北海道新聞 2023年12月12日付記事
「<「鉄路の行方」を考える>11 乗用車優遇 公共交通にもっと予算を」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/951921/
この連載では道内鉄路を巡る問題を取り上げているが、鉄道以外の公共交通が順調なわけではない。
バス会社も経営は苦しく、運転手不足から、
廃止した鉄路の代替バス運行も難しい状況だ。
まさに道内の公共交通そのものが危機にひんしている。
公共交通を追い詰めているのは乗用車利用の増加だ。
国土交通省が公表する最新の全国幹線旅客純流動調査(2015年度)によると、
札幌から釧路への移動で乗用車を選んだ人の割合(分担率)は67%と、
2005年(48%)から10年間で19ポイント上昇した。
鉄道の分担率は逆に40%から21%へ激減。
幹線バスも4ポイント上昇の6%にとどまり、多くは鉄道から乗用車へ流れた。
札幌から函館への移動でも、鉄道の分担率が30%から20%へ低下する一方、
乗用車は64%から73%へ上昇した。
いずれも高速道路や高規格道路が延伸されて便利になる一方、
JR北海道が特急の減速、減便を進めたことが要因だ。
乗用車の分担率が上昇する傾向は、全国の地方都市圏で見られる。
コロナ禍で公共交通離れが進み、現在はさらに上昇している可能性が高い。
人口が減少していく中で道路整備にばかり税金を投じていれば、
乗用車の分担率が上昇するのは当たり前だ。
その分だけ公共交通の利用者は減り、
それを理由に路線の減便や廃止を進めれば、
地方で暮らす高校生や高齢者の足が奪われる。
日本は公共交通を犠牲にしながら乗用車利用を優遇する政策を、
漫然と続けているとも言える。
逆に公共交通の分担率が上がれば自動車事故は減少し、
都市部の渋滞も緩和され、
徒歩外出が増えて健康増進と医療費抑制につながる。
高騰する燃料コストを下げながら、旅行者を増やし、
景気を刺激することもできる。
国は公共交通機関にもっと予算を費やして良いと思う。
国の脱炭素方針にも有効だ。
国交省がコロナ禍前に実施した2019年の調査によると、
人1人が乗用車で移動する際の二酸化炭素排出量は鉄道の7・6倍、
バスの2・3倍、
航空機よりも3割多い。
地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)は地方自治体に「公共交通機関の利用者の利便の増進」を求めているが、
国全体で取り組んだ方が効果的だろう。
もちろん本州と比べ道路網整備が大きく遅れている道内では高速道路の建設も必要で、
「鉄路を残すなら、道路を諦めろ」という”二者択一論”は道内実情を無視した乱暴な意見だ。
そこまで極端な政策転換をしなくても、
圧倒的に多い乗用車利用を少し公共交通へ誘導するだけで状況は大きく変わる。
例えばJR北海道が経営自立するために不足している金額は年間約200億円、
道民1人当たり4千円弱。
北大大学院の岸邦宏教授は
「道民の多くが出張や旅行で遠出する際に年1回、鉄道利用を増やすだけでも、
JR北海道の経営はかなり改善するはずだ」
と指摘する。
参考になるのは「乗用車の分担率を下げる」という目標を掲げる欧州各国の事例だ。
ドイツでは全国の公共交通機関を49ユーロ(約8千円)で
1カ月間乗り放題にする格安乗車券が販売され、
ルクセンブルクは2020年にすべての公共交通を無料化した。
英国は地方鉄道路線を復活、拡大させる政策を打ち出し、
鉄道インフラの整備を進めている。
欧州連合(EU)欧州委員会はこうした政策の指針となる
「持続可能な都市モビリティ計画」(通称SUMP)を2013年に策定。
マレーシアや中国、南米諸国を含む1千以上の都市が採用し、
これに沿った都市計画を進めている。
