これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

「えがお」と「わっしょい」

2011年04月10日 07時21分07秒 | エッセイ
 娘のミキが中3になった。
 帰ってくるなり、「今度の担任、うざいんだよ」と悪態をつく。新しい担任は数学科の男性教師で、推定年齢45歳だという。
「学級通信が4枚あるから、目を通しておいて」
「4枚?」
 余りか何かで、同じ内容のものが4枚あるのかと思ったらそうではない。1号、2号、3号、4号と通し番号が振られており、それぞれ違う文面となっている。
 1学期の始業式から卒業式まで、毎日学級通信を出し続けた先生は偉いと思うが、この先生はちょっと違う。同業者から見ても、異質な印象を受けた。
「一気に4号まで進む先生は初めて見た……」
「でしょ、でしょ!? あり得ないよ。中身がないんだから、1枚にまとめろって感じ」
 娘はなかなか手厳しい。一体何が書いてあるのかというと、「各係に先生が望むこと」「こんなクラスになってほしい」「最高学年としての自覚を持つために」などである。8割以上は、担任の主観的な意見で埋め尽くされており、息苦しくて読むのがイヤになってくる。一生懸命、生徒や保護者へのメッセージを送ったつもりなのだろうが、かなり押し付けがましい。
「うーん、たしかにこれはツラいわ。せめて、両面印刷にしてくれればいいのにね」
「そうそう、紙の無駄づかいだよ」
 おそらく、思いついたときに、あれもこれもと詰め込むタイプなのだろう。
 ファイリングしやすいようにと、用紙の左端にパンチで2つの穴を開けたところも痛い。はたして、保管すべきか?

 学級通信には、タイトルをつけることが多い。
 私は、どの学校でも「えがお」としてきたが、教員の個性に応じて、実にバリエーションに富んだタイトルが見られる。2校目の上品な女性は「あじさい」で、ご本人にピッタリだと思った。ユーモアたっぷりの男性は「びえ~」という、わけのわからないタイトルで通していたし、熱血な若手は「なかま」である。「飛翔」や「旅立ち」はキザな雰囲気となるし、タイトルなしの「○年○組学級通信」だと味気ない。何がいい、悪いというわけではないけれど、担任らしさを表したいものだ。
 娘の担任は、「わっしょい」というタイトルをつけていた。一度に、あれこれ片付けようとするイメージとかぶり、つい苦笑する。小太りの方だというので、「どすこい」でもいいかもしれない。タイトルに関しては合格点をつけたい。
 更新頻度も重要な評価のポイントである。この担任は、どのくらいの間隔で新しい学級通信を出すつもりなのだろう。ここは熱意の表れどころである。
 私自身は、最初に担任を持ったとき、週1回更新をしていた。2回目に担任を持ったときも、週イチペースを守っていたのだが、3年生になったら時間がなくて、月イチ程度になってしまった。そして、3回目の担任のときには、学期に1回というスローペースとなり、年3枚の学級通信ですませていたのだからどうしようもない。
 おそらく、娘の担任は、週1~2回は頑張るつもりなのではと予測している。中身はともかく、生徒や保護者のために何かをしたいという気持ちはありがたい。

「笹木先生の学級通信、まだ取ってあります」と卒業生に言われたことがある。
 2回目に担任を持ったとき、祝卒業の便りを発行しようと思っていたのに、卒業式の担当だった私は激多忙で、全然時間がなかった。式のあとで「書けなかった……」と後悔していると、事務室のお兄ちゃんが声をかけてきた。
「積立金の決算書を各家庭に郵送するんですが、他に同封するものがありますか?」
 これを逃す手はない。私はダッシュで学級通信を作り、郵便物にすべり込ませた。
 かくして、私のクラスだった生徒には、卒業してから学級通信「えがお」をもらうというインチキ現象が起きたのだった。
 ちなみに、パンチで穴は開けていない。
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