父ちゃん行こう
妹が入院している病院への途上で
酔いつぶれてしまったのを
弟と何度も何度も起こそうとするが
小さな力ではどうしようもなく
しばらく呆然と寝顔を見ていたが
あとのことは覚えていない
これぐらいのことはまだ良いほうで
酔狂の日々が延々と続いた
親父への嫌悪感を抱いて
思春期を迎えたが
どうしても知りたくなったので
ずっと前からこうだったのか
親戚の一人に尋ねた
いや そんなことはない
あれは子供が死んでからじゃ
毎日魚をとったり山で遊んだりが
好きな陽気な人間であり
酒に溺れることはなかった
そういえば
暴力をほぼ受けなかったのは
不幸中の幸いである
傷ついた心は
傷つく心に身をまかせられるように
高尚な存在の
命令や教えではなく
親父を理解したことで
わたしの心は溶け始めた