僕達の戦争 ー中編ー

『　お前達で捕まえろ。　』

ジャイアンは言いました。

それは社員さんにとって死の宣告と同意。


そして次の日。
社員さんが順番に、私服で店内を警備する事になったのです。


(　たいそうな事になったな。　)

俺はバイトという身分なので、いつものように仕事をこなしていましたが、

店長は獲物を狙うハンターの目をしていました。


しかし、次の日の朝礼で。


店長は今にも死にそうな顔をしていました。


例えるなら、

足をもがれたバッタのような。

塩を山ほど盛られたナメクジのような。

そんな表情。


聞かなくても何があったのか大体見当がつきました。

で、この一言。


『　ちくしょう。またやられた。　』


店長乙。


ちなみに犯人は先日と同一犯。三人組の若い男性達。

被害は、炊飯ジャー３つ。

総額はたいしたことないのですが、なんせ昨日の今日の出来事。

ジャイアンの耳に入ってしまえば、店長が×××××(自主規制)な事に。

俺達バイトのケツも、とばっちりを受けないとは言い切れない。

そんな危うい状況。



そしてまたまた次の日の朝礼。

店長は皆に紙を配りだしました。

それは、店長が考え出した犯人捕獲作戦のマニュアルでした。

作戦名は店長が命名。

その名も…


【　コアタイム　】


こいつが俺の笑いのツボをピンポイントで鬼神突。



天秤丸『　んばふぅんっ！！　』

笑いとは程遠い雰囲気の中、思いっきり吹き出す。

周囲の目が(特に店長の目が)ジロリと俺に集まる。

なんとかクシャミをするフリをして、このピンチを乗り切る演技派な俺。

気分はエディー・マーフィー。


…まぁそれはさておき作戦内容を、簡単に紹介します。

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①犯人を発見した従業員は店内放送を流す。

　店内放送の内容は以下の通り↓

『　レジ業務以外の方はコアタイムスタート。　』


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……。

いやいや。

コアタイムって怪しすぎませんか店長。

この時点で、犯人に警戒される事うけあいですね。

店長乙。

では続き↓

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②放送が流れたら社員は、気づかれないように犯人を見張る。

　バイトは、エレベーター、１Ｆ駐車場、２Ｆ駐車場、
　店内出口、外売り場出口、にそれぞれつき、適当な作業をしておく。

　社員は犯人の犯行を目視し次第、店内放送を流す。

　店内放送の内容は次の通り↓


　『　コアタイム始まりました。　』


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……。

いやいや。

『　冷やし中華はじめました。　』じゃないのだから。

しかも①のコアタイムスタートと意味かぶってるし。

もうね、こんなんじゃ犯人だけでなく、
一般のお客様でさえ警戒しちゃいますよね。

店長乙。


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③犯行後、犯人が外売り場の出口、または２Ｆ駐車場に出た時点で捕獲。

　捕獲が完了すれば以下の店内放送を流す↓

　『　コアタイム終了しました。　』


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本当にこんなので上手くいくのだろうか。

まったくめんどくさい事になった。

このまま犯人が来なければいいのに。

そう思う自分がいる。


しかしその反面。

俺は、激しく魅力を感じていた。

そう。

犯人第一発見者に与えられる特権。

俺の中の何かが俺に訴える。


(　やべぇコアタイムスタートって言いたい。　)




　　　　ーー続くかもしれないーー