北海道新聞 2019年7月23日付社説
「首相会見 低姿勢こそ求められる」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/327765?rct=c_editorial
安倍晋三首相はきのう、自民党総裁として記者会見し、
与党で改選過半数の参院選結果を受けた政権運営への意欲を強調した。
力を込めたのは、選挙戦で「議論するか否か」を訴えた憲法改定だった。
「『少なくとも議論を行うべきだ』、これが国民の審判だ」との認識を示した。
改憲案の取りまとめに向け「強いリーダーシップを発揮していく決意だ」とも述べた。
だが、自公に日本維新の会を合わせた改憲勢力は3分の2を割った。
共同通信社の出口調査では、安倍首相の下での改憲に反対47.5%、賛成40.8%だった。
選挙結果を、改憲を求める国民の声だとみなすことはできない。
各地の結果からは政権与党として反省すべき材料も見えてくる。
改憲を声高に叫ぶより、まずは国民の多様な声をくみ取り、政権運営の糧とする。
勝ったからこその低姿勢が求められる。
野党が統一候補を立て、選挙戦の勝敗を分けるとされた32の1人区は自民党が22勝10敗と、
3年前から1議席上積みした。
ただ、注目すべきは自民が負けた沖縄、秋田、新潟選挙区だ。
沖縄では辺野古新基地建設に県民がまたもノーを突きつけた。
秋田は野党候補が防衛省の調査ミスがあったイージス・アショア配備計画反対を掲げ当選した。
新潟で落選した塚田一郎氏は、道路建設を巡る「忖度(そんたく)」発言で国土交通副大臣を辞任した。
野党候補は「忖度政治からの脱却」を訴え、攻撃材料とした。
首相は重要政策や政権の体質が争点になった選挙区の民意に、しっかりと向き合うべきだろう。
森友・加計(かけ)問題を追及されていた時に首相が口先で繰り返していた「謙虚で丁寧な政権運営」は、
言葉すら聞かれなくなった。
1強のおごりがさらに増長しないかが心配だ。それは、改憲についての言動にも透けて見える。
選挙前から、国民民主党内には前向きな議員がいるとして期待感を示し続けている発言がそれだ。
きのうも言及した。
立憲民主党との分断を図り、1強になびかせようとの揺さぶり戦術だろう。
そんな政略的とも言うべき手法で目指すような改憲に、果たして国民の理解が広がるだろうか。
参院選の全国投票率は選挙区で48.80%と、過去2番目の低さとなった。
首相は、政権への信任が決して国民全体の分厚い支持によってなされたものではないと、
肝に銘じておく必要がある。
------------------------------------------------------------------------------
もう少し言うぞ。
北海道新聞 2019年7月22日付社説
「参院選改憲勢力後退 暮らしの不安解消が第一」より抜粋
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/327456?rct=c_editorial
■問題多い首相の狭量
狭量とも言うべき首相の政治姿勢にも苦言を呈しておきたい。
首相は街頭で「あの民主党政権の時代に逆戻りするわけにはいかない」と野党批判を繰り返し、
立憲民主党の枝野幸男代表について「民主党の枝野さん」と呼んだ。
民主党政権の負の印象をすり込むのが有効な戦術とみたのだろう。
公党をおとしめるような攻撃は宰相としての品格が問われる。
自民党は政権に批判的な人たちのやじを警戒し、首相の遊説日程を事前に公表しなかった。
指導者に必要なのは異なる意見に耳を傾けつつ、自身の考えに理解を求める対話の姿勢だ。
にもかかわらず、街頭で語りかけるのは支持者だけで反対者は遠ざける。
こうした態度の先に待ち受けるのは社会の分断と亀裂ではないか。
そう憂慮せざるを得ない。
いちばん気に食わないのは、首相のその奢り高ぶった態度だ。
初対面の人への面接やプレゼンで他人をおとしめる人間など、誰が信じられる?
