新古今和歌集の部屋

桐壺 鈴虫の声

鈴虫の声の限りを尽くしても長き夜飽かず降る涙かな

読み
すずむしのこゑのかぎりをつくしてもながきよあかずふるなみだかな

詠人
靫負命婦

いとゞしく虫の音繁き浅茅生に露置き添ふる雲の上人

読み
いとどしくむしのねしげきあさぢふにつゆおきそふるくものうえひと

詠人
更衣母北方

背景
帝の使いとして弔問に訪れた靫負命婦が更衣の里を出ようと車に乗る時の靫負命婦と更衣母北方の贈答歌。

意味
命婦
私はそこの鈴虫のように、声を限りに泣き尽くしても、長い夜も足りないように涙が溢れ出てしまいます。

北方
あの大変虫の音の激しいように泣いております私どもの粗末な家にお出で頂いた勅使の方は、更に涙の露を増やして下さいました。

技法
降ると振るの掛詞で鈴の縁語。

技法
本歌取り
我が宿や雲の中にも思ふらむ雨も涙も降りにこそ降れ 伊勢集
五月雨に濡れにし袖のいとどしく露置き添ふる秋の侘しさ 後撰 秋中 近江更衣

新古今への影響
秋歌上 秋の歌の中に 太上天皇
秋の露やたもとにいたく結ぶらむ長き夜飽かずやどる月かな
秋歌下 守覺法親王家五十首歌の中に 藤原家隆朝臣
蟲の音もながき夜飽かぬふるさとになほ思ひそふ松風ぞ吹く

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