もりもりもりあがる曇に歩む
諸説あるが、山頭火の辞世の句と言われている
句の前辺りに、四国の旅への相当な決意のことばがある
「..四国は土地も人も温かい、私はこの一年をその温かさに賭ける」
名誉を捨て、家族を捨て、酒に命を削られ、放蕩し放題、体裁を重んじる者たちから蔑まされた人生
しかし、遂に山頭火自身の姿は曇の中にあり、すでに冥界か来世に足を踏み入れたかのようである
人は己の限界を無意識で感じる時、自然と同化する、或いは同化したい境地に至るのかもしれない
それでも彼は人との交流を絶やした訳ではない
むしろ、湧き上がる曇の向こうに、四国で出会った懐かしい笑顔が見えていたのだろう
今ではその気持ちが良くわかる
人を慕い、それを感じられたこと
最後は野垂れ死のようなものだったが、彼は幸せな人間だったのだ
現代においても、それが分かる人には分かるのだろう
私は掛け軸や絵をほんの少し持っていて、自然を描いた作品は好きだが、自然だけの構図より、少し人の気配がする作品に魅力を感じている
いよいよ夏本番
もう一雨来そうだが
昔のような夕立は少なくなった
夕方のあと
泥が濡れたような匂いも
あまりしなくなったのは
コンクリートやアスファルトの
せいだけではないような気がする