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12月18日一般質問の解説④

2013-01-18 | 活発!な活動報告
 昨年12月18日の一般質問の最後の解説です。ぜひ、お読み下さい。

③ 人口減少社会を直視した内陸フロンティア構想について

問(鈴木) 人口減少は、自然災害の危険性がより低い地域に住むことを可能にする。また人口が減少しても地域の中心に人口が集まれば、賑わいは維持でき社会インフラコストの縮小にもなる。こうした人口減少社会への対応という視点を内陸フロンティア構想に明確に加え、より安全・安心な地域への移転を促進すべきではないか。

答(県) 広域的に移転を政策誘導することは、それぞれの地域にあった形で、住民や市町の意向も十分に踏まえ、様々な防災対策を総合的に検討する中で判断していきたい。

解説: 東日本大震災を受けて策定された内陸フロンティア構想は、津波等の災害に脆弱な沿岸域に偏った現在の国土利用の在り方を改め、新東名高速道路の開通により新たな地域づくりや利用の可能性が大いに高まっている内陸部の「フロンティア」に自然と調和した住宅地や産業地を築くことで、予防・防災と地域の成長の両立を目指そうというものです。

 人口が急増した高度成長期、様々な自然災害の危険性に必ずしも十分な配慮がされないまま、各地に住宅地が整備されました。今後も人口が増え続けるのであれば、そうした地域に住み続けるのも仕方が無いかもしれません。しかし、人口がこれから大幅に減少するということは、自然災害の危険性がより低い地域への移転が容易になるということです。そこで、沿岸部から内陸部だけでなく、洪水等が危惧される河川周辺地域や、がけ崩れ・火山噴火等の危険がある山間部等からより安全な地域への移転を促進すれば、様々な災害に強いだけでなく、県全体の人口は減少しつつも地域の賑わいは維持され、そしてより効率的な社会インフラにより成り立つ、正に人口減少社会に相応しい静岡を築くことにつながるはずです。

 今後、人口減少が無秩序に進んだ場合、山間部だけでなく、沿岸部を中心とした都市部でも、多くの空き家に埋もれて住民が点在して住むというゴーストタウンが県内各地に出現する可能性が高いのではないかと危惧します。防災や人口減少対策の観点から住宅移転を政策誘導的に促進することについては様々な議論があろうかと思いますが、戦後の都市開発が必ずしも長期的な視点から行なわれなかったことを反省するのであれば、人口が減少する今後においては、計画的に縮小することを今から真剣に検討し実行すべきではないでしょうか。

 お読み下さり、ありがとうございます。

12月18日一般質問の解説③

2013-01-15 | 活発!な活動報告
 昨年12月18日の一般質問の解説の続きです。ぜひ、お読み下さい。

県有資産の維持管理費の将来推計と資産経営の早期推進について

問(鈴木) 笹子トンネル事故でも明らかになったように、高度成長時代に数多く整備された社会資本の老朽化が急速に進む一方、維持管理のための財源を確保することは年々難しくなる。県有資産全体の維持管理費の将来推計を早急に行い、社会資本の聖域なき統廃合や縮小を進めることで安全と財源を確保していくべきではないか。

答(県) 県では「社会資本長寿命化計画検討委員会」を立ち上げ、平成15年度に策定した「土木施設長寿命化行動方針」の見直し等を行なっている。またファシリティマネジメントの取り組みとして県有施設等の更新費用の試算も行なっている。まだ推計の対象でない資産についても必要に応じて積み上げ方式で推計していきたい。

解説: 昨年12月2日に天井板崩落事故が発生した中央自動車道の笹子トンネルは、完成が昭和50(1975)年であり、老朽化による劣化が崩落の原因と言われています。前述長期展望委員会では、笹子トンネルのような社会資本構造物の維持管理・更新費の将来推計も行っており、全国的には平成42(2030)年頃までに倍増するとしています(※図②)。


※図② 長期展望委員会『「国土の長期展望」中間とりまとめ』資料より

 県では昨年12月に道路等のインフラや県営住宅、職員住宅を除く県有施設、資産価値として約3200億円分の更新費用の将来推計を行ない、今後はこれまでより年間40億円多く必要になることを公表しました。県がその維持管理に主導的な責任を負う県有資産の価値は合計2兆5千億円以上もありますので、全ての維持管理・更新費を推計すれば、増加額は更に大きくなるはずです。

 県有資産でも、県営住宅や職員住宅、工業用水道のように、利用者から徴収する料金を維持管理費に充てられる施設とそうでないものを一緒にすべきでない等の考え方もありますが、県が責任を負う施設は、料金で賄えなくなれば最終的には税金が投入されるものなのですから、まずは大まかにでも全体の費用を推計すべきと考えます。そうしなければ、今後どこまで新規の社会資本を整備できるのか、あるいはいくらまで借金をしても大丈夫なのかという基準が客観的に把握できないことになります。将来人口推計と同様に、県有資産全体の維持管理費の将来推計についても早急に策定するよう、引き続き働きかけていきたく思います。

 お読み下さり、ありがとうございます。


 

12月18日一般質問の解説①

2012-12-25 | 活発!な活動報告
 12月18日の一般質問の内容について、何回かに分けて解説を致したく存じます。

 まずは、私の最初の質問の原稿を当日の写真と共に掲載致します。少し長い質問原稿ですが、お読み頂ければ幸いです。



※質問項目一覧
 
 民主党・ふじのくに県議団の鈴木智です。私は「人口減少・高齢化社会の到来を直視した将来構想と施策策定の必要性」をテーマに、3つの項目について質問致します。

 初めに、人口減少・高齢化社会の到来を直視した取り組みについて2点伺います。

 1点目は合計特殊出生率2.0を目指す意義と現実性についてです。

 今年の1月、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は、日本の人口は、2040年に現在の人口から約2千万人減の1億728万人、2060年には約4千万人減の8674万人になるという推計を公表しました。これから2040年まで平均70万人以上、その後は平均100万人以上の人口が毎年減る、つまり、島根県あるいは静岡市に相当する人口が日本列島から毎年消えていくということです。

