東京新聞 2023年12月19日付社説
「自民裏金疑惑 政策活動費も公開せよ」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/296842?rct=editorial
自民党派閥の政治資金パーティー裏金疑惑を受け、
岸田文雄内閣の支持率が共同通信世論調査で22・3%と3カ月連続で過去最低を更新し、
不支持率も65・4%と過去最高になった。
裏金疑惑を巡り首相が指導力を
「発揮していない」とする答えが75・0%、
政治資金規正法の厳格化や厳罰化が「必要だ」は86・8%に上った。
もはや政治資金の抜本改革は避けられまい。
岸田氏は「民主主義の危機」を唱えて首相に就いた。
政治生命をかけて改革に取り組むよう求めたい。
まず論じるべきは政治資金パーティーの在り方だ。
企業・団体は政党にしか献金できないが、
パーティー券を購入すれば、派閥や議員に事実上献金できる「抜け道」になっている。
しかも、購入額が20万円以内なら氏名や金額の公表義務はない。
パーティーが政治腐敗の元凶になっているなら即時廃止するか、
少なくとも公開基準の撤廃か引き下げが資金の透明化に必要だ。
政党から議員個人に渡され、使途の公表が不要な「政策活動費」も
以前から不透明な資金と指摘されてきた。
政党から政治家個人への寄付を例外的に認める規正法の条項に基づくもので、
領収書を受け取れない選挙費用や飲食代に使われるともされる。
自民党は2022年、茂木敏充幹事長ら幹部に計14億円余りを支出している。
しかし、安倍派で資金還流を受けた議員側は、
使途公表が不要な政策活動費だと派閥側から説明されたという。
裏金づくりの言い訳に使われるのなら看過できない。
ほかの政治資金同様、使途公開を義務付け、透明化すべきである。
国会議員に毎月100万円が支給される
”調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)”の使途公開も手付かずだ。
日本共産党を除く各党が合わせて320億円近い政党助成金を受け取っているにもかかわらず、
企業・団体献金も受け取っている「二重取り」も問題だ。
規正法は政治資金の収支を国民に明らかにすることを旨とする。
岸田氏は自民党総裁として政治資金の公開に向けた議論を各党に呼びかけるべきである。
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朝日新聞 2023年12月20日付記事
「国民は納得しない、厳罰を」
日大名誉教授(政治学)・岩井奉信 氏
”政治資金規正法”は、資金の流れを見える化して
不正を抑制するのが目的だ。
不記載にすると「裏金で政治を動かしているのではないか」と
国民の疑惑を招く。
政治不信につながり、民主主義にとって重大な問題だ。
収支報告書への記載はイロハのイ。
今回の不記載は
国会議員が組織的に法律を破壊しており、
信じがたいほど悪質だ。
多くの議員に ”公民権停止” などの厳罰が必要だろう。
検察は金額の大小がポイントと言うだろうが、
従前の基準では立件は数名になってしまう。
国民からすれば年間数百万円単位でも少額ではなく、
納得は得られない。
検察も重い責務を負っている。
裏金作りの理由は
「自由に使える現金が欲しい」ということだろうが、
政治資金は民主主義を動かす「公の金」であり、
ルールが守れないなら政治家を辞めた方がいい。
対処療法的な小手先の改革でなく、
会計責任者が有罪になれば議員が自動失職する「連座制」でも導入しない限り、
不正はやまないだろう。
(聞き手:藤枝幸一 氏)
「自民裏金疑惑 政策活動費も公開せよ」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/296842?rct=editorial
自民党派閥の政治資金パーティー裏金疑惑を受け、
岸田文雄内閣の支持率が共同通信世論調査で22・3%と3カ月連続で過去最低を更新し、
不支持率も65・4%と過去最高になった。
裏金疑惑を巡り首相が指導力を
「発揮していない」とする答えが75・0%、
政治資金規正法の厳格化や厳罰化が「必要だ」は86・8%に上った。
もはや政治資金の抜本改革は避けられまい。
岸田氏は「民主主義の危機」を唱えて首相に就いた。
政治生命をかけて改革に取り組むよう求めたい。
まず論じるべきは政治資金パーティーの在り方だ。
企業・団体は政党にしか献金できないが、
パーティー券を購入すれば、派閥や議員に事実上献金できる「抜け道」になっている。
しかも、購入額が20万円以内なら氏名や金額の公表義務はない。
パーティーが政治腐敗の元凶になっているなら即時廃止するか、
少なくとも公開基準の撤廃か引き下げが資金の透明化に必要だ。
政党から議員個人に渡され、使途の公表が不要な「政策活動費」も
以前から不透明な資金と指摘されてきた。
政党から政治家個人への寄付を例外的に認める規正法の条項に基づくもので、
領収書を受け取れない選挙費用や飲食代に使われるともされる。
自民党は2022年、茂木敏充幹事長ら幹部に計14億円余りを支出している。
しかし、安倍派で資金還流を受けた議員側は、
使途公表が不要な政策活動費だと派閥側から説明されたという。
裏金づくりの言い訳に使われるのなら看過できない。
ほかの政治資金同様、使途公開を義務付け、透明化すべきである。
国会議員に毎月100万円が支給される
”調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)”の使途公開も手付かずだ。
日本共産党を除く各党が合わせて320億円近い政党助成金を受け取っているにもかかわらず、
企業・団体献金も受け取っている「二重取り」も問題だ。
規正法は政治資金の収支を国民に明らかにすることを旨とする。
岸田氏は自民党総裁として政治資金の公開に向けた議論を各党に呼びかけるべきである。
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朝日新聞 2023年12月20日付記事
「国民は納得しない、厳罰を」
日大名誉教授(政治学)・岩井奉信 氏
”政治資金規正法”は、資金の流れを見える化して
不正を抑制するのが目的だ。
不記載にすると「裏金で政治を動かしているのではないか」と
国民の疑惑を招く。
政治不信につながり、民主主義にとって重大な問題だ。
収支報告書への記載はイロハのイ。
今回の不記載は
国会議員が組織的に法律を破壊しており、
信じがたいほど悪質だ。
多くの議員に ”公民権停止” などの厳罰が必要だろう。
検察は金額の大小がポイントと言うだろうが、
従前の基準では立件は数名になってしまう。
国民からすれば年間数百万円単位でも少額ではなく、
納得は得られない。
検察も重い責務を負っている。
裏金作りの理由は
「自由に使える現金が欲しい」ということだろうが、
政治資金は民主主義を動かす「公の金」であり、
ルールが守れないなら政治家を辞めた方がいい。
対処療法的な小手先の改革でなく、
会計責任者が有罪になれば議員が自動失職する「連座制」でも導入しない限り、
不正はやまないだろう。
(聞き手:藤枝幸一 氏)