12月18日の一般質問の内容について、何回かに分けて解説を致したく存じます。
まずは、私の最初の質問の原稿を当日の写真と共に掲載致します。少し長い質問原稿ですが、お読み頂ければ幸いです。
※私の質問項目
※最初の質問は、これまで通り議長席前の演台から行ないます。
民主党・ふじのくに県議団の鈴木智です。私は大きく3つの取り組みについて、分割方式で質問致します。
1.
人口減少社会を前提とした取り組みについて
(1)
静岡県独自の将来人口推計の分析と政策への具体的な反映について
まず始めに、人口減少社会を前提とした取り組みとして、静岡県独自の将来人口推計の分析と政策への具体的な反映について、伺います。
本年10月に、県は独自の将来人口推計の結果を公表しました。昨年12月の一般質問で、県も独自に将来人口推計を行なうべきと主張した議員として、今回の取り組みについては前向きに評価しています。
しかし、独自の将来人口推計はあくまでも政策を立案する上での道具に過ぎません。現実に即して冷静に分析し、その結果を使いこなすことができて初めて将来人口推計という道具の価値は生まれます。そこで県独自の将来人口推計に関して3点伺います。
県独自の将来人口推計では、国立社会保障・人口問題研究所、社人研が今年の3月に公表した、2010年から2040年までの「日本の地域別将来人口推計」を踏まえながら、5つのケースを仮定して推計しています。社人研の推計では静岡県の人口は2040年に303万5千人まで減少する、つまり、2010年の人口より73万人減るとされているのに対し、独自の推計では、最も減少するケースで2010年人口より67万7千人減の308万8千人、最も人口が維持されるケースでは、32万2千人減の344万3千人になるという分析結果となっています。
つまり、独自の推計ではいずれのケースでも社人研の推計よりも人口減少は緩やかになるという結果になっています。なぜなら、最近の静岡県の合計特殊出生率は社人研が用いているものよりも高くなっているため、いずれのケースにおいても社人研のものより出生率は高くなると仮定されています。そして、社会移動率においても、社人研の数値と同じかそれ以上の数値を用いているため、必然的に社人研の推計値よりも人口減少幅は緩やかになるからです。
そこで1点目として伺いますが、独自の将来推計において、社人研の数値よりも社会移動率がマイナスにはならないという判断の根拠は何か、具体的にお示し下さい。
また、今議会の開会日に説明を受けた総合計画次期基本計画案の中に、新たに次の表現が追加されました。
「社人研の推計を基に本県独自の分析を行なったところ、仮に社会移動の増と合計特殊出生率2.0を早期に達成した場合には、人口減少数を5割以上抑制することが可能との推計結果が出ており、出生率や転入人口を高める取組は重要である」というものですが、昨年の一般質問でも議論しましたように、平成32年度までに出生率2.0を達成することは事実上不可能です。また、日本全体が人口減となる中で静岡県への社会移動率が増となる道筋も残念ながら見通せないことを考えれば、人口減少を5割以上抑制というのは現実的ではない想定だと考えます。そこで、2点目の質問として、県は、この想定、つまり、社会移動率を社人研が設定した滋賀県の値とし、かつ、合計特殊出生率が平成32年度までに2.0に達すると仮定した推計を、現実的に可能性があると考えているのでしょうか。その具体的な理由も含めて伺います。
そして、3点目の質問として、冒頭述べましたように、この独自の将来人口推計の結果をどのように具体的に使いこなすのでしょうか。例えば、上下水道や道路等の様々な需給計画に反映させると共に、広島県の将来人口推計のように、市町もデータとして使えるような将来人口推計を行なって、次期の都市計画区域マスタープラン等を作成する際の基礎データとするべきと考えますが、この点について県の方針を伺います。
(2)
県有資産の維持管理・更新費の将来推計と長期財政見通しについて
次に、県有資産の維持管理・更新費の将来推計と長期財政見通しについて伺います。
昨年12月の一般質問では、私は、県が維持管理に主導的な責任を負う県有資産、つまり財務諸表の連結貸借対照表における非金融資産に含まれる全ての施設、価値にして合計2兆4千億円程にもなる資産の維持管理・更新費の将来推計についても早急に行なうべきと提言致しました。現時点では、そのすべての資産について推計が行なわれているわけではありませんが、昨年度末の今年3月に、交通基盤部は所管の主な施設の維持管理更新費用について将来推計データを公表しました。それによれば、2008年から2012年の維持管理更新費が平均で約247億円だったものが、2013年からの10年間の平均では163億円増の411億円、2023年からの10年間では倍増の約505億円になると推計されています。
また経営管理部は、昨年12月に、県営住宅、職員住宅を除く県有の建物について、建て替えや大規模改修に要する費用を試算しています。それによれば、過去5年間の平均投資額約148億円に対し、今後は平均で40億円増の約188億円になると推計されています。
