CMを観て、宮沢賢治の人となりを知るのも面白いかなと思い、観てきました。
ああ、なかなかいいですね。何がって、賢治を取り巻く家族が優しい。それに岩手弁があったかい。「ありがとがんす」
めんこいイントネーション。
タイトル通り、宮沢賢治のお父さんが主人公です。幼少期から病弱だった長男賢治を溺愛し、入院した賢治の病室に泊まり込み、白い割烹着を着て献身的に看護をする姿。あげくに病気をうつされてしまい、それにも動じない不動の愛。
しかし。明治の時代にこんなお父さんがいたんですかねえ。明治のイクメンに胸が打たれます。
賢治のすぐ下の妹トシとの絆も見どころです。兄賢治は、世間ずれしたお坊ちゃんで、何だかふわふわしていますが、トシはしっかり者で、童話作家を目指す兄を励まし続けます。
結核で教壇から降りる事を余儀なくされたトシ。別荘にて療養するトシの枕元で、「風の又三郎」を読む賢治。トシは賢治の一番のファンでした。願い叶わず若くしてこの世を去っていく。葬儀の場で賢治は壊れたかのように法華経を唱え踊る。
賢治は熱心な日蓮宗の信者だったようですね。認知症の祖父が死に、妹トシが死に、その度に傷つき折れた心を持て余し信心を深めていた。
賢治の実家は老舗の質屋。父は賢治に店を継がせたかったけど、賢治の思いを汲み取って自由を与えます。賢治も37歳という若さで結核死となるのですが、賢治の作品を讃えた父に向かい、「僕はお父さんに褒められたかったんだな」と嬉しそうに笑って旅立ちます。
母が賢治の身体を拭くシーンがあるのですが、げっそりやつれた背中を見て、菅田将暉はほんとにこの役に入れ込んでいたんだと実感しました。まだまだ伸び代のある俳優ですね。
父役の役所広司、母役の坂井真紀の演技も、最初から最後まであたたかく、じんわり余韻を与えてくれる作品です。