アフガン情勢に関する緊急メッセージ
2021年9月18日
「緊急メッセージ14」
パンシールを取り巻く状況について大きなニュースは流れていません。が、今日もタリバンが抗議デモを激しく規制しているニュースが流れています。
また、「タリバンが子供に爆弾を仕掛けさせていたこと」を告発しようとした女性検事がタリバンに懸賞金をかけられたことをニューズウィークが報じています。
また、タリバンが刑務所から万を超える収監者たちを釈放、その中には強盗、殺人犯、レイプ犯などがいて、多くがタリバンに加わったとも書かれています。
カンダハールでは宿舎を徴用するために数千の住民の立退きを命じたため、住民が抗議デモを行ったこと、また南部のヘルムンドでは遺跡を破壊したことが伝えられています。
2001年のバーミヤンの大仏の爆破を初めとして各地の貴重な文物の破壊が続いています。タリバンは歴史的なもの、文化的なものに意味を認めないようです。
しかし、私が今日、目にした一枚のイラストはとても素晴らしいと思いました。
マスードの息子アフマドを描いたイラストで、ジョウロを持ってアフガニスタンという星に水をやっているものです。
大地はタリバンを象徴する黒で覆われていますが、パンシールにだけ、バラが咲いています。「自由を育てるために」と副題がありました。
まだ全土を覆う緑は少ないですが、アフマドは諦めず水をやるに違いありません。画像1
他のツイッターの中には、私が幼い頃のアフマドに写真集「マスード、愛しの大地アフガン」を見せている写真も載っていました。画像2
そのアフマドがいま父の遺志を継ごうとしているのです。
「いま」を切り取るだけでなく、過去に遡ることで、初めてものごとが繋がり、未来へと続いていくのではないでしょうか。
2021年9月18日 長倉洋海
画像1
画像2
「緊急メッセージ13」
本日は、まずお詫びを申し上げます。
9/7投稿の「緊急メッセージ9」にて掲載いたしました、
『パンシールで撃ち落とされたパキスタン軍機』の画像につきまして、誤情報であることが判明いたしました。
この写真は、『2020年1月にパキスタン空軍機が墜落した際の写真』であり、Nawaiwaqt Groupというパキスタンの新聞社の記事写真になります。
訂正してお詫びし、投稿からは削除させていただきます。
日頃より「正確な情報」を心掛けているにも関わらず、本当に申し訳ございません。
この写真につきましては、誤情報の可能性があることが後日わかりましたが、その時点では、「誤りである」という情報と「真実である」という情報が錯綜しており、
判断がつかず、またこの時点でパキスタン軍による攻撃は事実でありましたため、訂正をしておりませんでした。
今後はより一層、確かな情報を掲載するよう注意いたします。
このたびは、誠に申し訳ございませんでした。
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この二日間、緊急メッセージを書かなかったのは、パンシール等での動きがなかったからではありません。
その間、メディアが伝えなかっただけです。今日もタリバンの蛮行は続き、カブールでは若者がどこかへ連行されています。
そうした中、Twitterでアフガニスタン女性の権利活動家のマハバウバさんが◯◯テレビのインタビューで、「世界よ、恥を知りなさい」と強い口調で言うのに心打たれました。
その迫力は「祖国の現実」を憂うからこそのものだった思います。
私も彼女のように「世界よ、黙っているのか。それでよく、民主主義国家だとか人権尊重と言えるものだ」と叫びたい気持ちでいっぱいです。
「欧州議会がアフマド・マスードを招聘したいと言っている」というニュースが流れましたが、山岳部で抵抗を続けているアフマドがどうしたら行けるというのでしょう。
話を聞くよりも、まずタリバンによる抑圧を止めさせ、食料を送り、医療団や調査団を派遣すべきです。
