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自衛隊補給品、北海道「札幌―北見」で鉄道輸送 その一方「攻めすぎた廃線」でネットワーク分断の大問題

2024-11-13 | 鉄道
Yahoo ! Japan ニュース 2024年11月12日付記事
自衛隊補給品、北海道「札幌―北見」で鉄道輸送 その一方「攻めすぎた廃線」でネットワーク分断の大問題
 /鉄道乗蔵 氏(鉄道ライター)
 https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/da0da3575127db2697c5b935eb2fb429347ed1f7


2024年11月8日、陸上自衛隊は、「令和6年度陸上自衛隊演習」において、
北海道のJR石北本線を含む「札幌~北見間」で鉄道による補給品の輸送を実施し、
その有用性を確認したと発表した。
陸上自衛隊公式X(旧ツイッター)では、補給品を鉄道コンテナに積み下ろしする様子や、
石北本線の遠軽駅付近を走行する貨物列車の画像が公開されている。
鉄道コンテナに積み込む補給品の段ボール箱には
「戦闘糧食Ⅱ形、タンドリーチキン」
「戦闘糧食Ⅱ形、さけちゃんちゃん焼き」などと書かれていることも確認できる。

陸上自衛隊 公式Twitter
https://twitter.com/JGSDF_pr

◆防衛省は鉄道貨物活用の方針◆

防衛省では2022年5月19日に国土交通省で開かれた「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」において、
「自衛隊の輸送力の向上のため、鉄道輸送のさらなる活用」を求めている。
これに対してJR貨物側も2024年5月13日に
「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」中間とりまとめに対する達成状況を発表。
自衛隊輸送については、「新たな社会的要請への対応」が課題とし、
「2024年度に実施予定の大規模演習における貨物鉄道利用に向けた」打ち合わせを行うとされていた。

2024年度はこのほか鉄道の日である10月14日に
96式装輪装甲車が低床貨車コキ73形で仙台貨物ターミナル駅から東京貨物ターミナル駅まで輸送された様子が各地で目撃され、
Xでは一時トレンド入りを果たすなど大きな話題となったことは記事
(鉄道の日に自衛隊「装甲車」輸送の貨物列車が走る! 低床貨車「コキ73形」の活躍でXではトレンド入り)でも詳しく触れた。
防衛省の鉄道輸送活用の方針に加え、石破茂氏が内閣総理大臣に就任したことも重なり、
今後は自衛隊装備品などの鉄道輸送はさらに拡大するものと思われる。
石破氏は首相就任前には各紙インタビューで自衛隊戦車の鉄道輸送の可能性について語るなど、
自衛隊の鉄道利用については積極的な姿勢を見せていた。


◆北海道では「攻めすぎた廃線」で鉄道貨物の脆弱性が露呈◆

しかし、北海道では相次ぐ鉄道路線の廃止により、災害時の貨物輸送について脆弱性を露呈している。
2024年8月31日に発生した豪雨災害では、札幌と十勝・釧路方面を結ぶJR石勝線が4日間にわたって不通となったが、
この間、同区間を結ぶ特急列車の代行バス輸送が実施できなかったばかりか、
十勝・釧路方面から発送される農産物を運ぶ貨物列車のトラック代行輸送がほとんどできなかった。
背景には今年度より開始されたドライバーの残業規制に加え、
根本的なドライバー不足が背景にある。

特急列車や貨物列車の迂回運行ができる可能性のあった根室本線の「富良野~新得間」を
2024年3月31日限りで事実上北海道庁主導により廃止してしまったことで、
北海道の鉄路がどこか1か所でも寸断されれば、物流そのものが麻痺しかねない状況に陥っているのが現状だ。

◆必要な路線については再整備も必要◆

今回、自衛隊の補給品を輸送した「札幌~北見間」についても、
2023年8月に発生した豪雨被害で3週間近くにわたって不通となり、
この時は北見産のタマネギ輸送の貨物列車が運休を余儀なくされたが、
この時はトラック代行輸送でどうにか乗り切ることができた。

しかし、2024年度を迎え、鉄道貨物のトラック代行輸送は事実上困難な事態となっている。
「札幌~北見間」については、2004年まで国鉄池北線を第三セクター鉄道に転換した
”北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線”が「池田~北見間」を結んでおり、
この路線は石北本線の災害不通時に迂回ルートとなり得る路線であったが、
こちらも北海道庁の主導により廃止されている。

現北海道知事の鈴木直道氏が、夕張市長時代に石勝線夕張支線の「攻めの廃線」を行って以降、
北海道内の鉄道路線の廃止が加速し、
鉄道ネットワークの分断が進んでいる。
こうした「攻めすぎた廃線」により北海道の物流は、
災害に対して脆弱になった鉄道貨物と
深刻化するドライバー不足により”危機的”な状況となっているといっても過言ではない。

ロシアと国境を接する北海道の国防を考える上では、
災害時の迂回輸送の可能性も考慮して必要な路線については
北海道の鉄道ネットワークの再整備を積極的に行っていく必要があるのではないだろうか。

(了)

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