更に、当局からデータを提供して頂き、インフラの老朽化問題では第一人者の根本祐二教授が代表を務める東洋大学PPP研究センターが作成した「自治体別社会資本更新投資計算簡略版ソフト」を使用して、普通会計における建物、つまり、県営住宅や職員住宅も含めた建物の維持更新費の計算を行なったところ、2013年から32年の間で平均約262億円掛かるという結果となりました。つまり、更に70億円以上の増、前述の過去5年間の平均と比べれば110億円以上増える可能性があり、これらを積み上げただけでも、今後10年間から20年間において、維持更新費は毎年200億円から300億円以上、これまでより更に増加する恐れがあることがわかります。
その一方で、本年度から開始されたのが「地震・津波対策アクションプログラム2013」です。今後10年間で総額4200億円、単純に年平均で420億円もの莫大な予算が必要となるものです。これは、私達の生命や財産を守るための大変重要な計画です。しかし、実際に計画通りに達成できるかどうかについては、特に財政面の点から、所属する建設委員会で何度も議論してきましたが、現時点では疑わしいと言わざるを得ません。
なぜなら、前述のように、県有資産の維持更新費だけでも今後、大幅な増額が見込まれるのに対し、今後5年間の財政中期見通しでは、維持更新費の増額分やアクションプログラムの事業費を含まない中でも、毎年400億円を越える財源不足が見込まれ、また財源不足を補っていた基金も来年度には枯渇するからです。
そこで、この地震・津波対策アクションプログラムの信頼性・実効性を高めるためにも、大幅な増加が予想される県有資産全体の維持管理・更新費の推計を行い、そして前述の将来人口推計を踏まえた長期財政見通し、まずは少なくとも今後10年間の財政見通しを早急に策定し、総額でどれだけの財源不足となる可能性があるのか、そしてファシリティマネジメントやアセットマネジメントにおいてどれくらいの経費削減が必要となるのか等を推計し、削減の目標値を具体的に設定すべきと考えますが、県の方針を伺います。
以上の質問について、答弁を求めます。
※最初の質問終了後は対面式の演台に移動し、以降の質疑は知事らと対面した形で行います。
2.
静岡県の国際力強化のための取り組みについて
(1)
海外駐在員事務所の強化・拡大について
次に、静岡県の国際力強化の取り組みとして、まず、海外駐在員事務所の強化・拡大について伺います。
シンガポールと台湾の海外駐在員事務所は、本年度に、新たに強化・設置されたばかりですが、県職員は1人だけという体制では、職員の健康上の問題等のために事務所機能に問題が生じたり、交代に伴い事務所機能が低下したり人脈が弱くなったりする可能性が高いと考えます。また、シンガポールの事務所は、もともと所管する国や地域が多いだけでなく、最近だけでも、タイと観光協力の趣意書を調印したり、川勝知事がインドを訪問、森山副知事がベトナムを訪問したりするなど、具体的な活動も拡大しています。
台湾事務所につきましても、台湾の自治体と友好関係にある市町が県内には多いこともあり、事務所長は極めて多忙と伺っています。そのため、事務所機能の維持・向上や、地域外交における市町との連携を強化するためにも、例えば、市町から職員を派遣してもらうことなども行ないながら、上海・ソウル事務所と同様に、シンガポールと台湾の事務所についても早急に職員2人体制にすべきと考えますが、県の今後の方針を伺います。
また、今夏に知事がモンゴルを訪問した際、モンゴル側から、現地に事務所を設置するよう要請があり、知事も前向きに検討すると答えました。安倍政権も注目するモンゴルとの関係を更に発展させるためにも、早期にモンゴル事務所を開設すべきと考えますが、県の方針を伺います。
(2)
県職員の人材確保・育成について
次に、国際力強化のための取り組みとして、県職員の人材確保・育成について伺います。
TPP交渉の進展等に見られるように、今後、経済面での国際交流は更に加速することが予想されます。また、人口減少が少なくとも数十年は続くわが国におきましては、海外からの観光客誘致はもとより、自治体や民間企業における人的交流、例えば、優秀な外国人職員の採用や研修生の派遣・受け入れ等も更に積極的に行なう必要が出てきていると考えます。
つまり、地域外交に直接関わる部局以外におきましても、語学力を始めとする国際力が県職員には必要になってきます。また、県が積極的に国際力を強化するための人材確保や育成を進めることは、県内企業にも同様の取り組みへの投資を促すことにつながると考えます。
県では既に大使館等の海外機関や外国の大学等に職員を派遣していますが、そうした国際力を高めるための研修は、国内における語学研修等も含めて更に取り組む必要があると考えます。
また、来年度の「静岡県職員募集」の冊子には、静岡県の特色であるはずの地域外交や海外駐在員事務所の文字が全く見当たらず、県庁において様々な形で語学力や海外経験が活かされることが全く説明されていませんが、むしろ県の特色として打ち出すことで、語学力や海外経験を持つ大学生、大学院生に積極的に応募してもらい採用していくことが、今後は更に必要ではないでしょうか。こうした県の国際力を強化するための人材確保と育成について、県の方針を伺います。
以上の質問について、答弁を求めます。
※自席から答弁する川勝知事
3.
