしゃべりを楽しもうと方針転換をした。

紅葉の美しさは鮮やかさだと思うけれど、下手な水彩画のように濁った色をしていて、青いままで萎れたように木にくっついているものがほとんど・・。
そんな姿はなんだか老醜を思わせて辛い。たしかに潔さというものは美しいんだ・・と今更のように思う。

しかし、木に責任がある訳じゃなし・・神様がお造りになった良きものを、人のどん欲が台無しにしたのだろう。自然はその巻き添えを食っているだけ。
温暖化でちっとも寒くならないから、散り損なったんだ・・
それに、なんだか山全体がどんよりと曇っていると思っていたら、黄砂だったという・・。

山のそこかしこに、荒々しく削られた土が台風の後のようにむき出しになっている。足元も向いの山肌も・・。
「一体これは何?」妹曰く「これは猪の踏み荒らした後だよ。」
ああ、なるほど確かに足跡が見える。それにしてもあまりに酷い。

この山には、実のなる雑木はほどんどない。同じような種類の木ばかりで、彼らの食べ物はほどんど見当たらない。
同じものばかりを植えて来たからだろう。美しい自然だと見ていた景色は、人が造った景色だったんだと気づいた。
同じ物ばかりを選び、多様な植物を除いてきたこと、その不自然がこのような結果の原因の一つではないのだろうか・・。


 障害児をもって学校の入学に苦労をしていたとき、健常児の中に共に居ることを願うことが、なぜこんなに困難なのだろうと悩んでいた。
人間は、多様な人が居る。神様がそのような造られたのだから。
赤ちゃんから老人まで、天才から知的障害者まで、姿形もいろいろ。大好きな人も嫌な人も・・。
子供の時から、出来るだけいろいろな人を知っているほうが良いに決まっている。その方が自然に忍耐力や多様な価値観がつくだろうから。

それは時に面倒かも知れないけれど、健常児だって全員同じではないのだから、色々な人が共に居るってそんなに悪いことではないと思う。
事実彼が通学するようになって、グラスメートは彼をよく理解してくれた。高校を卒業するまでなんの問題も起りはしなかった。問題は大人が作った障壁だけだった。


 桜の木々はすかっかり病んで、真っ白な骸骨のような姿をさらし、梢は折れて幹だけが突っ立っている。
どうしてこんなに無残な姿になってしまったのだろうと、もう、景色から目を背けて取り留めもなく、たわいのない冗談をとばしながら、ちょっと膝を痛めている妹の足を気遣ってゆっくり登る。

毎年同じ場所のベンチにかけて、
「クッキー半分ずつしよう。その代わりお茶ちょうだい。」「え・・どうして持ってこなかったの、私の分しかないよ。去年はあんたが私の分まで準備してくれたのに・・それに、飴とみかんはある?」「飴はあるけどみかんはないよ。お茶は上で買ってあげるから。持って歩くの重いし・・」「どうして・・去年はあんたが準備したのに・・」「お茶は忘れたの。みかんは昨日食べてしまったの。」「私なんか、昨日からお弁当の準備をしたのに・・」「昨日何をしたの。」「え~っと何だったか・・忘れたけれど」

とにかく、私は朝からおむすびを握って、のりを入れた卵焼きを焼いて、昨日の唐辛子の炒め煮と、小芋と厚揚げの煮付けなどを折に入れてきた。
ああ、昨日準備をしたのは、煮物を多めに作ることだったかな・・。
お弁当の色は綺麗ではないけれど、美味しいでしょうと話しながら紅葉していない山でお弁当を開く。今日は本当に色気のない日。

帰り道、「これで軽くなったのかなぁ」「軽くなるわけないでしょう。だって、お腹であろうと手で持っていようと、自分で持っていることには変わりはないし・・」「本当にお腹に入れても同じなのかなぁ・・」

お弁当を食べてから、食べようかと言っていたソフトクリームの看板を見て、「やっぱりもう要らないね。」「要らない、要らない。第一高いよ。スーパーだっら160円で済むよ。」「この考えは日本を滅ぼすね。」
口は大いに鍛えられたけれど・・さて足の方は・・?

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