 都道府県別の将来人口推計として最新である2007年5月の推計では、静岡県の人口は、2010年の約376万5千人が15年後の2025年には約25万人減の351万1千人、25年後の2035年には52万人減の324万2千人になるとしています。県でも、「総合計画基本構想」や「ふじのくに移住・定住促進戦略」等で社人研の推計を引用していますが、そうした人口減少に関する県当局の認識については疑問があります。例えば、総合計画基本構想では、将来の人口減少や高齢化に言及しながらも、課題としては「女性や高齢者を始め、多様な人材が活躍出来る環境を整備し、県外への進学や就職による若者の流出を抑えるとともに、地域の魅力を磨き、国内外から専門知識や高度な技術・技能などを備えた人材の確保と育成に努める必要がある」と述べるのみです。また、総務委員会や企画文化観光委員会で認識について質してきましたが、「少子化対策や移住・定住施策を総動員して人口減少を食い止める」という答弁にとどまっており、推計通りに人口が減少した場合の、財政における影響や対策等は全く示されていません。

 そもそも、「少子化対策や移住・定住施策を総動員して人口減少を食い止める」という考え自体にも疑問があります。なぜなら、少子化や人口減少の問題は最近始まったばかりのものではないからです。既に1975年に国の合計特殊出生率は2.0を下回り、その後も基本的に下がり続けてきました。それでも最近まで人口が減少しなかったのは、高齢者人口が現在ほど多くなく、また寿命が延び続けていたからです。最近では寿命の延びも小さくなり、また団塊の世代が高齢者になる一方、低い出生率に加え、出産適齢期の世代の人口が大幅に減っています。そのため現在は「少産多死」の時代となっており、そうした構造の変化は数十年掛かって生じたと言うべきものです。したがって、人口減少や高齢化を食い止めるために「多産少死」あるいは「中産中死」の人口構造に変えるには、少なくとも数十年の時が必要であり、出生率がそれなりに上がったとしても人口減少の流れは当面変わらないというのが現実です。実際、国土交通省の国土審議会長期展望委員会が昨年2月に公表した『「国土の長期展望」中間とりまとめ』では、2008年に出生率が人口置換水準である2.07となり、その後も2.07が維持出来たとしても人口減少は続き、2050年には約1300万人減の1億1491万人、2100年には約2千万人減の1億740万人になると推計しています。

 そこで伺いますが、県は総合計画で「平成22年度から概ね10年間」の間に出生率2.0の達成を目指すとしていますが、その意義や目的は何でしょうか。2.0を達成するとその後の人口はどうなるのでしょうか。人口減少が止まると考えているのかどうか伺います。また、少子化対策の優等生と言われるフランスでは、1994年の合計特殊出生率1.66を2006年に2.0にまで回復させました。つまり毎年平均で0.028ポイントずつ12年間かけて上昇させています。一方、静岡県では、2011年の出生率は1.49です。これを10年間で2.0にするには年平均0.051、つまりフランスの倍近いペースで上げなければなりませんが、果たして可能でしょうか、また、そうした目標を設定した根拠は何か、伺います。




 2点目は、『大阪府人口減少社会白書』の評価と静岡県独自の将来人口推計等の人口減少を前提とした取り組みの必要性についてです。

 前述の人口推計の数字は大変衝撃的なものです。しかし、一連の数字は、実は前回の2006年12月の推計よりも上方修正されたものです。2006年の推計では2010年の人口は1億2718万人になるとしていましたが、国政調査による2010年の人口は1億2806万人と推計よりも88万人多い結果となりました。つまり、日本全体の人口減少の流れは、2006年の推計よりもわずかですが緩やかになっているのです。

 しかし、静岡県では状況が異なります。前述の2007年5月の都道府県別人口推計は、2006年12月の国の人口推計に基づいて計算されたものですが、当時の推計では2010年の県の人口は377万1千人になるとしていました。ところが、同年の国勢調査による県の人口は376万5千人と、推計よりも6千人少ない、つまり日本全体の傾向に反し、静岡県では人口減少が推計より進んでいることが明らかになったのです。更に、2007年の推計では2015年の人口は371万2千人になるとしていますが、2011年10月の県の人口は前年より約1万2400人減の375万26百人、そして今年10月の人口は更に1万6千人減の373万6600人と年間1万人以上減という勢いで減少しており、2015年の県の人口は2007年推計の数字を恐らく大きく下回るという状況です。つまり、静岡県においては、今後数十年間、人口は必ず減少することを前提とした長期計画や対策を早急に策定し実行しなければならないのは自明の課題だと考えますが、県の所見を伺います。

 人口減少は否定的に考えられがちですが、今から十分な準備と対策を講じれば、人口減少社会は、むしろ様々なチャンスや利益をもたらすはずだと考えます。例えば、人口が減少した分、ゆとりのある家や公園等を持つことが可能になります。また、食料やエネルギーの自給率も、今の生産量を維持するだけでも、人口減少とともに上昇します。更に、人口が減少し高齢者の割合が増加することは、一人ひとりの、特に高齢者の方々の役割がより重要になることでもあり、地域のつながりを取り戻し、孤独死を防ぐことも出来るはずです。

