天秤丸の独り言

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牙のないトラ

2007-01-14 | Weblog
広大な砂漠の真ん中に



オアシスがありました



そのオアシスに



一匹の臆病なトラがいました




そのトラには



牙がありませんでした



それ故 トラは



闘う事を拒み


傷つく事を恐れ



逃げる事を常としていました




恐れる事もなく


傷つく事もない


このオアシスの中で



平和に生きる事





それだけで トラは幸せでした



疑う事なく



そう信じていました







ある時トラは



砂漠の遥か遠方に 



大きな虹を見つけます




その虹の 七色の光は



とても綺麗で


とてもあたたかく





どこかセツナイ






そんな光だったといいます






けれど



トラにとってその光は 



あまりに眩しくて



トラは 光を避けるように



オアシスの奥へ



逃げ入りました






あくる日も



またあくる日も




砂漠に 虹がかかりました




そのたびトラは



虹を直視する事ができずに



オアシスの中を



光から逃げ回りました






けれど本当は




トラは その光が







大好きだったのです








トラは



生まれてはじめて



願いました




勇気が欲しい





大切な気持ちと



かけがえのない想いと







向き合う勇気が








とうとうトラは




オアシスを飛び出し




虹に向かって




まっすぐに 走り出しました




広大な砂漠を




来た道を 振り返ることなく




駆け出しました





ノドが渇きます




噴出す汗が目にはいります




足の裏が焼け付くようです




そして




強烈な不安が トラを襲います





それでもトラは





走ることを やめませんでした








どれくらいの時間 走り続けたでしょうか




トラはやっと足をとめ





空にむかって





頭をあげました





虹は そこにありました






トラは




砂漠の砂粒ほどの




勇気をふりしぼり





七色の光を





まっすぐに





その目にとらえました





しかし




その光は





いつしかぼやけて





虹と共に





消えてしまいました









トラの想いは




叶う事はありませんでしたが




その虹の 七色の光は




トラの目の奥に




しっかりと焼きついています





虎はやっと



気付く事ができました





自分には



牙はなくとも






立派な爪がある事を








広大な砂漠の真ん中に


オアシスがありました




そこに


臆病なトラの姿は 


もうありません






広大な砂漠の中に





確かにトラの





足跡が





立派な爪の





足跡が