光を見失ったあの時、どうしてよいか分からずに、狼狽しながら闇雲に探し回った。
そして、巡り会った。いち早く闇をかき分け、光の源を探しあて、再び光へと続く道を指し示してくれた、彼らに。
手探り状態でさ迷っていた暗闇の中、どんなにありがたく心強く思えたことか。
独りではないのだと、闇から救われて気づいた。彼ら、そして、彼らと共に道を進む人々が、まだ何人も存在することを、あの時初めて知ったんだ。
彼らが再び探し出してくれた光へと続く道。
共に、どこまでも歩いて行きたかった。
光に到達するまで、到達したあとも、ずっと仲間でいたかった。疑いもなく、仲間でいられると思っていた。
でも、彼らは、ある日を境に、仲間を置き去りにして、光へと続く旅から離脱してしまった。
なぜ? どうして! どこへ行くの?! 動揺しきった私の叫びは、彼らの耳には届かなかった。
人々の反応も様々だった。
これまでの功労に感謝し、彼らの意をくみ、何も追及せずに、静かに彼らを見送る人。
彼らの労力をねぎらい、至らなかった援助を申し出る人。
なぜここまで来て、志を曲げるのか、屈するのかと、怒りを露にする人。
でも圧倒的に、袂を分かつ彼らの立場を認め、冷静に、どこか淡々と、礼を述べて見送る人の方が多かった。
反発よりも容認の意が多かったこと、それが私には不思議だった。なぜ、そんなにもサバサバと、去っていく彼らの後ろ姿を眺めていられるのか…。
古くから彼らを知る人々にとっては、やがて、別離の日がやってくることの予感があったのか…。
そんな旧知の人々に、彼らは、光へと続く道から離脱する本当の訳を、打ち明けたのかも知れない。
でも、私の耳には聞こえなかった。私は新参者で、いつも、前進する人々のどんじりにいたから。
だから今も、なぜ? どうして! どこへ行くの?! 彼らに叫んで届かなかった思いが、頭の中から離れない。
いつまでも、しこりとなって残る疑問。伝えたくても、本心を教えて欲しくても、もう彼らの消息は掴めない。何処ともなく去ったきりーー。
いつも先頭を歩き、私達が安全に道を辿れるよう、誤った道に迷い込まぬよう、細心の注意を払い、導いてくれていた彼らだったから、私は安心しきり、頼りきっていた。
彼らにしても、光に辿り着く前に、何が起こるか、どんな苦難が待ち受けているか、先の見えない不安な思いは、私達と同じはずだった。
彼らの判断にも迷いがあり、選ぶ道が正しいか、誤りか、先頭を行く彼らにこそ、確かな道標が必要であったろうに、私は彼らに依存するばかりで、彼らを助力することにまで思い至らず、助力するほどの力もなかった。
だから、疲れたの?
あとを追う私達が、余りにも頼りなさ過ぎて、重荷になった?
いい加減、自分達で判断しろと、言いたかった?
だから、見切りをつけて離れたの?
落とし穴や崖を避け、行く手を遮る強固な障害物を、砕き、退け、道を開くことが辛くなった? 限界を感じたの?
いくら忠告しても、底の見えない落とし穴にはまったり、崖から奈落の底へ転げ落ちていった仲間を、諦めることも、救い上げることも、虚しくなった?
彼方に見える光そのものに、訝しさを感じたの?
あの光が、本物の輝きなのか、幻影か、確信が持てなくなった?