欧州の交通政策に詳しい関西大学の宇都宮浄人教授は
「欧州の公共交通は温暖化や渋滞、交通事故といった社会的な負荷を減らして
『持続可能な社会』をつくる手段に位置づけられている」 と解説する。
社会全体をより良くできるから、
各国とも将来への投資として公共交通に予算を振り向けている。
交通事業の赤字減らしに血眼になり、
値上げや減便で公共交通サービスを低下させている日本は、
世界の中で異質な存在だ。
誰か(例えば乗用車利用者)が得をすれば、別の誰か(公共交通利用者)が損をする
「ゼロサムゲーム」に陥りがちな人口減少社会だからこそ、
バランスを意識した政策が必要だ。
国や道は手始めに、
「公共交通機関の分担率を上げる」という目標を率先して掲げてはどうだろうか。
(文章執筆:特別編集委員 鈴木徹 氏)
----------------------------
⇒自分は正直言って
「もう道路はいらないから、鉄道を今の時代にふさわしくしっかり整備・高速化して、公共交通を増やせ!」
と声を大にして言いたい。
思えば日本という国は、トヨタ自動車を筆頭にクルマ製造業を異常に厚遇してきた。
クルマが高度経済成長期と共に交通網を発展させてきたのは確かだ。
しかし、時代は変わった。
少子高齢化、モータリゼーションの過剰な発達が
クルマがないと生きて行けないくらい図らずも地方の公共交通を衰退させた。
いや、なにも地方だけの問題じゃない。
自分の住む東京だってマイカーが渋滞を生み、
路線バスの定時性を奪って結果減便や廃止に追い込まれ、
足を奪われた人がマイカーを買ってさらに渋滞が激しくなる、
そのスパイラルに陥ってしまったのだ。
今、ダイハツ工業の不正問題がテレビをにぎわし始めた。
今こそマイカー一辺倒から抜け出し、
公共交通維持のために交通税を設けてでも
人や会社を育てなければならないのではないか?
札幌~釧路間は、内地で例えれば東京~名古屋間に相当する。
この区間を一人でクルマを運転するのと、
鉄道で移動するのとどちらを選ぶ?
自分は断然鉄道を選ぶ。
嫌だもん、疲れるのは。
疲れるとそれだけ事故を起こす確率も上がるし。
何より高速代は高いしガソリンも消耗する。
さらに言うなら、寝台特急は時間を節約する良い乗り物だ。
夜に出発して、乗り過ごしを気にせず朝に目的地に着く。
新幹線に淘汰されて、現状はサンライズエキスプレス(東京~出雲市・高松)1本だけ。
あーもったいない。
もし上野~札幌間に次世代サンライズエキスプレスが(週末限定で)復活したら、
おそらく巡航速度はブルートレインよりも速く通勤電車並の90~100km / hも可能だろう。
仮に上野を金曜夜20:00に出発すれば仙台に24:00頃の到着で、
仙台・函館の両駅で駅弁や飲み物購入などで5~10分停車をはさみ、
札幌終着が土曜朝9:30頃なら1日が有意義に動ける。
「サンライズ出雲・瀬戸」では採算&運行時間上むずかしいカフェテリアサービスも
上野~札幌間で「サフィール踊り子」的快適さと「カフェ・ド・クリエ」並みリーズナブルさなら
決して無理ではないかもしれない。
今は旅行サイトでのビジネスホテルの予約価格も
週末の直前予約だとホテルだけでも「1泊2~3.5万円」なんて平気でぼったくる。
だったら狭いシングル&食事サービスなしの1泊よりも
同価格で寝台特急に乗るほうが楽しくないか?
上記記事の関連映像もあります。
乗用車優遇政策の転換を!公共交通は存亡の危機に•••北海道新聞が訴えかけた大きな問い!
北海道新聞の鉄路の行方を考えるシリーズ!
その訴えが多くの人を動かしています。
まさに公共交通は存亡の危機を迎えている道内。
今までの乗用車優遇政策を見直せ!
と忖度なく切り込むジャーナリズム精神に脱帽しました。
自動車は利権の固まり。
そこに切り込んだ北海道新聞は見事な記事を書き上げました。
是非ご覧ください!
