様々な川（人生）の流れ

｛賀茂川（左）と高野川（右）の合流点。
奥に見える森が下鴨神社の「糺の森」（ただすのもり）｝

ふとテレビを点けますと、京都の鴨川沿いに在るベンチに座る人々を、インタビューする番組を放送していました。

早朝の鴨川のベンチに、一人の中年男性が座り、一人静かに鴨川の流れを見詰めていました。
インタビュアー：「こんにちは。何をされているのですか？」
男性：「ここに座って、昔を思い出していたんですわ」

このような会話から始まった男性の話には、人生の悲哀が有りました。
要約しますと、
・　阪神淡路大震災の時に、男性は建設会社の仕事のために、京都に単身赴任をしていた。
・　その時に、兵庫県の家に居た奥さんと娘さんが、大震災で亡くなられた。そして自分独りになった。
・　あれから長い年月が過ぎたけれども、今でも家族を忘れたことが無い。

・　自分が京都の大学生の時も、この鴨川べりで昼間からよく寝ていた。
・　あの頃は、警備員さんが、「学生さん、はよ授業に行きや」と起こしに来てくれていた。

・　この鴨川の流れを見ていると、すべてを思い出すんですわ。
・　実は、私は今、大病に罹っているんですわ。・・・・。

しばらく鴨川の流れを静かに見詰めていた男性は、リュックサックを背負い、自転車で去って行かれました。
その御顔は、顔色が良くなかったです。
男性が、静かな覚悟をしているのが、分かりました。

男性が、鴨川の流れをわざわざ見に来られた気持ちが分かる気がします。
ご自分にも、喜怒哀楽の「人生の川の流れ」が有ったのです。

男性いわく、
・　鴨川の流れは、昔と、まったく変わっていない。

これは非常に重要な指摘に感じます。
男性の中でも、すべての「アノ時」が、今でも並行して生きており、流れているのでしょう。

古来から無数の人々が、鴨川の川べりで無心に流れを見詰めて来たことでしょう。
川の流れは止まることが無く、流れ続けます。
でも、水は、いつもそこに在るわけです。

私達の心も、右往左往と流れ続けています。
でも、その心の流れの中に、不動の変わらない自分が居るのです。
三つ子の魂百までも。

誰もが、決して死ぬことも無い、不死身（ふじみ）の不動の心の存在です。
その不動心が、弱くて、直ぐに死んでしまう肉体に宿って、遊びに来ています。
死ぬことが出来ない心が、死を恐れる肉体に宿って「弱さ」を学んでいます。

本当は、弱いことも、何も成功しないことも、悲しいことも、
決して死ねない心には、貴重な体験なのです。
強さばかりでは、人は、心は、学ぶものが少ない。

人は、弱く成ってこそ、人生を静かに振り返ることもするのです。
鴨川の流れを、見に行きたくなれるのです。

え？　川の流れなんて、忙しくて見たくもないって？
それも元気で良いでしょう。
今日も、様々な人生が流れて行くことでしょう。

生かして頂いて 有り難う御座います

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