これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

無芸大食の男

2015年03月05日 22時49分17秒 | エッセイ
 わが夫を四字熟語で表すと、間違いなく「無芸大食」である。とにかくよく食べる。そして、食べていないときはテレビを見るか、居眠りしているかのどちらかだ。
 だから、3月2日に、「明日はちらし寿司でも作ろうか」と言い出したときには、ついにボケてきたのだと覚悟した。大好きなテレビをつけ料理番組を見ているうちに、自分にもできると錯覚しているのではないかと。
 ああ、お先真っ暗だ……。
「ただいまぁ」
 翌日、米粒ほどの期待もせずに帰宅した。だが、専業主夫の声は明るく弾んでいる。
「おかえりぃ~」
 まさかと思ってキッチンをのぞくと、テーブルの上には料理番組で見たようなちらし寿司が載っていた。



 おりょりょ。

 いただきものの大皿には、きざみ海苔と胡麻をちらした寿司飯が、こんもりと盛り付けられている。上には、柔らかな黄色の錦糸卵、濃いめの赤のマグロ、白地にオレンジが映えるエビが放射線状に並んでおり、視覚に訴える美しさだ。鮮やかな緑で場を引き締めているのは、菜の花だろうか。
「へー、すごいじゃない! よくできてる」
 夫からの返事はなかったが、口元がキュッと上がっている。心からの褒め言葉は、ちゃんと相手に届くものなのだ。
「いただきまーす」
 マグロとエビの影から、とびっこにイクラ、ウニが転がり出してきた。ここに、甘く煮付けたシイタケが加わって、どこぞの料亭でとびきりの贅沢をしている味となる。
 美味しい美味しいと繰り返しながら、夫への評価を修正する。「無芸大食」は間違いだったようだ。「一芸一能」あたりが適切だろうか。
 私と娘が4分の1ずつ食べ、半分は夫がすべて平らげた。
「大食」は修正しなくていいようだ。


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コメント (10)
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