小学3年生頃に、ようやく自転車に乗れるようになった。それは、俺にとって、衝撃的な出来事だった。
自転車に乗れるようになって、それ程経たないころ、母親の実家に自転車で出かけて行った。もちろん、親には内緒だ。行きは順調で、途中、転ぶようなこともなかった。着いて、母親の実家ではたいそう驚かれ、俺は有頂天になって、意気揚々と帰途に着いた。行きと同じで順調に自転車に乗って戻ってきたが、どういう弾みか分からないが、気付いたら、川の中にドボンと落ちて、濡れ鼠になった。泣こうにも周りには人影はなく、ただただ鼻をしくしくさせながら、家に辿り着いた。川に落ちたということはあまり問題ではなく、それよりも何よりも、自転車で行って帰って来れたということで、「俺は凄いんだ。」と思った。
当時、中耳炎のために、隣町の耳鼻科に通う必要があったが、通院もひとりで行くようになった。俺の町は本当のど田舎だったが、隣町にはアーケードもあるようなところがあって、お店もたくさん並んでいた。当時としてはかなり栄えていた町だった。耳鼻科に通う途中で、少し足を延ばし、ぶらりぶらりすることもできた。お袋が自転車に乗れないため、買い物は親父がやっていたが、自分で必要な物は、自分で買って来れるようになった。
<次に続く>