また、タリバン内部での権力闘争で、最強硬派のハッカニネットワークが力を増していることが推測されています。
それでも世界は「宥和を」というのでしょうか。
2021年9月17日 長倉洋海
「緊急メッセージ11」
一昨日、山の学校のサフダル校長(故人)の次男バーゼット(バルフ大学生)から「私たちは大丈夫です」とメールがきました。
一家がパンシールから無事の出られたと知ってホッとしました。しかし、翌日には、「障害のある兄弟(3人)がいるので、とても困っている。
状況が落ち着くまで外国に出られたらと願っている。何とか助けてもらえないか」というメールが来ました。
多くの住民が逃げた後の空き家にタリバン兵が寝泊まりしています。そうしたタリバンの中でも、パキスタン人やアラブ人の兵士が特に残虐な行為を働いています。
昨日は、S N Sに「投降して捕まった抵抗戦線の兵士を射殺する映像が流れました。11歳から12歳くらいの少年を家族から引き離し、どこかの場所で監視下に置いているという情報も入っています。
こうした人権抑圧、国際法違反が行われているのに、国連も西欧諸国も日本もそうしたことはあたかも存在しないように振る舞っていることに深い憤りを覚えます。
そうした行いはいつが我が身に帰ってくる、と思うしかありません。
カブールを初めとする都市部で、タリバンへの抗議デモが引き続き起きていますが、昨日はタリバン支持の女性デモがありました。
強制されたのか自分の意思なのはわかりません。しかし、「ほら、タリバンを支持する女性もいるじゃないかと」という声が聞こえて来そうです。
マスードの娘マリアンはtwitterで「
私は彼女たちがどんな着衣をつけようと、それがどんなに極端なものであっても構わないと思う。ただ、ほかの人の自由や権利を迫害するのがいけないのです。
彼女たちはほかの女性が声を上げられないという事実に目を向けていません」と批判しています。
21年前にマスードは「アフガニスタンの平和に関心を払わなかったら、平和を達成しようとするアフガニスタンの人々を助けなかったら、テロリズムは米国はほかの国々を必ずターゲットにしていくだろう」と世界に警告していました。
米国での多発テロを予言した言葉でもありましたが、それだけに止まらず世界の未来を予言しているのかもしれません、
アフガニスタンでいま起きていることに関心を払わないということは、自分たちの問題にも関心を払えないということなのかもしれません。
2021年9月12日 長倉洋海
山の学校の卒業生から届いた悲痛な便り(2)
たった今、山の学校の卒業生で、会の篤志家の方の支援で大学に通っていたゴラムから、悲痛なメールが届きました。
また、9/11にはバーセットからも届きました。和訳したものを添付しますのでご覧ください。
カブールにいるであろうゴラムやバーセットの置かれた状況がわかって、何もできないのが本当に辛いです。
***** 9/12 *****
健康で幸せな時間を過ごされていることと思います。皆さんに感謝しています。
とうとうパンジシール州がタリバンの攻撃を受け、人々は家を失いました。
タリバンは子供、若者、老人、女性を含む 多くの人々を殺しましたし、州のたくさんの地区や村も支配しています。
タリバンは3日前にポーランデに現れ、家に隠れていた人々を痛めつけました。
僕の家族はポーランデにいます。
家族によるとタリバンがやって来て武器や軍に関係する物を何度も探し、家の周辺から発射物が見つかると僕の父を殴り、「お前は兵士だ。お前の息子たちはどこにいる?」と言われ、姉妹を痛めつけました。
僕にはどうすることもできません。父は治療を必要としています。
タリバンは州内のいくつもの村で多くの若者を殺しました。
僕たちは自分たちの将来や状況についてとても心配しています。
神がこのような状況からこの国を守ってくれますように!
