hortensia…

夏ひかり空透く青やあぢさゐの花近景をうづめつくせり

surfant…

羨(とも)しもの目元涼しき若ものら海ごと夏を掬(すく)ふ呪(まじな)ひ

me're…

われひとり母となりえず海想ふ夏の光の澄みきつた青

ciel bleu…

風青く空に花顕(た)つ 蝶々のゆくへ見つめる子らの眸(まみ)にも

saint mai…

天真の真(しん)たづぬれば聖五月風とひかりを拾ふたましひ

Franz Kafka…

カフカの影さがしていまも揺れやまぬ傷(いた)みはいつも内にあらんか

vieille maison…

家終い父の背中を売るごとし背を流す音石蕗(つわ)の咲く庭

partir…

夏光るフレグランスの香にのつて娘よ沖へ発つ恋をせよ

berceuse…

子守唄吾子に聞かせるあらかたはしづかな母の背中の記憶

nostalgie…

桜敷く花の下臥(したぶし)うつらつら時をくぐれば捨てたる故郷

papillon d`hiver…

冬蝶ゆ幻翅(し)をひろげ往きにしか薄き片翅(はね)凍てつける朝

traces…

俤(おもかげ)は朝(あした)に覚める夢浄む時離(か)れてなほ生きてあるかな

toi?…

愛恋にいまだし遅々と白髪の混じりしきみよ背(そびら)の少年

magie…

夕焼けの魔法十五をひとつかみ恋の傷みは淡(うす)みゆくかな

ble`…

麦の郡(くに)農(みの)りの民らみな去りて風吹く冬田ただ荒れ果つる