悲しみは深く・・
競馬界が宝をうしなった・・・
29日午前6時、栗東トレセンのウッドチップコースで
鳴尾記念出走に向けての追い切りを行っていたジョワドヴィーヴルが、
4コーナー付近で追い切りを中止した。
馬体に違和感を感じた騎乗者は、即座に下馬。
しかし、ジョワドヴィーヴルは左後脚の飛節上部が腫れ脚をつけない状態で、
左下腿骨を粉砕骨折していたため、安楽死の処置がとられた。
厩舎関係者の話によれば、この日のジョワドヴィーヴルは普段とまったく変わらない様子で、
特に歩様が悪い等といった不安材料は全くなかった。
確かに今日は前日からの降雨のために馬場は悪かったが、
特にアクシデントを招くような悪条件は見受けらなかった。
名牝ブエナビスタの妹であり、
2011年、デビュー2戦目で阪神JFを制したジョワドヴィーヴルのご冥福をお祈りします。
(取材:花岡貴子)
2013 5/30(花岡貴子氏コラム抜粋)
入厩した直後のジョワちゃんはとても慎重で、
洗い場の下に敷いてあるゴムの切れ目すら気にするほど周囲をよく観察していましたね。
運動も前に誰かいたほうが安心するのか、1頭でスタスタと歩くタイプではありませんでした。
目がクリッとしていて、皮膚が薄くて品があって、そしてすごく華奢でした。
でも、日を追うにつれ、仕草は堂々としたものに変わり、
走りも姉のブエナビスタを彷彿させる闘争心を出すようになりました。
ヴィクトリアマイル4着と復調の兆しが見え、
さぁ、これからというときだっただけに残念でなりません。
松田博資師はとても馬を大事にする方で、
常日頃から「牝馬なら繁殖にあげてやるのが役目」と話しています。
こと、新馬戦のジョッキー選びは慎重で
「いきなり厳しい競馬をさせて馬を壊してはいけない」と気を配っています。
今回のジョワドのことも、淡々としながらも内心とても心を痛めていらっしゃいます。
ニュースの原稿にも書きましたが、ホントに順調でどこも悪いところがなかったんです。
それでも、こういうことが起きるんだな、と思いました。
強いて気になったことを挙げるなら、
松田博師は昨年暮れから今年のはじめにかけてジョワドの栗東帰厩が秒読みに入ったころ、
「(ジョワドの)体重は470キロを超えるくらい増えているのに、管囲(かんい)が変わらない」
ことをとても気にしていました。
管囲(かんい)とは、馬の体の大きさを測る基準のひとつで
、前脚の膝と球節の中間の周囲のことを指します。
体はパワーアップしているが、骨の太さが変わらないことをひどく心配していたんですね。
その後の管囲の変化をわたしは存じ上げないし、それと今回の事故の因果関係は不明です。
誰にもわからないでしょう。
ただ、ジョワドは飛び抜けて強い心臓を持ち、
とても特徴的な走りをする天才少女でしたから。
それゆえ予測し得ない“何か”を背負っていたのかもしれません。
騎乗者が異常に気付いた直後、ジョワドに即座に走るのをやめさせたそうです。
それでも、ジョワドは最後の最後まで走ろうとした…。
闘争心溢れるジョワドを必死で抑えて、下馬するまでのほんの僅かな時間をどれだけ長く感じたことでしょう。
本当にこういう事故だけは何年現場にいても慣れません。
避けては通れないとはいえ、二度と起こって欲しくないと心から願います。
夭折したジョワドヴィーヴルのご冥福を謹んでお祈り申し上げます。合掌。
左ブエナビスタ・右ジョワドヴィーヴル