我が輩は野良猫である。もちろん名前などない。かの有名な漱石先生のもじりかと批判があるかと思う。だから筆名も魚目流石にした。それも真似だと言う奴がいればゆうがいい。湯うが良いのは温泉に限る。我が輩は野良猫だから住まいはその日暮らし、飯はその辺の爺さん婆さんが出してくれるので、贅沢を言わなければ快適な生活と言える。生まれた時から親はない、身内もいない。と、いうより分からないのである。三味線にされたか、誰かに食われたかもしれない。猫なんか食えないだろうと思うだろうが、それが食うのである。犬が食えて猫が食えないはずがない。猫は兎みたいな味がすると言っていた。兎ってどんな味がするんだと聞かれても困るが、鳥に近いと言っていた。今のご時世、猫を食った日にゃ、動物愛護に反するっていうんでブタ箱行きだ。世知辛い世の中になったもんだ。そんな中でも生き延びられるんだと、我ながらびっくりする。
今日は朝から春の日差しが注いで気持ちがいい。こんな日はメスの可愛子ちゃんとじゃれあって日向ぼっこでもしたい気持ちだ。この辺のメス猫はほとんどオス猫がついている。だから下手にナンパでもしようものなら、命がけの戦いになる。この間、食べちゃいたいくらいに可愛い小さなメス猫ちゃんがいたんで声をかけたら、猫なで声ですり寄ってくるんだ。「相手がいるんじゃないのか」って聞いたら、「いるけど、すぐに噛み付いたりするから嫌なの」って言う。「じゃ、別れたいんだな」って言うと、首をたてに振る。義侠心にかられて話を付けてやろうということになった。可愛いメス猫ちゃんは彼氏だというオス猫のところへ連れていった。すると彼氏だというオス猫は図体は大きいし、熊みたいな面構えで、絶対に勝ちそうにはないと悟った。「ナニかようか」野太い声で言う。つい「九日十日」と言ってしまった。「お前、ふざけてんのか」と言われた。可愛いメス猫ちゃんは、その図体の大きいオス猫に寄り添っている。「実はそのメス猫ちゃんがお前と別れたがっているんです」と言うか言わないうちに「誰にものを言っているのか分かってんのか」ときた。ここで逃げるべきだと後ずさりした。すると、ここで逃げてはオス猫の沽券に関わるという天の声がして身構えると「おう、やるのか、面白え」、というと飛びかかってきた。我が輩はすっと避けると、相手は地面に腹を打ち付けた。相手は怒り狂って我が輩を捕まえると、噛み付く引っ掻き回すで、耳がちぎれてぶらぶらになった。そのうえに我が輩は地面に叩き付けられてのびてしまった。可愛いメス猫ちゃんは我が輩を一瞥して彼氏と一緒に何処かへいってしまった。それから我が輩は復讐の鬼と化したのだ。
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