そうだよね。もう何年も追い求めてきた。あと少し、もう少しと、希望を絶やさず前進を続けて、近づけた、かに思えても、また遠のいて、希望、落胆、希望、落胆、何年もその繰り返し。
でもね、また、今、いよいよ光に近づいてる感があるんだ。また、錯覚かも知れない、また、徒労に終わるかも知れない。でもね、今度こそは、これまでとは違う気がするんだよ。そう、ただの気、確信はない。でも、光に到達する気運が、かつてないほど強まってきた感があるんだよ。
まだ希望を捨てずにいる私の思いを知ったなら、どこまでもめでたい奴だな、と彼らは失笑しながら呆れるだろうか。
笑われても仕方ない。何の役にも立てなかった私だから。
先頭を行く彼ら指標が目の前から消えて、残された私はおぼつかない足取りでヨタヨタと進むしかなかった。他の仲間がどこを歩いているか、確かめる余裕すらなく、こんなにも彼らに依存していたのかと、自分の弱さを思い知った。
闇に呑み込まれる日々を嫌悪し、僅かに見えた光へと続く道を歩もうと、決意して歩き始めたのは、自分自身であったのに。
彼らに準じて、道を外れた人、それ以前に、長旅に疲れ果て、脱落した人々は、果たして何人いたのだろう。
重責を担った人ほど、終わりの見えない長旅への徒労感は激しかったのか、もう、窺い知ることも出来ない。
現在、道に残った仲間はそれぞれに、光への到達を信じ、懸命に、自分なりに努力して、険しい道のりを辿っている。
どんじりを歩き、助けてもらうばかりだった私も、彼らを失った心細さに耐えながら、少しは、自助努力して進むことを覚えた。仲間を助力することも覚えた。
一度見失い、再び導かれた光への道。
心から安堵して、再び道を踏みしめた時、もう、怖じ気づくことを止めたんだ。一歩進んで、たとえ百歩後退することになろうとも、絶対に後ろを向かずに前を向いて、また一歩を進む、そう自分に誓ったんだ。
私の視界には、まだ光が見えている。1人で歩き出した時は、おぼろげな弱々しい光に思えた。一度見失い、導かれて再び目にした時、光は以前よりも輝きを増し、仲間と共に道を一つにして歩む今となっては、もう二度と見失うことはない、そう思えるほど、光は足元の道を照らすほどに、強い光彩を放っている。
いよいよ光の源に近づいているのだと、感覚的にそう思う。確かな手応えは何もない。けれど、幾度もの失望を味わいつつ、何年も堪えてここまで来た。だからこそ、これまでとは違う、光到達への気配を、今、強く感じる。
もう後戻りすることも、立ち止まることもない。他に光に通じる道はなく、歩みを止めれば、元の闇に呑み込まれるだけ。それこそ、希望のカケラもない、絶望的な闇の世界にーー。
まだこの先、どれほどの苦境に晒されようとも、迷わずに、私は光が見えている方向に進む。自分を信じ、仲間を信じて。
無力で軟弱な私が少しでも強くなれたのは、彼らのお陰。光を見失った絶望の淵から救ってくれた、彼らのお陰。
大恩人であるのに、一言のお礼も言えないままに別れてしまった。
今さらもう遅いけれど、ありがとうございました、と伝えたい。届くものならば。
ーー光への道筋と共に、同じ道を行く同士の存在も知らされて、どんなに嬉しかったか、頼もしく思えたか。まだ迷って曇っていた私の目は一気に晴れ、勇気を持って、今に続く道を歩み始めることが出来ました。
今になっても、あの日の感激とあなた方への感謝の思いは薄れることはありません。本当に、ありがとうございましたーー。
ようやく光到達への気運が高まったというのに、彼らが側にいないことが、無念でならない。
大恩人の彼らを讃え、喜びを共に分かち合えないことが、悔しくて、寂しくてたまらない。
信じ難いことであっても、彼らが離脱した事実を、現実として認めるしかないことが、辛くて仕方がない。
不自然に捻じ曲げられてしまったような違和感が、いつまでも心に残っていて消えない。
今、どこで、何をしているの? 私達に悟られない場所で、私達の動向を眺めているのかな。どんな思いで…?
