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石ころ

スカーレット・シュリンプ


父の日に息子が贈ってくれた、赤い小さな小さなエビ、よく見るとちゃんとヒゲもあり足をそろえて元気に泳いでいる。両の手のひらに包み込めるサイズの、ガラス瓶の中が彼らの地球。

我が家に来た当時は、みんな目を点して暇が在れば瓶をのぞき込んでいた。「体が白っぽくなったから具合が悪いのじゃないか」とか、「赤いから体調が良さそう」とか一喜一憂していた。そのうち季節が変わると、底に沈んで死んだエビを見るようになって胸を痛めた。

脱皮に失敗して転がっていたエビが、やっと殻をはがして泳ぎだした時には、夜遅くまで見張っていた甲斐があったと、みんなで喜ぶことができた。また、寒い朝、底に転がって居るエビを見つけて、死んでしまったのかとがっかり、あきらめきれず虫眼鏡を持ち出して、代わる代わる見つめていると「あれ、動いているよ」と、ヒゲがわずかに動いているのを見つけた。エビは何時間もかけてゆっくり動き出して、やがて少し泳ぐようになった。「生き返った!」やはりどんなに小さいいのちでも、生き返る感動はとても大きい。

そんなことを経て、寒い夜は暖めること。その方法は、瓶に毛糸のカバーを編んで被せ、クーラーボックスに、湯たんぽと一緒に入れてあげることで乗り切ることが出来るようになった。買ってきた時には7匹居たけれど、今では3匹になってしまった。でも、これくらいが丁度良いのかも知れなくて、3匹になってからはとても落ち着いて生きている。

我が家に来てかれこれ3、4年になる今では、とても存在感の薄い生きもの。家族は、時々思い出して瓶をそっと持ち上げ、明かりにかざして「大丈夫、生きている」というだけ。瓶の中は小さな地球のように循環されていて、餌もあげる事は出来ない。いっさいの手出しは無用という仕組みである。飼い主に関わりなく生きているようだけど、それでも繋がっている。

彼らは彼らの地球の中で、悠々と生きている。寒くなったり環境が悪くなると、ころっと底に転がって、まるで死んだようになるけれど、どっこい、しばらくすると少しずつ元気回復して泳ぎ出す。その、しなやかと思えるいのちに最近は癒されることがある。

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