タリバンはパンジシールの電気、輸送路、ネットワークを遮断しました。
かつてロシアを破った時、ロシアには力と強さがあったけれどアフガニスタンを倒すことができませんでした。
人々は団結していたし、また特別な指揮官、アフマド・シャー・マスードが人々を率いていました。
皆さんの方が僕より彼をよく知っていますよね。
僕たちを助けてください。僕たちはもうアフガニスタンに住むことはできません。
タリバンは戦いに参加した全ての人々を殺すつもりでいます。
それは僕たちにとってとても困難な状況であり、僕たちの命は危険にさらされています。
どうか僕たちを保護し、助け、僕たちのために祈ってください。
財政的な援助も必要としています。
僕たちをアフガニスタンから脱出させてください。この海の向こうから手を差し伸べてください。
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(2) バーセット(バルフ大学 考古学学部)
***** 9/11 *****
こんにちは。皆さんが安全で健康であることを願っています。
僕たちは神のご加護により9月9日にパンジシールを出て、家族みんな無事です。
パンジシールはタリバンの攻撃を受け、最悪の状況にあります。
3人の弟たちには障害があるので、僕たちは彼らの世話をしなければなりません。
状況が改善されるまで、家族が海外に退避できるよう、皆さんに協力をお願いしたい。
どうか助けてください。僕は真剣にあなた方からの連絡を待っています。
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■山の学校の卒業生から届いた悲痛な便り(1)
山の学校の卒業生で国立大学に進学した数人の奨学金を会員有志にご支援いただいて来ましたが、奨学生より最近届いたメールをご紹介します。反タリバンの拠点となったパンシールで、人々の小麦粉や米・油など食糧も枯渇し始めているはずです。「祈っているよ」と伝えるだけで、助けたくてもただ祈りながら見守ることしかできないのがもどかしいです。
(1) ゴラムより(バルフ大学経済学部)
***** 8/20 *****
こんにちは。あなた方が健康で幸せであることを祈っています。そして皆さんの支援とご親切にとても感謝しています。
僕は3週間前に大学に行き、8学期をスタートしましたが、タリバンが私の大学のあるバルフ州や他の州を攻撃し、1週間の間にそれらすべての州を陥落させました。でもパンジシール州は落とすことができませんでした。 タリバンはアフガニスタンを支配するため、この20年間に5万人以上の兵士を殺しました。 タリバンは政府軍で働いていた人々に復讐し、彼らは仕事を失いました。
僕の兄は警察で働いていて家族の家計を支えていましが、彼も失業し、僕の家族は経済的危機に直面しています。
僕たちは安全、教育、経済、政治、社会など多くの問題に直面しており、生活する上で厳しい状況にあります。 僕たちは経済問題に直面しており、あらゆるものの価格が上昇し、足りない状況です。 僕たちはタリバンからの警告を受けており、戸別訪問を受けるかもしれません。
しかし、神は人間より思いやりがあります。より良い日が来ることを願っています。
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(2) バーセット(バルフ大学 考古学学部)
***** 8/25 *****
こんにちは。皆さんの安全と健康を願っています。
アフガニスタンの状況が悪く、無政府状態です。
僕たちはパンジシールにいますが、パンジシールはタリバンに包囲されています。
僕たちのために祈ってください。
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「山の学校の最新情報」
山の学校のそばに住むシャージア先生(卒業生で山の学校の教師)からの連絡がありました。
昨夜、タリバンがポーランデに入ってきて、彼女の兄さんは銃を持って出たきり、戻ってこないというのです。
お兄さんとは連絡がつかないようですが、村の周辺は静かだったようです。タリバンはポーランデ川最上流にヘリで降り、そこから下って彼女の集落までやってきたようです。
ポーランデ地区のほとんどの家族はカブールに逃げたとのことでした。
途中の道路は家族連れであれば通ることはできるようです。ただ、カブールにではなく、さらに上流、山の方に逃げた家族もいるようです。
同じ集落のホラム先生や、その娘で学校の教師だったマリナも無事とのことでした。
戦うと言っていたヤシン先生は家族とカブールに逃れることを決め、同僚のシャーミルザ先生もカブールに向かったようです。
爆撃や銃撃などで傷つくケースがなかったようで、とりあえず、ホッとしています。
戦闘が終わり、人々がパンシールに戻った時に、何らかの形で支援できる方法を考えたいと思います。
怪我することなく、故郷に戻り、生活ができるようになることを心から祈るばかりです。
抵抗戦線のリーダー、アフマド・マスードは山に逃れ抵抗を続けていますが、昨日、外国人記者と電話で話をしたようで無事なようです。
しかし、世界は関心を示さず、主だった反タリバンのリーダーたちは国外に逃れたままです。
それでも全国で女性たちが抗議の声をあげ、それを記録しようとするジャーナリストがいます。
必死の思いで国外に届けられた声に耳を傾け、それを少しでもすくい上げていくことができたらと願っています。
2021年9月10日 長倉洋海