長年の苦闘が報われ、私達が念願の、光の源へ到達した暁には、目の前に現れて祝福してくれるだろうか…。
選ぶ道のりは違えても、辿りつく先、求める光は私達と同じく、彼らの志に今も灯っているのだと信じたい。
いつか再び、彼らと合流し、悲願達成の祝盃をかわす日が、かつての約束そのままに、実現することを願い、待っている。
そして、巡り会った。いち早く闇をかき分け、光の源を探しあて、再び光へと続く道を指し示してくれた、彼らに。
手探り状態でさ迷っていた暗闇の中、どんなにありがたく心強く思えたことか。
独りではないのだと、闇から救われて気づいた。彼ら、そして、彼らと共に道を進む人々が、まだ何人も存在することを、あの時初めて知ったんだ。
彼らが再び探し出してくれた光へと続く道。
共に、どこまでも歩いて行きたかった。
光に到達するまで、到達したあとも、ずっと仲間でいたかった。疑いもなく、仲間でいられると思っていた。
でも、彼らは、ある日を境に、仲間を置き去りにして、光へと続く旅から離脱してしまった。
なぜ? どうして! どこへ行くの?! 動揺しきった私の叫びは、彼らの耳には届かなかった。
人々の反応も様々だった。
これまでの功労に感謝し、彼らの意をくみ、何も追及せずに、静かに彼らを見送る人。
彼らの労力をねぎらい、至らなかった援助を申し出る人。
なぜここまで来て、志を曲げるのか、屈するのかと、怒りを露にする人。
でも圧倒的に、袂を分かつ彼らの立場を認め、冷静に、どこか淡々と、礼を述べて見送る人の方が多かった。
反発よりも容認の意が多かったこと、それが私には不思議だった。なぜ、そんなにもサバサバと、去っていく彼らの後ろ姿を眺めていられるのか…。
古くから彼らを知る人々にとっては、やがて、別離の日がやってくることの予感があったのか…。
そんな旧知の人々に、彼らは、光へと続く道から離脱する本当の訳を、打ち明けたのかも知れない。
でも、私の耳には聞こえなかった。私は新参者で、いつも、前進する人々のどんじりにいたから。
だから今も、なぜ? どうして! どこへ行くの?! 彼らに叫んで届かなかった思いが、頭の中から離れない。
いつまでも、しこりとなって残る疑問。伝えたくても、本心を教えて欲しくても、もう彼らの消息は掴めない。何処ともなく去ったきりーー。
いつも先頭を歩き、私達が安全に道を辿れるよう、誤った道に迷い込まぬよう、細心の注意を払い、導いてくれていた彼らだったから、私は安心しきり、頼りきっていた。
彼らにしても、光に辿り着く前に、何が起こるか、どんな苦難が待ち受けているか、先の見えない不安な思いは、私達と同じはずだった。
彼らの判断にも迷いがあり、選ぶ道が正しいか、誤りか、先頭を行く彼らにこそ、確かな道標が必要であったろうに、私は彼らに依存するばかりで、彼らを助力することにまで思い至らず、助力するほどの力もなかった。
だから、疲れたの?
あとを追う私達が、余りにも頼りなさ過ぎて、重荷になった?
いい加減、自分達で判断しろと、言いたかった?
だから、見切りをつけて離れたの?
落とし穴や崖を避け、行く手を遮る強固な障害物を、砕き、退け、道を開くことが辛くなった? 限界を感じたの?
いくら忠告しても、底の見えない落とし穴にはまったり、崖から奈落の底へ転げ落ちていった仲間を、諦めることも、救い上げることも、虚しくなった?
彼方に見える光そのものに、訝しさを感じたの?
あの光が、本物の輝きなのか、幻影か、確信が持てなくなった?