映像提供:【北海道】乗り物大好きチャンネル 様
2023年12月22日付訪問者数:217名様
お付き合いいただき、ありがとうございました。
「<「鉄路の行方」を考える>11 乗用車優遇 公共交通にもっと予算を」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/951921/
この連載では道内鉄路を巡る問題を取り上げているが、鉄道以外の公共交通が順調なわけではない。
バス会社も経営は苦しく、運転手不足から、
廃止した鉄路の代替バス運行も難しい状況だ。
まさに道内の公共交通そのものが危機にひんしている。
公共交通を追い詰めているのは乗用車利用の増加だ。
国土交通省が公表する最新の全国幹線旅客純流動調査(2015年度)によると、
札幌から釧路への移動で乗用車を選んだ人の割合(分担率)は67%と、
2005年(48%)から10年間で19ポイント上昇した。
鉄道の分担率は逆に40%から21%へ激減。
幹線バスも4ポイント上昇の6%にとどまり、多くは鉄道から乗用車へ流れた。
札幌から函館への移動でも、鉄道の分担率が30%から20%へ低下する一方、
乗用車は64%から73%へ上昇した。
いずれも高速道路や高規格道路が延伸されて便利になる一方、
JR北海道が特急の減速、減便を進めたことが要因だ。
乗用車の分担率が上昇する傾向は、全国の地方都市圏で見られる。
コロナ禍で公共交通離れが進み、現在はさらに上昇している可能性が高い。
人口が減少していく中で道路整備にばかり税金を投じていれば、
乗用車の分担率が上昇するのは当たり前だ。
その分だけ公共交通の利用者は減り、
それを理由に路線の減便や廃止を進めれば、
地方で暮らす高校生や高齢者の足が奪われる。
日本は公共交通を犠牲にしながら乗用車利用を優遇する政策を、
漫然と続けているとも言える。
逆に公共交通の分担率が上がれば自動車事故は減少し、
都市部の渋滞も緩和され、
徒歩外出が増えて健康増進と医療費抑制につながる。
高騰する燃料コストを下げながら、旅行者を増やし、
景気を刺激することもできる。
国は公共交通機関にもっと予算を費やして良いと思う。
国の脱炭素方針にも有効だ。
国交省がコロナ禍前に実施した2019年の調査によると、
人1人が乗用車で移動する際の二酸化炭素排出量は鉄道の7・6倍、
バスの2・3倍、
航空機よりも3割多い。
地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)は地方自治体に「公共交通機関の利用者の利便の増進」を求めているが、
国全体で取り組んだ方が効果的だろう。
もちろん本州と比べ道路網整備が大きく遅れている道内では高速道路の建設も必要で、
「鉄路を残すなら、道路を諦めろ」という”二者択一論”は道内実情を無視した乱暴な意見だ。
そこまで極端な政策転換をしなくても、
圧倒的に多い乗用車利用を少し公共交通へ誘導するだけで状況は大きく変わる。
例えばJR北海道が経営自立するために不足している金額は年間約200億円、
道民1人当たり4千円弱。
北大大学院の岸邦宏教授は
「道民の多くが出張や旅行で遠出する際に年1回、鉄道利用を増やすだけでも、
JR北海道の経営はかなり改善するはずだ」
と指摘する。
参考になるのは「乗用車の分担率を下げる」という目標を掲げる欧州各国の事例だ。
ドイツでは全国の公共交通機関を49ユーロ(約8千円)で
1カ月間乗り放題にする格安乗車券が販売され、
ルクセンブルクは2020年にすべての公共交通を無料化した。
英国は地方鉄道路線を復活、拡大させる政策を打ち出し、
鉄道インフラの整備を進めている。
欧州連合(EU)欧州委員会はこうした政策の指針となる
「持続可能な都市モビリティ計画」(通称SUMP)を2013年に策定。
マレーシアや中国、南米諸国を含む1千以上の都市が採用し、
これに沿った都市計画を進めている。
欧州の交通政策に詳しい関西大学の宇都宮浄人教授は