行政と地域が一体となった学校づくりのための取り組みについて
(1)
静岡式35人学級編成の維持・強化について
最後に、行政と地域が一体となった学校づくりのための取り組みのうち、静岡式35人学級編成の維持・強化について伺います。
現在、政府内では、35人学級を見直す動きが出てきていますが、静岡式35人学級を維持・強化することこそ、正に今後実行すべき「少子化対策」であると考えます。政府の今後の方針如何に関わらず、県は、独自で更なる負担をしてでも、35人学級を維持すると共に、早期に、1クラス25人の下限を撤廃するなど少人数教育の強化に努めるべきと考えますが、県の決意を伺います。
(2)
コミュニティ・スクール導入促進のための取り組みについて
次に、コミュニティ・スクール導入促進のための取り組みについて伺います。
コミュニティ・スクールの導入により、学力の向上、いじめや不登校等の減少、教師の多忙化の解消、地域との連携強化や地域の活性化、学校や地域の防災力の強化等、様々な効果が期待できることは全国的に実証されています。そのため、国は今年の6月に閣議決定した「教育振興基本計画」の中で、「保護者や地域住民の力を学校運営に生かす「地域とともにある学校づくり」により、子供が抱える課題を地域ぐるみで解決する仕組みづくりや、質の高い学校教育の実現を図る」ことを目的に、平成28年度までにコミュニティ・スクールを全公立小中学校の1割、約3千校に拡大することを目指しています。
静岡県では、今年の3月に磐田市内の計4つの小中学校が初めてコミュニティ・スクールに指定されました。しかしながら、今年の4月1日現在でコミュニティ・スクールが全くないのは全国で5県のみであり、コミュニティ・スクールに関しては、残念ながら、静岡県は後進県と言わざるを得ません。
県教育委員会の資料によれば、コミュニティ・スクールの導入が静岡県では進んでいない理由として「現在、学校と保護者・地域社会の関係が良好で、協力体制も整っており、コミュニティ・スクールへの指定に踏み出さなくてもよい状況にあると判断する市町教育委員会が多い」としていますが、その判断は果たして客観的に正しいのでしょうか。
平成25年度の「教育委員会事務の管理・執行に関する点検評価」によれば、「地域にある学校を身近に感じている人の割合」は平成25年度の目標値60%以上に対して、平成24年度は53.1%で達成状況はC、「地域で子供を育む活動に積極的に参加した人の割合」も、同様に目標値20%以上に対して、9.1%のC判定、「コミュニティやサークル等、仲間と同じ目的を持って活動できる場所がある人の割合」も、同様に66%以上の目標に対し、54.8%のC判定、「「それぞれの地域の特色を生かした教育行政が進められている」と感じている人の割合」も、49%以上の目標に対し37.9%のC判定です。しかも4つの値は、全て平成21年度の基準値よりも悪くなっているというのが実態です。
こうした数字を見る以上、前述の市町教育委員会の判断は現状に即していないと言わざるを得ず、よって、県教育委員会は、コミュニティ・スクールの導入促進において、各市町の教育委員会や学校に対し、これまでとは違う形で、より積極的に働きかける必要があると考えます。
静岡県と同様の後進県の一つが北海道です。北海道では、平成24年4月に初めて2校、今年の4月に2校、7月に1校の計5校がコミュニティ・スクールに指定されていますが、今後の目標として、平成29年度までに全体の1割、約180校の指定を目指しています。北海道は平成25年度の学力テストでは、小学6年生の国語Aで全国最下位だった静岡県よりも上位の42位だったものの、その他においては全て静岡県を下回り、小学6年生の全教科合計の平均正答数では、43位の静岡をも下回る45位でした。学校と保護者・地域社会の関係が良好になることは、前述のように、学力の向上にもつながるのですから、コミュニティ・スクールの取り組みにおきましても、北海道以上に積極的、具体的に取り組むべきと考えます。
コミュニティ・スクールの導入促進は総合計画の次期基本計画案で新たに掲げられていますが、コミュニティ・スクールの導入にこれまで消極的だった後進県である以上、県は、数値目標を掲げると共に、財政的・人的支援、具体的には、県独自の支援事業として、小中学校をコミュニティ・スクールの研究校に指定し、導入を決定した学校には、運営が軌道に乗るまでの数年間は担当人員を配置するなどの支援を行なうべきではないでしょうか。
例えば、人口10万人につき、コミュニティ・スクールの研究校を1校ずつ置くことができれば、コミュニティ・スクール指定校と合わせて40校余り、つまり県の公立小中学校の約5%がコミュニティ・スクールに関する取り組みを行なうことになります。このように、具体的な目標値を立てた上で、実効性ある支援策を実施すべきと考えますが、県の今後の具体的な方針と決意について伺います。
以上の質問について、答弁を求めます。
質問原稿は以上です。今回は、テーマごとに質問と答弁を行なう分割方式で質疑を行ったため、「以上の質問について、答弁を求めます」という言葉が入っています。
お読み下さり、ありがとうございます。