重要なミネラルの一種である鉄分。不足すると貧血の原因になることがよく知られ、特に幼児や妊婦、高齢者では要注意といわれる。だが、逆に過剰でも胃腸障害などの恐れがあり、バランスが大事だ。安易に自己判断してサプリメントなどで補給すると過剰摂取の可能性があると専門家は指摘する。
鉄分は赤血球を構成するヘモグロビンの材料で、体中に酸素を運ぶのに欠かせない。また筋肉や体内の様々な酵素にも必要だ。このため鉄分が不足すると様々な影響が出る。赤血球やヘモグロビンが減り、鉄欠乏性貧血になる恐れがある。倦怠(けんたい)感やツメの異常などにつながる場合がある。運動機能や免疫の働きの低下、イライラや集中力低下などの可能性もあるとされる。
■男性は糖
体内で鉄分は脾臓(ひぞう)や肝臓、骨髄などに貯蔵されている。鉄分が必要になると貯蔵分から補給される。このため鉄分が減り始めてすぐではなく、貯蔵が尽きてから貧血になる。
血液中のヘモグロビン量を調べても貯蔵量は分からないが、血液中のフェリチンという鉄分とたんぱく質からなる物質の濃度が貯蔵量の指標になる。フェリチンは男女差が大きく、一般に女性は男性よりも少ない。女性だけでみると閉経前が少なく、閉経後に増加する。フェリチンが通常より少ない人は潜在的な貧血の可能性がある。
うつ状態との関係も指摘されている。国立国際医療研究センターの溝上哲也・臨床研究センター疫学予防研究部部長らの研究によると、男性はフェリチン濃度が低いと、抑うつ度合いが高い傾向がみられた。フェリチン濃度で4グループに分けて比較、最も少ないグループの抑うつ度合いは最も多いグループの2.88倍だった。女性は傾向がはっきり出なかった。
逆に、鉄分が多すぎると便秘や胃腸障害などを起こすことがある。
加えて、国立がん研究センターなどが今年6月に発表した調査結果では、牛や豚の肉を多く食べる男性は糖尿病の発症リスクが高いことが分かった。摂取量で4グループに分けたところ、最も多いグループは最も少ないグループよりリスクが約4割高かった。女性は関連がみられなかった。原因の一つとして赤身肉に豊富な鉄分が考えられた。
また溝上部長らはフェリチンと、値が高いほど糖尿病になりやすい「インスリン抵抗性」の関係を調べた結果を、今春発表した。20~60代の男女約500人を対象に、フェリチンで3グループに分けて比較、男性は多いグループほどインスリン抵抗性が高かった。これも女性では差がみられなかった。
遺伝子に損傷を与える酸化ストレスとも関係がみられる。別の研究で「フェリチンが多いほど酸化ストレスが多いという、きれいな右肩上がりの傾向になった」と溝上部長は話す。鉄分は不足でも過剰でも様々な悪影響の可能性があり「バランスが難しい栄養素の一つだ」と指摘する。
■基本は食事で取る
国立健康・栄養研究所の梅垣敬三・情報センター長は「不足している人が鉄分を摂取することで有益な効果があるのは明確」としながらも、過剰摂取への注意も促す。通常の食事だけならほとんど心配ないが、治療用の鉄分の服用で過剰になる場合がある。
特に小児や乳児が医療関係者の助言を受けずに治療用鉄分やサプリメントから摂取すると、急性鉄中毒になる可能性があるという。これは重度の臓器障害や死につながる恐れがある病気だ。大人がのんでいるものを誤って子供がのんでしまう例があるという。
また「消費者が自己判断して鉄分を治療目的で摂取すると、過剰になる可能性がある」と梅垣センター長は指摘する。例えば自分は貧血なので鉄分不足と判断し、病院に行かないまま摂取を始めるケースだ。貧血の原因は摂取不足とは限らず、潰瘍などからの出血の場合もある。自己判断では、おおもとの病気の受診・治療の機会を逃す恐れがある点でも問題だ。
「基本は食事から取ること」(梅垣センター長)。食べ物の中の鉄分は肉などに含まれるヘム鉄と植物性食品に含まれる非ヘム鉄があり、ヘム鉄の方が吸収率が2~3倍高い。またビタミンCは鉄分の吸収を促し、お茶に含まれるタンニンなどは逆に阻害する。
細かく考えると難しいが、いろいろな食材から取ることが大切という。医師や薬剤師、管理栄養士など健康医療関係の専門職から鉄分不足といわれたら、助言にしたがい食事を改善したり、サプリメントを摂取したりするとよいだろう。