「欧州の公共交通は温暖化や渋滞、交通事故といった社会的な負荷を減らして
『持続可能な社会』をつくる手段に位置づけられている」 と解説する。
社会全体をより良くできるから、
各国とも将来への投資として公共交通に予算を振り向けている。
交通事業の赤字減らしに血眼になり、
値上げや減便で公共交通サービスを低下させている日本は、
世界の中で異質な存在だ。
誰か(例えば乗用車利用者)が得をすれば、別の誰か(公共交通利用者)が損をする
「ゼロサムゲーム」に陥りがちな人口減少社会だからこそ、
バランスを意識した政策が必要だ。
国や道は手始めに、
「公共交通機関の分担率を上げる」という目標を率先して掲げてはどうだろうか。
(文章執筆:特別編集委員 鈴木徹 氏)
----------------------------
⇒自分は正直言って
「もう道路はいらないから、鉄道を今の時代にふさわしくしっかり整備・高速化して、公共交通を増やせ!」
と声を大にして言いたい。
思えば日本という国は、トヨタ自動車を筆頭にクルマ製造業を異常に厚遇してきた。
クルマが高度経済成長期と共に交通網を発展させてきたのは確かだ。
しかし、時代は変わった。
少子高齢化、モータリゼーションの過剰な発達が
クルマがないと生きて行けないくらい図らずも地方の公共交通を衰退させた。
いや、なにも地方だけの問題じゃない。
自分の住む東京だってマイカーが渋滞を生み、
路線バスの定時性を奪って結果減便や廃止に追い込まれ、
足を奪われた人がマイカーを買ってさらに渋滞が激しくなる、
そのスパイラルに陥ってしまったのだ。
今、ダイハツ工業の不正問題がテレビをにぎわし始めた。
今こそマイカー一辺倒から抜け出し、
公共交通維持のために交通税を設けてでも
人や会社を育てなければならないのではないか?
札幌~釧路間は、内地で例えれば東京~名古屋間に相当する。
この区間を一人でクルマを運転するのと、
鉄道で移動するのとどちらを選ぶ?
自分は断然鉄道を選ぶ。
嫌だもん、疲れるのは。
疲れるとそれだけ事故を起こす確率も上がるし。
何より高速代は高いしガソリンも消耗する。
さらに言うなら、寝台特急は時間を節約する良い乗り物だ。
夜に出発して、乗り過ごしを気にせず朝に目的地に着く。
新幹線に淘汰されて、現状はサンライズエキスプレス(東京~出雲市・高松)1本だけ。
あーもったいない。
もし上野~札幌間に次世代サンライズエキスプレスが(週末限定で)復活したら、
おそらく巡航速度はブルートレインよりも速く通勤電車並の90~100km / hも可能だろう。
仮に上野を金曜夜20:00に出発すれば仙台に24:00頃の到着で、
仙台・函館の両駅で駅弁や飲み物購入などで5~10分停車をはさみ、
札幌終着が土曜朝9:30頃なら1日が有意義に動ける。
「サンライズ出雲・瀬戸」では採算&運行時間上むずかしいカフェテリアサービスも
上野~札幌間で「サフィール踊り子」的快適さと「カフェ・ド・クリエ」並みリーズナブルさなら
決して無理ではないかもしれない。
今は旅行サイトでのビジネスホテルの予約価格も
週末の直前予約だとホテルだけでも「1泊2~3.5万円」なんて平気でぼったくる。
だったら狭いシングル&食事サービスなしの1泊よりも
同価格で寝台特急に乗るほうが楽しくないか?
上記記事の関連映像もあります。
乗用車優遇政策の転換を!公共交通は存亡の危機に•••北海道新聞が訴えかけた大きな問い!
北海道新聞の鉄路の行方を考えるシリーズ!
その訴えが多くの人を動かしています。
まさに公共交通は存亡の危機を迎えている道内。
今までの乗用車優遇政策を見直せ!
と忖度なく切り込むジャーナリズム精神に脱帽しました。
自動車は利権の固まり。
そこに切り込んだ北海道新聞は見事な記事を書き上げました。
是非ご覧ください!
映像提供:【北海道】乗り物大好きチャンネル 様
2023年12月22日付訪問者数:217名様
お付き合いいただき、ありがとうございました。