 世界を見れば、人口の爆発的な増加は早急に解決すべき地球的課題となっており、中国やインド、アメリカ等もいずれは人口減少時代を迎えることになります。日本は世界最先端の現象である人口減少時代に突入した国であり、人口減少に適応した社会システムを他国に先んじて構築出来れば、そのための様々な技術は世界中に輸出出来るものになると考えます。

 つまり、人口減少社会を直視し今から備えることによって、ピンチをチャンスに変えることは十分に可能であり、既にそうした取り組みを始めているのが大阪府です。大阪府は今年の3月に「人口減少社会白書」を公表しました。白書の目的は、人口減少社会の到来による影響や課題、対応の方向性を、大阪府民をはじめ、市町村や企業など「オール大阪」で共有することです。白書は、人口減少社会が及ぼす影響をマイナスからプラスに変えていくため、「変革のチャンス」「将来への備え」「持続的発展」という3つの観点から、「安全で安心して暮らせる定住都市・大阪」「日本の成長エンジンとして持続的に発展する都市・大阪」の実現を目指すとしています。この大阪府のように、静岡県としても、人口減少を前向きにとらえた長期戦略や計画を早急に策定すべきと考えますが、その必要性と「大阪府人口減少社会白書」の評価について、県の所見を伺います。

 また、人口減少社会を直視する前提として、かつて行われていた県独自の将来人口推計を直ちに行うべきと考えます。なぜなら、政府が公表した南海トラフ巨大地震における被害想定等のデータを検証しながら県が第4次地震被害想定の策定を進めているように、社人研の推計についても、県独自に、県内事情をより細かく反映した計算を行えば、更に正確で詳細な推計が可能になるからです。また、たとえ独自の推計結果が社人研のものと同様になったとしても、自らの手で推計を行うことは、人口減少という壮大な社会現象の更なる理解につながり、加えて、将来有り得るシナリオを独自に想定することは、直面する課題やとるべき政策の明確化につながるはずだからです。こうした県独自の将来人口推計の早期策定の必要性について県の所見を伺います。




 次に、県有資産全体の維持管理・更新費の将来推計と資産経営の早期推進について質問します。

 今月2日、中央自動車道上り線の笹子トンネルで、天井板が崩落し9名もの方が犠牲となりました。1975年完成のトンネルであることから、老朽化による劣化が崩落の原因と言われています。

 我が国では、高度経済成長期に社会資本が集中的に整備され、これらのストックは、正に笹子トンネルもその一つですが、建設後既に30年以上経過しているため、今後急速に老朽化が進むとされています。当然ながら、適切に管理されなければ、老朽化による事故の危険性が今後更に高まることになりますが、笹子トンネルの事故は、その恐れが現実化したと考えられます。

 こうした状況は静岡県でも同様であり、笹子トンネルのような事故が再発しないよう、社会資本の適切な管理や更新が欠かせませんが、既述のように人口減少・高齢化が急速に進む中、そのための予算確保は更に難しくなることが予想されます。

 前述の長期展望委員会では、道路、港湾、空港、公共賃貸住宅、下水道、都市公園、治水、海岸、上水道、廃棄物処理、文教施設、治山、農林漁業、工業用水道、地下鉄の15分野における社会資本構造物の維持管理・更新費に関する将来推計も行っています。それによれば、全国的には2030年頃までに倍増します。静岡県では、2010年の人口一人当たりの維持更新費は年間5万7千円であるのに対し、2030年に約1.9倍の10万9千円、2050年には約2.3倍の13万円になるとしています。これはあくまでも2011年以降の新設改良費を0と仮定した場合であり、今後も新規の道路や津波対策施設等が整備される静岡県では、こうした維持更新費は更に増えることになります。

 県は、先週13日の行財政改革推進委員会で、道路等のインフラや県営住宅、職員住宅を除く普通会計における県有施設、資産価値として約3200億円分の財産の更新費用の将来推計を公表しました。それによれば、過去5年間で平均して年148億2千万円掛かっているのに対し、今後は年平均188億7百万円、つまり、毎年40億円多くなるのです。現時点の来年度予算案で443億円の財源不足が予想される中、40億円という数字は決して小さくありません。また、道路等のインフラ資産や公営企業会計等の全ての施設の維持・更新費用も含めれば更に多額になることが予想されます。県がその維持管理に主導的な責任を負う県有資産、つまり財務諸表の連結貸借対照表における非金融資産に含まれる建物や道路、橋梁等の全ての施設の価値は合計2兆5千億円以上もあります。13日に公表した推計だけでなく、非金融資産全体の施設の維持管理・更新費がいくら必要になり、その一方でどれだけ財源を確保出来るのか中長期的な将来推計を早急に行うことは、県全体の今後の課題を明確化するのに不可欠であり、笹子トンネル事故を県内で再発させない取り組みの前提とすべきだと考えますが、所見を伺います。
 
 また、人口減少に伴って一層厳しくなる財政状況を考えれば、連結貸借対照表における非金融資産全体の施設の管理計画やコスト等を常に把握出来る仕組みをつくり、安全性を最優先にしながらも厳しい財政に対応出来るよう、聖域なき統合、合理化、廃止等のあらゆる選択肢、例えば、全国初の大規模ダム撤去工事である熊本県営荒瀬ダム撤去のようなインフラの廃止、老朽化している県立中央図書館と隣接の県立大図書館の統合、将来の人口減を見越した県立大と文芸大の統合、基幹的広域防災拠点としての静岡空港の機能強化にもなる合理化策として、他県の緊急援助隊の集結地としてアクセスが良いとは言えない清水消防学校の空港隣接地への移転や、津波の危険性が否定出来ない航空自衛隊静浜基地の機能・部隊の静岡空港への移転、これはもちろん国との調整が必要ですが、最初から無理だと決めつけずに考え得る選択肢を全て検討し、そして可能なものを実行することで、将来の維持管理・更新費を最大限削減する努力が必要と考えますが、所見を伺います。


※答弁する川勝知事


 最後に、人口減少・高齢化社会を直視した内陸フロンティア構想の推進について2点伺います。

 1点目は、内陸フロンティア構想への人口減少社会の視点の追加についてです。

 知事は11月30日の提案説明の中で「内陸のフロンティアを拓く取り組みとは、予防防災と地域成長モデルを両立させるものである」と述べました。前述のように、今後、人口減少や高齢化が確実に進む以上、人口減少社会に相応しい街づくりを行わなければ、地域の成長はあり得ません。

 人口が急増した高度成長時代、洪水やがけ崩れ、地盤の液状化、津波等の自然災害の危険性に必ずしも十分な配慮がされないまま、住宅地が各地に整備されました。今後も人口が増えるのであればそうした地域に住み続けるのも仕方ないかもしれませんが、人口減少社会の到来は、より安全な地域への移転を可能にするということです。

 また、県全体の人口が減少しても、各地域の中心地に人口が移動し集まることが出来れば、地域のにぎわいは維持されます。加えて、人口がまばらに点在するのではなく、ある地域にまとまることは、必要な社会インフラやその維持コストの縮小にもつながります。

 つまり、内陸フロンティア構想が主眼を置いている津波の危険度が高い海岸部から内陸部への移転だけでなく、洪水等の危険がある河川周辺地域や、がけ崩れ・深層崩壊、火山噴火に伴う危険等が危惧される山間部等からより安全な内陸部への移転も促進し、移転跡地については、災害に強い、または復旧が容易な公園、農林漁業施設や太陽光・風力の発電施設等を整備する、もしくは、かつての森林等の自然に戻すという政策を進めれば、災害に強いだけでなく人口減少社会に対応した静岡県を築くことにつながるはずです。こうした人口減少社会への対応という視点を内陸フロンティア構想に明確に加えるべきと考えますが、所見を伺います。

 2点目は、より安全・安心な地域への移転促進施策の拡充についてです。

 個人や集団の移転を促進するための施策拡充の必要性は、昨年度の「大規模地震対策特別委員会」の報告書でも、津波対策の視点から提言されています。また、増田寛也(ひろや)・元総務大臣が岩手県知事時代に人口減少対策も目指して導入した、「がけ地近接等危険住宅移転事業」に補助金を上乗せする「がけ崩れ危険住宅移転促進事業」のように、従来型のハード対策ではなく、様々な災害の危険地域にある住宅や集落の安全な市街地等への移転を促進する県独自の仕組みを導入することは、災害対策と同時に人口減少対策の推進にもなり、また大幅なコスト削減や時間短縮にもつながると考えます。

 例えば、県のがけ崩れ対策事業では、1968年以来、昨年度までに約1500億円の予算を費やし、約47200人の県民の安全が確保されたことになっています。しかし、がけ崩れ対策事業が未実施の危険個所に今もなお、約9万人も住んでおり、そうした方々を守るための全事業を完了するには、今のペースでは140年近く掛かり、またここ5年間平均の保全人口一人当たり単価約440万円を単純に当てはめれば、がけ崩れ対策事業だけで4千億円近い費用が必要になります。一方、前述の岩手県「がけ崩れ危険住宅移転促進事業」では、11戸の移転に要した事業費は「がけ地近接等危険住宅移転事業」を含め約5800万円、一人当たり約2百万円です。加えて、がけ崩れ対策事業は完了後も定期的に維持管理費が掛かりますが、移転促進事業の場合は移転時のみしか公費は掛かりません。移転促進事業の方が明らかに経済的であり、より使いやすい制度を構築出来れば、時間の短縮も期待出来ます。更に、街中に移転してもらえば、人口減少対策や社会インフラコストの削減にもなります。

 県では、「TOUKAI-0」プロジェクトとして住宅の耐震補強に助成しており、個人資産である住宅に対して支援が出来ないわけではありません。また、都市部等への移転の促進は地域のにぎわいの維持や社会インフラコストの削減にもなることから、極めて公共性が高い事業だと考えます。

 沼津市内浦重須地区のように、既存制度による集落移転の取り組みが県内でも始まっていますが、思うようには進んでいません。沿岸部や山間部等から移転したくても出来ない県民は恐らく多いと思います。また、これから人口が無秩序に減少した場合、多くの空き家に埋もれてわずかな住民が点在して住むというゴーストタウンが県内各地に出現する可能性が高いと考えます。従って、防災と同時に人口減少への対応という観点から、より安全な内陸部・都市部への個人・集落の移転を政策的に誘導する県独自の制度を早急に導入すべきと考えますが、大規模地震対策特別委員会の提言や岩手県の事例を踏まえた県の所見と決意を伺います。

 質問は以上です。ありがとうございました。


 お読み下さり、ありがとうございます。




企画文化観光委員会議事録(10月2日・3日分)を掲載しました。

2012-12-12 | 活発!な活動報告
 いつも通り遅ればせながら、9月議会中に開かれた企画文化観光委員会の議事録がやっと県議会ホームページで公開されましたので、私のブログの「思慮深い?資料庫」にも掲載致しました

 他の議員が嫌になるくらい?細かくしつこく質問しています。ぜひお目通し下さい。特に、10月3日の人口や出生率に関する質問は、12月18日の一般質問でも継続して行う予定です。ぜひともご覧下さい。

