「私はあの男(親父)に騙された!」
怨み節を卒業したはずの母親が今でも折につけ語る。
親父は東京の美術学校に通っていた経歴でベレー帽を被り、
画家を気取っていたと言う。
母親と言えば、親の封建的な考え方への反動から
戦前からダンス教室を開いたり、劇団を立ち上げたり
していたようだ。
親父はその劇団の楽屋に花や手紙を届けたり、
随分とまめに世間知らずの母親にアプローチしたようだ。
遂に母親も承諾?(真実不明)したが、家柄の違いで母親方からの
猛反対にあい、最後には勘当された。
それでも、二人で小さな夢を抱き戦後のドサクサの中
都会へ駆け落ちのような旅に出た。
しかし、やがて母親は父親の別の顔を見ることになった。
当初のロマンチストとは全くかけ離れた顔である。
そこには凄まじい生活が待っていた。
その親父も自分の宣告通り、太く短くこの世を生き
飛び去った。
外はひんやりとしてコオロギが盛んに鳴いている。
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