これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

ひやひやと あつあつのあいだ

2017年09月10日 20時48分21秒 | エッセイ
 香川県における「700」には、深い深い意味がある。
 何と、県内にある、うどん屋の軒数だそうだ。県の面積が約1876平方kmだから、単純に700軒で割り算すると、2.68平方kmごとに1軒のうどん屋が存在する計算となる。かなり多い。
 また、メニューの豊富さでは他県の追随を許さない。麺やだしにも種類があり、ちゃんと予習してから店に入らないと、注文するときに迷う。
 ここで、私が学んだ知識をご披露しよう。
 麺は2つに大別される。ゆでた麺を水で締めず、アツアツのまま提供する「釜揚げ麺」と、讃岐らしいコシやモチモチ感が味わえる「水締め麺」だ。「釜揚げ麺」からは、ゆで汁ごと出されたものをだし醤油につけて食べる「釜揚げうどん」、釜揚げ麺を玉子と混ぜて、だし醤油などをかける「釜玉うどん」ができる。どちらも猫舌の私には無理だ。
 これに対して、「水締め麺」はぜひ食べたくてよだれが出てくる。でも、少々ややこしい。麺にだしをかけて提供されるスタイルを「かけ」というが、締めた麺を熱くして熱いだしをかける「あつあつ」、冷たいまま冷たいだしをかける「ひやひや」、冷たい麺に熱いだしをかける「ひやあつ」がある上に、頼めば熱くした麺に冷たいだしをかける「あつひや」も作ってくれるそうだ。また、だし醤油を直接かける「ぶっかけ」、シンプルに醤油だけをかけた「生醤油」、だし風味のカレーをかける「カレーうどん」もあるから、用語を理解するだけで混乱する。
 頼りの情報誌には、さらに突出したメニューが載っていた。



 すだちのスライスで覆われた「すだちひやひや」、アンチョビ入りの「オリーブ釜玉」、ワカメの練り込み麺で作った「元祖わかめうどん」、ラーメンとの境目があやふやな「背脂入りうどん」、麺の上に緑のネギが広がりネギしか見えない「ねぎねぎうどん」、マグロ・トロロ入りの「山かけ鉄火しょうゆ」、「チャンポンうどん」などなど、「マジかよ」と目を剥くうどんのオンパレードで、もう何が何だか、わけがわからない。
 昭和の交通標語に「狭いニッポン そんなに急いでどこへ行く」というものがあった。ここではさしずめ「狭い香川に うどん屋700 どこへ行く」であろうか。選択肢は山ほどあるのに、胃袋はひとつ。ベスト、ベターな選択は何だろう。
「こうなったら、地元の人に聞くしかない」
 手っ取り早いのが「うどんタクシー」である。時間制で料金が決まっており、公共交通機関では行きづらい店にも連れて行ってくれるし、頼めば空港で降ろしてくれるから便利だ。



 しかし、何の連絡もなく、約束の時間に10分遅れてきた……。運転も上手とはいえないから、キッチリした性格の方にはおススメしない。
 夫と娘には「おでんも食べたい」との希望もあったので、うどんとおでんが楽しめて、小ギレイなお店を頼んだら、「おか泉(せん)」という店になった。情報誌にも掲載されている店である。



 ここで私が頼んだのは「肉冷やしうどん」である。本来、このメニューは「ひやひや」で味わうようだが、熱いだしの「ひやあつ」にアレンジしてもらった。



 いやあ、チョー美味でしたわぁ。
 まず、麺の歯応えがいい。硬すぎず軟らかすぎず、適度な弾力でもっちりした旨味が味わえる。だしは甘めで、細切れ牛肉によくマッチしている。少々、すき焼きの割り下がプラスされたような味で、甘党の私にはたまらない。これが温かいので、実はお腹を下していた身にはありがたかった。
「おでんもうまい」
 お腹の元気な夫と娘は、2人でおでん10串も平らげた。1本100円でお得だ。
 すっかり満足して支払いをすませる。レシートはこんな感じであった。リーズナブルさがありがたい。



 香川県のうどん文化は「自由」を謳歌している。
 温度や材料にとらわれず、新しいもの、珍しいもの、美味しいものを追求していく姿勢に衝撃を受け、ガラガラグシャグシャと音を立てて既成概念が崩れていった。
 おみやげに、うどんの乾麺を買った。
 香川式にならって、オリジナル笹木うどんを作るぞ~!


    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする