これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

玄関の番人

2012年06月21日 20時38分00秒 | エッセイ
 じわじわと暑くなってきた。
 梅雨の時期は、ボウフラが繁殖しやすい。水たまりでウニョウニョと泳ぎ、やがては蚊に成長していく。
 蚊に刺されやすい場所の一つに、自転車置き場がある。カゴに荷物を入れ、カギを差し込んでいる間、奴らは食事をしに来るのだ。自転車通勤をしていたときは、これでもかというくらい刺されたが、幸い、電車通勤になってからは逃れている。
 それから、玄関も狙われやすい場所だ。バッグからカギを出しているときに1箇所、解錠してカギをしまうときにもう1箇所喰われるという具合で、実に口惜しい。しかも、一緒にドアから侵入されてしまうと、室内でも痒い思いをする。まったく、忌々しい存在である。
 先日も、蚊を警戒しながらドアに近づいた。たまたま、その日は、それらしいものが見当たらなかった。
 代わりに、見覚えのないものがぶら下がっている。



 なんだ、これ?

 端っこに、「KINCHO」という文字が見える。これがあるおかげで、蚊が寄ってこないらしい。
 こんな気の利いたことをするのは、義母に違いない。我が家は二世帯住宅で、玄関は共通だが、1階が義母宅、2階が自宅となっている。まずは、義母の部屋にお邪魔することにした。
「こんばんは」
「あら、砂希さん、おかえりなさい」
「玄関にかかっているのは何ですか」
「ああ、あれね。虫コナーズ玄関用っていうの。いつも刺されちゃうから、効くかなと思って」
「効いてますよ! 今日は一匹もいませんでしたもの」
「やっぱり!? 買ってよかったわぁ」
 キンチョーのホームページを見てみると、虫コナーズはハエや蚊を対象としているようだ。
 学生時代の友人は、ゴキブリが大嫌いだった。夜の10時にバイトが終わり、一人暮らしをしているアパートに帰ると、不運なことに、玄関のドアにゴキブリがいた。彼は「うおっ」と悲鳴をあげたが、誰も助けに来てくれない。ゴキブリに近づくのが怖かったので、ドアから離れ、道路から様子をうかがっていた。
 そのゴキブリは、寝ていたのかもしれない。10分経っても、まったく動く気配がない。彼はさらに待ち、30分過ぎたが、相変わらずへばりついたままだ。だが、「早く家でゆっくりしたい」という思いより、「ゴキブリが怖い」思いが勝ち、ただ待つしかなかった。ようやく、1時間後、ゴキブリが動き始め、どこかへ去っていったので、彼は部屋に入ることができた。
「虫コナーズ ゴキブリ用」があれば、売れるかもしれない……。

「おばあちゃん、玄関のノブに虫よけをつけてくれたんだね。あれ、いいよ」
 部屋に入るなり、夫にも同意を求めた。
「え? そんなのあった?」
「…………」
 話した私がバカだった。
 こんなに大きなものに、気づかないってすごい。


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (16)
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