忍恋…

忍ぶらもをんなのこころかの日々のひとりを恋ひしをとめとなりぬ

寂漠…

言の葉も肉（しし）も持（たも）てどおのが身は渇きたるまま生（あ）れてゆくかな

暮色…

さびしさの充ちてしくるか夕ぐれにきみに目交（まみ）へぬかく日常の

玻璃…

日に透ける玻璃（はり）に咲くかなはつか生（よ）の恋花車きみとわれとの

星宿…

星宿の海はふたたび還らずもをんなのうへにひかり積ましむ

心咬…

火にも似るをんなのにほひふくらみてこころ咬まれる夏のゆふぐれ

花明…

目覚むれば傍ら温き朝なりききみが活けたる花の明るさ

妬心…

妻母の乳房のままに来たるかと口に含めば憎くもなりぬ

一夜…

晩夏（おそなつ）の一夜をかぎり思ふまま抱(いだ)き合ひしか言葉少なく

美映…

束縛を解きし四十路の愛恋にをんな美しいまおのづから

火蕊…

夜の底きみが抜けゆく肉叢（ししむら）の火中（ほなか）にはじける音をきくかな