謙虚さのない経営者・為政者の下にいる人間は不幸だ。
「首相会見 低姿勢こそ求められる」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/327765?rct=c_editorial
安倍晋三首相はきのう、自民党総裁として記者会見し、
与党で改選過半数の参院選結果を受けた政権運営への意欲を強調した。
力を込めたのは、選挙戦で「議論するか否か」を訴えた憲法改定だった。
「『少なくとも議論を行うべきだ』、これが国民の審判だ」との認識を示した。
改憲案の取りまとめに向け「強いリーダーシップを発揮していく決意だ」とも述べた。
だが、自公に日本維新の会を合わせた改憲勢力は3分の2を割った。
共同通信社の出口調査では、安倍首相の下での改憲に反対47.5%、賛成40.8%だった。
選挙結果を、改憲を求める国民の声だとみなすことはできない。
各地の結果からは政権与党として反省すべき材料も見えてくる。
改憲を声高に叫ぶより、まずは国民の多様な声をくみ取り、政権運営の糧とする。
勝ったからこその低姿勢が求められる。
野党が統一候補を立て、選挙戦の勝敗を分けるとされた32の1人区は自民党が22勝10敗と、
3年前から1議席上積みした。
ただ、注目すべきは自民が負けた沖縄、秋田、新潟選挙区だ。
沖縄では辺野古新基地建設に県民がまたもノーを突きつけた。
秋田は野党候補が防衛省の調査ミスがあったイージス・アショア配備計画反対を掲げ当選した。
新潟で落選した塚田一郎氏は、道路建設を巡る「忖度(そんたく)」発言で国土交通副大臣を辞任した。
野党候補は「忖度政治からの脱却」を訴え、攻撃材料とした。
首相は重要政策や政権の体質が争点になった選挙区の民意に、しっかりと向き合うべきだろう。
森友・加計(かけ)問題を追及されていた時に首相が口先で繰り返していた「謙虚で丁寧な政権運営」は、
言葉すら聞かれなくなった。
1強のおごりがさらに増長しないかが心配だ。それは、改憲についての言動にも透けて見える。
選挙前から、国民民主党内には前向きな議員がいるとして期待感を示し続けている発言がそれだ。
きのうも言及した。
立憲民主党との分断を図り、1強になびかせようとの揺さぶり戦術だろう。
そんな政略的とも言うべき手法で目指すような改憲に、果たして国民の理解が広がるだろうか。
参院選の全国投票率は選挙区で48.80%と、過去2番目の低さとなった。
首相は、政権への信任が決して国民全体の分厚い支持によってなされたものではないと、
肝に銘じておく必要がある。
------------------------------------------------------------------------------
もう少し言うぞ。
北海道新聞 2019年7月22日付社説
「参院選改憲勢力後退 暮らしの不安解消が第一」より抜粋
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/327456?rct=c_editorial
■問題多い首相の狭量
狭量とも言うべき首相の政治姿勢にも苦言を呈しておきたい。
首相は街頭で「あの民主党政権の時代に逆戻りするわけにはいかない」と野党批判を繰り返し、
立憲民主党の枝野幸男代表について「民主党の枝野さん」と呼んだ。
民主党政権の負の印象をすり込むのが有効な戦術とみたのだろう。
公党をおとしめるような攻撃は宰相としての品格が問われる。
自民党は政権に批判的な人たちのやじを警戒し、首相の遊説日程を事前に公表しなかった。
指導者に必要なのは異なる意見に耳を傾けつつ、自身の考えに理解を求める対話の姿勢だ。
にもかかわらず、街頭で語りかけるのは支持者だけで反対者は遠ざける。
こうした態度の先に待ち受けるのは社会の分断と亀裂ではないか。
そう憂慮せざるを得ない。
いちばん気に食わないのは、首相のその奢り高ぶった態度だ。
初対面の人への面接やプレゼンで他人をおとしめる人間など、誰が信じられる?
謙虚さのない経営者・為政者の下にいる人間は不幸だ。