再編中
「蔵が働かねば、こん家は死んだと同じだぁ」
「お父っさまがやる気がねえのなら、おらが蔵を開く」
大地主で酒蔵を営む旧家に産まれ大切に育てられる烈。
しかし視力が徐々に奪われてゆく恐怖が時に彼女を打ちのめす。
それでも叔母たちの大きな愛に支えられ光明を見出して行く。
全盲となった烈の一途な思いが旧家の体面や慣習の壁をも貫く。
私はこの場面の鮮烈さに心を射られた。これをどう表現すれば良いか...
烈に限らず、こうした健気な女性への感動に、性の対象としての意味合いはなく、その心意気にある種の憧れがあるのは確かである。
日本は今でも男社会を気取っている。
しかしこれまでもそうだったように・・いや、それ以上に
『この冬』をきりぬける真の立役者は烈のような女性に違いない。
冬の厳しさを知っていて、生きることの意味や命の輝きを一途に求める姿には、やがて天も味方するであろう。
こうして...春はかならず訪れる!
*鬼龍院花子の生涯など、もっぱら戦前の日本を舞台に、宿命に翻弄されながらも力強く生き女性たちを宮尾登美子はえがいてきた。苦難にまけずに自分の道をあゆむ女性たちへの共感、日本の伝統文化への理解、人々の絆などが作品の通奏低音としてながれている。