 お読み下さり、ありがとうございます。

あるべき定数削減とは?-決算特別委員会より

2012-11-13 | 活発!な活動報告
 10月24日から実質的な審議が始まった決算特別委員会は、まだ続いています。

 昨日(11月12日)は、経営管理部と選挙管理委員会の決算審査を行い、私は県職員の時間外勤務の状況等について質問しました。

 私の論点は、「県職員の定数削減の努力は基本的に評価するが、定数を減らすことばかりにこだわっていては、かえって非効率的な組織になりかねない」というものです。静岡県は近年、職員の適正配置と削減に努めており、最近では、人口1万人当たりの職員数は同規模の県の中で最小を維持しています。しかしながら、職員数を減らしすぎたことが職員一人ひとりの負担を過度に増やすことにつながってしまっては逆効果になってしまいますので、そうなっていないかどうか確認するために、平成23年度から過去5年分の時間外勤務の総時間数、時間外勤務手当ての総額、一人当たりの時間外勤務時間数と時間外手当額、そして最長の時間外勤務時間を示した資料を予め要求していました(決算特別委員会で使う資料は必ずしも詳しいものではなく全ての事業について説明しているわけではありませんので、必要に応じて事前に資料請求をする必要があります)。


※11月13日静岡新聞記事

 記事にありますように、平成23年度は東日本大震災等への対応の為に前年度より時間外勤務数は増加していました。ただ私が注目したのは、時間外勤務の多さが慢性化していないかという点です。平成19年度から23年度まで、時間外勤務時間の合計は90万時間を前後したものになっており、一人当たりの時間外勤務数は平成19年度153.3時間、20年度157.6時間、21年度165.3時間、22年度161.2時間、23年度164.4時間と増加傾向にあります。ですから、東日本大震災という特殊事情以外に構造的に残業を増やしている要因があると考えるのが普通だろうと思います。もちろん、定数削減だけがその理由とは言えませんが、まずはこれまでの定数削減に無理が無かったか検証する必要はあると思います。

 そして場合によっては、むしろ職員数を増やすことによって総時間外勤務数を減らすという方法も考えるべきです。なぜなら、90万時間という勤務時間数は約450人分の総労働時間数(ちなみに23年度の一人当たりの時間外勤務も含めた総勤務時間数は年間2063時間)ですから、例えば総時間数を半減できれば、200人以上の職員分の労働時間の削減(もちろん、人件費には社会保険料等も含まれますので同人数分の人件費の削減とはなりませんが)となるのですから、総合的な観点から、真の意味で効率的な組織作りを目指すべきでしょう。

 言うまでも無く、多すぎる残業は、非効率化だけでなくストレスや各種の病気、そして最悪の場合、病死や自殺を引き起こします。昨年度も幹部職員の方が1名自殺をされています。また、県職員による不祥事や犯罪の報道も度々聞かれますが、その背景には、個人の倫理や責任の問題だけでなく、多すぎる残業や負担等もあるのではないかとかねてから考えています。なかなか原因の特定は難しいのですが、引き続き自分なりに検証をしていきたいと思っています。

 お読み下さり、ありがとうございます。

 

企画文化観光委員会議事録(7月4日・5日分)を掲載しました。

2012-10-23 | 活発!な活動報告
 大変遅ればせながら、6月議会中に開かれた企画文化観光委員会の議事録がやっと県議会ホームページで公開されましたので、私のブログにも掲載致しました

 以前にも述べましたが、国会と違って、静岡県議会では議事録の作成・公開までに大変時間が掛かります。正式な議事録が冊子となって議員の手元に来るのが、次の議会での委員会審議が始まるわずか数日前で、皆さんの目に見える形でホームページに掲載されるには更に3週間程掛かっています。結局、委員会開催から3カ月もの時間が経っていることになります。

 国会の場合は、速記者等の議事録作成のための職員や最新の音声認識システム等が衆議院、参議院にそれぞれ配置されています。一方、県議会の場合は、速記やテープ起こしを民間企業に委託していますので多少遅くなるのは仕方ない面もあります。しかし、3カ月は余りにも掛かり過ぎです。何とかすべきと思います。

 なかなか日の目を見ない委員会審議ですが、是非とも議事録をお目通し頂き、ご意見等をお寄せ頂ければ幸いに存じます。

 お読み下さり、ありがとうございます。

 

地域外交の重要性 ※写真・新聞記事を追記しました

2012-09-21 | 活発!な活動報告
 この7月から8月の間に、モンゴル、シンガポール、台湾を訪問しました。モンゴルは小楠和男・県議会議長を団長とする県の公式訪問団の一員として、シンガポールは私的滞在と併せて個人的に調査や意見交換を行なうため、そして台湾は日華友好議員連盟の一員としてというように、立場がそれぞれ異なる形での視察でした。

 
※モンゴル・ドルノゴビ県と静岡県との友好協定締結1周年を記念し、同県サインシャンド市内の幹線道路の一つが「静岡通り」と命名されました。(7月30日)※隣は小楠議長

 
※(左)静岡新聞記事(7月29日) (右)静岡新聞記事(8月7日)


※シンガポール政府の組織である人民協会(People's Association)のNah Juay Hng氏(私の隣)と地方自治体との交流の可能性等について意見交換(8月24日)