そうだよね。もう何年も追い求めてきた。あと少し、もう少しと、希望を絶やさず前進を続けて、近づけた、かに思えても、また遠のいて、希望、落胆、希望、落胆、何年もその繰り返し。
でもね、また、今、いよいよ光に近づいてる感があるんだ。また、錯覚かも知れない、また、徒労に終わるかも知れない。でもね、今度こそは、これまでとは違う気がするんだよ。そう、ただの気、確信はない。でも、光に到達する気運が、かつてないほど強まってきた感があるんだよ。
まだ希望を捨てずにいる私の思いを知ったなら、どこまでもめでたい奴だな、と彼らは失笑しながら呆れるだろうか。
笑われても仕方ない。何の役にも立てなかった私だから。
先頭を行く彼ら指標が目の前から消えて、残された私はおぼつかない足取りでヨタヨタと進むしかなかった。他の仲間がどこを歩いているか、確かめる余裕すらなく、こんなにも彼らに依存していたのかと、自分の弱さを思い知った。
闇に呑み込まれる日々を嫌悪し、僅かに見えた光へと続く道を歩もうと、決意して歩き始めたのは、自分自身であったのに。
彼らに準じて、道を外れた人、それ以前に、長旅に疲れ果て、脱落した人々は、果たして何人いたのだろう。
重責を担った人ほど、終わりの見えない長旅への徒労感は激しかったのか、もう、窺い知ることも出来ない。
現在、道に残った仲間はそれぞれに、光への到達を信じ、懸命に、自分なりに努力して、険しい道のりを辿っている。
どんじりを歩き、助けてもらうばかりだった私も、彼らを失った心細さに耐えながら、少しは、自助努力して進むことを覚えた。仲間を助力することも覚えた。
一度見失い、再び導かれた光への道。
心から安堵して、再び道を踏みしめた時、もう、怖じ気づくことを止めたんだ。一歩進んで、たとえ百歩後退することになろうとも、絶対に後ろを向かずに前を向いて、また一歩を進む、そう自分に誓ったんだ。
私の視界には、まだ光が見えている。1人で歩き出した時は、おぼろげな弱々しい光に思えた。一度見失い、導かれて再び目にした時、光は以前よりも輝きを増し、仲間と共に道を一つにして歩む今となっては、もう二度と見失うことはない、そう思えるほど、光は足元の道を照らすほどに、強い光彩を放っている。
いよいよ光の源に近づいているのだと、感覚的にそう思う。確かな手応えは何もない。けれど、幾度もの失望を味わいつつ、何年も堪えてここまで来た。だからこそ、これまでとは違う、光到達への気配を、今、強く感じる。
もう後戻りすることも、立ち止まることもない。他に光に通じる道はなく、歩みを止めれば、元の闇に呑み込まれるだけ。それこそ、希望のカケラもない、絶望的な闇の世界にーー。
まだこの先、どれほどの苦境に晒されようとも、迷わずに、私は光が見えている方向に進む。自分を信じ、仲間を信じて。
無力で軟弱な私が少しでも強くなれたのは、彼らのお陰。光を見失った絶望の淵から救ってくれた、彼らのお陰。
大恩人であるのに、一言のお礼も言えないままに別れてしまった。
今さらもう遅いけれど、ありがとうございました、と伝えたい。届くものならば。
ーー光への道筋と共に、同じ道を行く同士の存在も知らされて、どんなに嬉しかったか、頼もしく思えたか。まだ迷って曇っていた私の目は一気に晴れ、勇気を持って、今に続く道を歩み始めることが出来ました。
今になっても、あの日の感激とあなた方への感謝の思いは薄れることはありません。本当に、ありがとうございましたーー。
ようやく光到達への気運が高まったというのに、彼らが側にいないことが、無念でならない。
大恩人の彼らを讃え、喜びを共に分かち合えないことが、悔しくて、寂しくてたまらない。
信じ難いことであっても、彼らが離脱した事実を、現実として認めるしかないことが、辛くて仕方がない。
不自然に捻じ曲げられてしまったような違和感が、いつまでも心に残っていて消えない。
今、どこで、何をしているの? 私達に悟られない場所で、私達の動向を眺めているのかな。どんな思いで…?
長年の苦闘が報われ、私達が念願の、光の源へ到達した暁には、目の前に現れて祝福してくれるだろうか…。
選ぶ道のりは違えても、辿りつく先、求める光は私達と同じく、彼らの志に今も灯っているのだと信じたい。
いつか再び、彼らと合流し、悲願達成の祝盃をかわす日が、かつての約束そのままに、実現することを願い、待っている。