■おすすめ本
鉄分は赤血球を構成するヘモグロビンの材料で、体中に酸素を運ぶのに欠かせない。また筋肉や体内の様々な酵素にも必要だ。このため鉄分が不足すると様々な影響が出る。赤血球やヘモグロビンが減り、鉄欠乏性貧血になる恐れがある。倦怠(けんたい)感やツメの異常などにつながる場合がある。運動機能や免疫の働きの低下、イライラや集中力低下などの可能性もあるとされる。
■男性は糖
体内で鉄分は脾臓(ひぞう)や肝臓、骨髄などに貯蔵されている。鉄分が必要になると貯蔵分から補給される。このため鉄分が減り始めてすぐではなく、貯蔵が尽きてから貧血になる。
血液中のヘモグロビン量を調べても貯蔵量は分からないが、血液中のフェリチンという鉄分とたんぱく質からなる物質の濃度が貯蔵量の指標になる。フェリチンは男女差が大きく、一般に女性は男性よりも少ない。女性だけでみると閉経前が少なく、閉経後に増加する。フェリチンが通常より少ない人は潜在的な貧血の可能性がある。
うつ状態との関係も指摘されている。国立国際医療研究センターの溝上哲也・臨床研究センター疫学予防研究部部長らの研究によると、男性はフェリチン濃度が低いと、抑うつ度合いが高い傾向がみられた。フェリチン濃度で4グループに分けて比較、最も少ないグループの抑うつ度合いは最も多いグループの2.88倍だった。女性は傾向がはっきり出なかった。
逆に、鉄分が多すぎると便秘や胃腸障害などを起こすことがある。
加えて、国立がん研究センターなどが今年6月に発表した調査結果では、牛や豚の肉を多く食べる男性は糖尿病の発症リスクが高いことが分かった。摂取量で4グループに分けたところ、最も多いグループは最も少ないグループよりリスクが約4割高かった。女性は関連がみられなかった。原因の一つとして赤身肉に豊富な鉄分が考えられた。
また溝上部長らはフェリチンと、値が高いほど糖尿病になりやすい「インスリン抵抗性」の関係を調べた結果を、今春発表した。20~60代の男女約500人を対象に、フェリチンで3グループに分けて比較、男性は多いグループほどインスリン抵抗性が高かった。これも女性では差がみられなかった。
遺伝子に損傷を与える酸化ストレスとも関係がみられる。別の研究で「フェリチンが多いほど酸化ストレスが多いという、きれいな右肩上がりの傾向になった」と溝上部長は話す。鉄分は不足でも過剰でも様々な悪影響の可能性があり「バランスが難しい栄養素の一つだ」と指摘する。
■基本は食事で取る
国立健康・栄養研究所の梅垣敬三・情報センター長は「不足している人が鉄分を摂取することで有益な効果があるのは明確」としながらも、過剰摂取への注意も促す。通常の食事だけならほとんど心配ないが、治療用の鉄分の服用で過剰になる場合がある。
特に小児や乳児が医療関係者の助言を受けずに治療用鉄分やサプリメントから摂取すると、急性鉄中毒になる可能性があるという。これは重度の臓器障害や死につながる恐れがある病気だ。大人がのんでいるものを誤って子供がのんでしまう例があるという。
また「消費者が自己判断して鉄分を治療目的で摂取すると、過剰になる可能性がある」と梅垣センター長は指摘する。例えば自分は貧血なので鉄分不足と判断し、病院に行かないまま摂取を始めるケースだ。貧血の原因は摂取不足とは限らず、潰瘍などからの出血の場合もある。自己判断では、おおもとの病気の受診・治療の機会を逃す恐れがある点でも問題だ。
「基本は食事から取ること」(梅垣センター長)。食べ物の中の鉄分は肉などに含まれるヘム鉄と植物性食品に含まれる非ヘム鉄があり、ヘム鉄の方が吸収率が2~3倍高い。またビタミンCは鉄分の吸収を促し、お茶に含まれるタンニンなどは逆に阻害する。
細かく考えると難しいが、いろいろな食材から取ることが大切という。医師や薬剤師、管理栄養士など健康医療関係の専門職から鉄分不足といわれたら、助言にしたがい食事を改善したり、サプリメントを摂取したりするとよいだろう。
■おすすめ本
うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった (光文社新書) | |
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