 私は元々、国連本部で働くことを夢見て英国に留学しました。残念ながら力及ばず実現しませんでしたが、外交に関わる機会を求めて、国会議員の政策担当秘書資格を取得し、政策秘書を11年余り務めました。ですから、地域外交に大変積極的な川勝知事と共に活動できることを、本当に有難く思っています。とりわけ本年度は、県の地域外交や観光等を所管する企画文化観光委員会に所属していることもあり、単に県の事業をチェックするだけでなく、具体的な提案や自らもお手伝いできるところは積極的にしていきたいと考えています。

  
※(左)シンガポール全国旅行業協会(NATAS)主催の国際旅行フェアでの静岡県ブース。浴衣や法被を着て宣伝 (中・右)猛烈に?静岡観光をPR!!(8月24日)


 「地域外交」は、川勝知事が従来の「国際交流」という用語に代えて使用している言葉で、庁内には「地域外交局」が設置されています。「外交」と言いますと「国が行なうべきではないか」という意見、あるいは、「モンゴル・ドルノゴビ県(人口約6万人)のような小規模の自治体と交流してどれ程の経済効果があるのか」等の批判的な声が時々聞かれます。もちろん、防衛、TPPのような関税・貿易等に関する取り決め、通貨等に関しての外交は、国レベルで行われるべきものです。経済や観光等に関するプロモーションも首相や大臣によるトップセールスは重要です。しかし、国が特に静岡県のために常に外交的なことをするわけではありません。具体的な交流実績や成果を挙げるには、県が市町や民間企業・団体と連携して継続的に地域外交を行なっていくしかありません。


シンガポール日本文化協会を訪問。左端は当協会の会長で静岡県対外関係推進員でもあるGan Siang Kiong氏。私の右隣の女性以外の3人は日本留学の経験があり日本語ペラペラです。(8月25日)


 例えば、台湾視察では、国交がない日本との窓口機関である亜東関係協会の黄明朗秘書長らと懇談しましたが、実は「他県からも同じ日時での懇談の要望があったが、静岡県の方が関係は長く深いし先約でもあったので、幹部職員は当県との懇談を優先した」ということでした。また、モンゴルやシンガポールは人口規模から言えば小さい国ということもあり、交流している日本の自治体はわずかですが、その分、逆に、より熱烈な歓迎を受けているように思います。ドルノゴビ県を訪問した際には、夜遅い時間帯にもかかわらず静岡県の旗等を掲げて駅で出迎えて下さいましたし、友好協定1周年を祝う横断幕やポスターが市内各所に見られました。また、静岡直行のチャーター便だけでなくソウル経由で静岡に来るモンゴルの方も増えているということですし、今回お会いした企業家にも、自己負担してでも静岡にもう一度行きたいという方々が多くいました。更には、お話を伺った清水武則・駐モンゴル日本大使によれば、本年度の経済成長率は世界最高の20%位になるだろうという正に高度成長期にあるモンゴルですので、今後、工業、農業、上下水道・電気・道路のインフラ整備等の分野で協力し合えば、静岡県にも様々な経済的恩恵がもたらされることと思います。


※(左)サインシャンド駅でのお出迎え。明るいですが既に夜8時を過ぎています。(7月29日)
(右)ホテル内に貼られていたポスター(7月30日)


※静岡新聞記事(8月26日)


 人口減少社会に突入した日本そして静岡県にとって、海外との人的・経済的交流を促進することが一層肝要ですし、その為には、更に県が積極的に地域外交を展開することが不可欠です。私も微力ながら、出来る限り県の地域外交に貢献していきたく思います。


 お読み下さり、ありがとうございます。(9月11日)


★追記(9月14日)


※県立三島南高校の生徒がシンガポール研修(三南の翼2012)で県の東南アジア事務所が置かれているJETROシンガポール事務所を訪れ、長谷川事務所長からシンガポールについて基本的な説明を伺うとともに、シンガポールで活躍している静岡県出身者から海外で働くことについて話を聞きました(8月22日)。私はオブザーバーとして参加し、質問に答えました。三南生の皆さんの今後の活躍に期待!


※静岡新聞記事(9月14日)。記事にもありますように、テン(Teng)氏もGan氏と同じく県の対外関係推進員で、日本で留学や働かれた経験もあり日本語がペラペラです。Gan氏と共にシンガポール滞在中にお会いしました。今回の来静ではお会いできませんでしたが、テン氏の奥様とはお話をさせていただきました。こうした交流を通じてシンガポールとの関係が更に深まればと思います。

★追記(9月21日)


※中日新聞記事(9月16日)。記事の通り、テン氏は大変気さくな方です。ご自身でもコンサルタント業をされると同時に、シンガポールのオマーン大使(※但し、オマーンには駐在していないnon-residentの大使)も務められています。そうした方が静岡県のためにも働いて下さることは大変有難いことだと思います。


※静岡新聞記事(9月20日)。テン氏に続きガン氏も来静され、県庁で再びお会いする機会を得ました。記事にありますように、多くのシンガポールの方との富士登山、そして可能であればチャーター便も来夏に実現できるよう、これから努力してみたいと思います。


積極的に、守り、活かしたい南アルプス

2012-08-18 | 活発!な活動報告
 8月5日から7日の2泊3日の日程で、私も所属する日本高山植物保護協会(JAFPA)の高山植物観察山行に参加し、南アルプスの千枚岳、丸山、鳥森山に行ってきました。JAFPAの皆さんの目当ては高山植物ですが、私の主目的は、シカによる食害の実態と観光資源としての南アルプスの調査です。富士山頂上にまだ登ったことがない私にとっては、初めての登山らしい登山なので、最初はドキドキしながら参加してきました。

