これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

タイトルうまいぞ 「新感染」

2017年09月17日 23時43分38秒 | エッセイ
 先月、別の映画が始まる前に「新感染」の予告を観た。



 特急列車という密室の中で、続々とゾンビが増殖し、集団で襲い掛かってくる。一本とられたようなタイトルもホラーぽい。幼い娘を抱いた男性が、座席の間の通路を、必死の形相で走る。一体、どこに逃げたらいいのか?
 予告映像が怖すぎて、「これはパス」と決めたはずなのに、いざ公開されると気になって仕方ない。
「うーん、結構評判いいみたいだぞ……」
 口コミや評価をチェックしていたら、少しずつ「見たい」方向に傾いてきた。最終的には、映画通のブロ友さんが、レビューに満点の星5つをつけていたことが決定力となり、これから台風18号が近づいてくるというときに、わざわざ新宿まで足を運んできた。



 上映劇場が大幅に減ったせいか、シアター内は満席である。客層は10代から20代の若い人が多い。
「うわっ、怖い。2時間持つかな、オレ」
 隣に座った学生風の男の子は、相当な怖がりらしく、冒頭のシカから怯えていた。ちなみに、彼と一緒に来ていた男の子は、やたらと涙もろいようで、後半はほとんどすすり泣きをしていた。どういう組み合わせなのだろう。
 後ろに座った女子高生6人組は、チビったら大変だと思ったのか、上映開始直前に集団でトイレに駆け込んでいた。お化粧して大人っぽく見せてはいるが、行動はまだまだ子どもで可愛らしい。
 さて、ストーリーは序盤からグイグイ引っ張っていく。やり手のファンドマネージャー、ソグは妻と別居中で、実母と娘のスアンと一緒にソウルに住んでいる。ソグはスラリと背が高く、端正で涼し気な二枚目であるが、性格はクソ。世の中は自分中心に動くと思っていて、他者への思いやりに欠ける行動ばかり。
 スアンは、大好きな母の住むプサンに行きたい。ちょうど、スアンの誕生日ということもあり、ソグは無理して娘の手を引き、朝イチの特急列車に乗り込んだ。ゾンビ化するウイルスに感染した女が乗っているとも知らずに。
 スアンはトイレに行きたくなった。だが、ドアの前には恰幅のよい男が立っていて、「ここは長いから他にした方がいい」と言われる。この男は、サンファという名でマ・ドンソクという俳優が演じている。最初は、元プロ野球選手の石井一久氏かと思った。現役引退後は、吉本興業の契約社員になったという話だから、勝手に結び付けてしまったようだ。似ていると思ったのは私だけだろうか。



 サンファは、実にいいヤツである。ソグが少しずつ変わってきたのも、サンファの影響が大きい。サンファの妻でお腹の大きなソンギョンも善人だ。きっと、聞き分けのよいお利口さんが生まれてくるに違いない。
 まもなく、車内で騒ぎが起きる。ソグは、スアンを連れてとにかく逃げるしかなかった。



 通路から噴き出すように、集団で追ってくるゾンビは、黒目が水色になっていて恐ろしい。でも、3分で慣れる。だって、攻撃が単調なんだもの。両手を上げて獲物に飛びかかり、体に噛みつくだけだ。身体能力は異常に高い。高所から飛び降りても、体操選手並みに着地を決めるし、走行中の列車に追いつく脚力や跳躍力もある。
 その反面、知能は相当低いらしい。ソグたちがゾンビの習性を見抜き、裏をかく場面は、張りつめていた心がホウッと緩むひとときだ。しかし、敵はゾンビだけでない。この映画では、ゾンビの襲撃という危機を通して、人類が共存していくには何が大切かを伝えたかったのではないか。
 終盤が近づくにつれ、私の目にも涙が浮かんできた。ハンカチやタオルは必需品であろう。涙とともに、体にたまったストレスが老廃物として流れていくという。ハングルで書かれたエンドロールが登場する頃には、「いい映画だった。有意義な時間を過ごせた」という気分になれた。
 女子トイレは、新感染シアターから出てきた女性で列ができていた。後ろに並んでいた、20代のOL風の2人組がこの後のことを話題にしている。
「何か食べていく? もう6時半だよ」
「そうねぇ。食欲なくなっちゃったけど」
「肉はやめとこう」
「そうだね、アハハ」
 聞き耳を立てていたわけではないが、クスッと笑いそうになった。
 この映画は、できれば食事のあとに!


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コメント (6)
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