 南アルプスの静岡県側、静岡県の天辺である最北端の井川地域一帯は、公有地ではなく特殊東海製紙株式会社の社有林、つまり私有地です。その一部は南アルプス国立公園に指定されていることから、畑薙第一ダムの北にある沼平ゲートの以北は一般車両は通行できません。入山者は、沼平ゲートから歩くか、登山小屋に泊まる方用に無料運行されている東海フォレストもしくは井川観光協会の送迎バスでロッヂや登山口まで行くことができます。今回は、東海フォレストさんによる送迎と案内で、千枚小屋椹島ロッジに宿泊してきました。

 まず目指したのは、千枚小屋です。千枚小屋は、以前の建物が2009年6月に全焼したため、この夏に再建されたばかりの小屋です。小屋自体は県のもので、管理は東海フォレストが行なっています。

 
※千枚小屋写真。右側は千枚岳に向かう登山道からのもの。実際に我々が泊まったのは、すぐ隣にある別の建物でした。


 千枚小屋の周囲には、マルバダケブキの黄色い花が沢山咲いていました。千枚小屋に来る途中でガイドの方から、最近は小屋の工事等があって人も多かったから小屋付近にはシカはあまり姿は見せないが、夜にはシカの鳴き声が時々聞こえたりしますよと伺っていましたので、シカがいるとは言っても、千枚小屋周辺では、食害と言えるような被害はまだないのだろうと最初は思いました。ところがJAFPAの方に尋ねてみると、シカはマルバダケブキを食べないので、マルバダケブキばかり咲いているのは、シカによる採食の影響だろうということでした。一面に緑や花があるからといって、シカの被害がないとは限らないのです。

 
※千枚小屋周辺で見られたマルバダケブキの「お花畑」


 同様に、緑の中をよーく見ると、シカの採食の後はあちこちにありました。

   
※茎の途中から食べられています。左2枚は千枚小屋から下る登山道の途中にて。右二枚は鳥森山への登山道にて。


 また、これらもシカの採食の影響です。

  
※ひょろひょろと背が高い植物は、時代劇でよく出てくる毒草のトリカブトです。シカはトリカブトも食べませんので、トリカブト以外が食べられた結果、トリカブトだけが成長し、周りの背の低い植物は最近になってまた芽が出てきたものだろうということでした。千枚小屋から下る登山道にて。


 さて、いよいよ千枚岳に登ります。JAFPAの会員とはいえ、花の名前や見分け方は全く分からず、名前を教えてもらっても殆ど忘れてしまいましたが、高山植物は厳しい環境で育つせいか、可憐で健気だなあという印象を共通して持ちました。


 
※私が特に気に入った花の一つ。ツメクサの一種(色々種類があるそうですが正確にどれかはわかりません…)。岩を背にすることで強い風雨に耐えながら成長しているような様がいいですね。千枚岳への登山道にて。


 そして千枚岳頂上です。自分にとっては、記念すべき、登山らしい登山での初登頂です。

 
※(左)一緒に登ったJAFPAのグループの皆さんと(右)千枚岳からの風景。この日は雲がやや多目でした。


 翌朝の千枚小屋からの早朝の風景。コンパクトカメラでの撮影ですが、それでもなかなかの景色に見えませんか?

 
※(左)日の出と富士山(右)雲海に浮かぶ富士山。特に外国の方が見たら喜びそうな風景だと思います。


 千枚岳の先にある丸山に向かうため、再び千枚岳を目指します。

 
※(左)千枚岳に向かう途中で見えた雪渓(右)同じ場所でのパノラマ写真。時折雨も降った天気でした。


 千枚岳の先には結構な崖が待ち構えていました。


※自分は正直、恐怖を感じながら下りましたが、登山に慣れているJAFPAの方々はすいすいと下りていきました。


 千枚岳から丸山に向かう途中の尾根では、実に様々な高山植物が花を咲かせていました。

  
※(左)恐らく、ミネウスユキソウ。小学校で習った「エーデルワイス」の花に近い種類のものだそうです。
(中)恐らく、エゾイワツメクサ
(右)何の花だと思いますか?実はトリカブト(何種類かあるそうですが、どれかはよくわかりません)の花です。綺麗な花にはご注意!


 尾根伝いを越えると、丸山が見えてきます。その途中には何とライチョウが!

  
※(左)先に見えるのが丸山
(中)真ん中に見えるのが親のライチョウです。右には子供も。雨模様の天気だとタカやワシのような天敵は飛んでこないので姿を現したんだろうということでした。
(右)ライチョウの親子。全部は写っていませんが子供は6羽ほどいました。人を恐れる気配はありませんでした。


 そしてやっと丸山に到着です。


※ガイド役の東海フォレストの鈴木さんと一緒に。慣れているので軽装です。自分にとっては丸山(標高3032m)がこれまでに登った最高峰です。


 あとは、来た道を戻り、千枚小屋に預けた荷物を取って、椹島ロッジへ向かいます。

 
※(左)千枚小屋から下りる登山道で見つけた花。葉や花の開き方がいいですね。名前は不明です…
(右)椹島ロッジに隣接する南アルプス白籏史朗写真館。山岳写真家の白籏氏は、JAFPAの会長でもあります。


 翌日は鳥森山へ。

 
※(左)実がきれいなのですが、名前は不明です…
(右)葉の形に見覚えありませんか?「葵の紋所」の原型であるフタバアオイです。フタバアオイは文字通り2枚の葉のある植物で、徳川家の「三つ葉葵」は架空のものだそうです。


 途中には再びシカの痕跡があちこちに見られました。

     
※どれもシカによる被害と思われるものです。シカは一度かじってから、木の皮を上にはがそうとするので、細い木にはそうした跡がはっきり残っています。太い木のものは、食害というよりは、オスシカが角をこすりつける剥皮害の跡かもしれません。一番右の木の跡は古いもののようですが、流れ出た樹液は泣いているようにも見えます。


※これはクマの爪跡です。


 そして鳥森山に到着。

 
※(左)鳥森山山頂からの眺め。中央から少し右にある草木が生えていない尖った山が赤石岳だそうです。
(右)中央からすこし右が千枚岳。そこから左に戻れば丸山です。


 長いブログとなりました。私が申し上げたいことはタイトルにあるように2点です。

 1.積極的に守ろう: 今回登った千枚岳・丸山・鳥森山周辺は比較的シカの被害が目立たないところです(だと思います)。既に「お花畑」や貴重な高山植物等が消滅しつつある場所は南アルプスにも何箇所もあり、行政でも防鹿柵を設置するなどの対策を実施していますが、南アルプスを柵だらけにする訳には当然いきません。やはりシカの数を減らさないといけませんが、2千mもの山々に登ってシカを捕獲あるいは狩猟することは容易ではありません。根本的な解決には、従来の対策だけでなく、私も理事を務める日本オオカミ協会が主張するような対策の研究や導入を真剣に考えなければならない段階に既にきてしまっていると考えます。


※アメリカ・イエローストーン国立公園の「ビフォー・アフター」を紹介したイラスト(出典:ナショナル・ジオグラフィック)。詳しくはこちら

 2.積極的に活かそう: 静岡県側の南アルプスは、マイカー規制があることに加え、井川地域までのアクセスが必ずしも容易ではない(※「市内」である私の自宅(静岡駅南口から歩いて10分程)から畑薙第一ダムまで80km余りですが、途中の道が狭いこともあり、車で3時間近く掛かりました)ため、入山者数は限られています。しかしそのことにより、保たれている自然度はかなり高く感じました。登山道等でもゴミらしいゴミは殆ど見かけませんでした。現状の規制は維持しながらも、南アルプスの魅力を、本場のアルプスにも負けない素晴らしさを(スイスに行ったことはありませんが…)、日本国内はもとより海外にアピールできれば、より大きな経済効果も期待できるのではないでしょうか。例えば、まだ行ったことはありませんが、二軒小屋ロッジの新館は山小屋ながらツインルームであるなど、高級感あふれるところ(のよう)です。ただ利用者数に限りがありますので、自然に無理が無い程度に増設したり、あるいは椹島ロッジにも同様の施設を儲け、外国語対応も出来るようにすれば、外国人登山者あるいは観光客も呼び込めるのではないでしょうか。

 私有地ですが、静岡県の誇る貴重な財産でもある南アルプスを、積極的に守り活かしましょう!私も県議会の企画文化観光委員として、色々と考え提案していきたいと思います。

 最後までお読み下さり、ありがとうございます。






 

県議会における議事録を掲載しました。

2012-07-10 | 活発!な活動報告
 6月議会も、残すところ、最終日(7月11日)の本会議のみとなりました。

 本会議での代表質問や一般質問は、静岡新聞や中日新聞等でその概要が掲載されますし、閉会後しばらくすれば議会便りとしてご家庭に配られますので、それらを読めば、議論の大まかな中身はお分かりになるかと思います。一方、委員会での議論については、何か話題性のある答弁や議論がないと、なかなか採り上げてもらえません。ただ、議員にもよりますが、念入りに調査して議論に望む方もいますので、本来であれば、より時間をかけて細かく質疑をする委員会の方が「面白い」ですし、もっと注目されるべきだと思っています。

 私も結構時間を掛けて過去の議事録や様々な資料にあたったり、現地視察に行ったりしています。本年度は企画文化観光委員会に所属していますので、今回は、改めて、グランシップ(及び静岡県文化財団)静岡芸術劇場、舞台芸術公園(およびSPAC)、県立美術館を視察し、事業仕分け的な観点から点検するなどしてみました。

 委員会の良い点?は、本会議とは違って、各委員の持ち時間が特に決まっていないことです。国会では委員会でも基本的に時間が予め決まっており(会派の人数に応じて時間が割り振られる)、最初の議論が長引いて、折角準備したにもかかわらず何問か質問できなかったということはよくありました。静岡県議会の委員会では時間が決まっていませんので、要領よく簡潔な質問であれば、基本的には、何問でも出来ることとなっています(ただし、一問一答形式での質問は出来ないため、最初の発言ですべての質問をしなければならない)。しかしながら、これまでの「悪しき慣習」のせいか、答弁も含めて1人で1時間ぐらい質問をしていると、「早く終われよ…」と言わんばかりの野次的な小言とか舌打ちが一部の議員から聞こえてきたりします。要領を得ない部分については申し訳ないと思いつつも、「議員は質問して何ぼ」だと思っていますので、ただでさえ限られた質問機会を最大限活用するのは議員にとって当然だと考えています。


※7月5日の企画文化観光委員会

 今回の6月議会の議事録が完成するまでには何と2ヶ月位もかかるのですが、これまでの議事録については県議会のHPに掲載されていますので、この度、その中で私の発言があるものをまとめて、「思慮深い?資料庫」に掲載致しました。委員会(総務委員会)の議事録については検索できる形にはなっていませんので面倒をお掛けしますが、お目通しの上、ご意見等、賜れば幸いに存じます。

 お読み下さり、ありがとうございます。

バングラデシュと交流促進!

2012-05-23 | 活発!な活動報告
 5月20日、我が会派の林芳久仁議員に誘われ、林議員が会長を務める「静岡市バングラデシュ交流協会」の設立記念パーティに参加しました。


※5月23日静岡新聞記事

 当協会は、静岡市内でバングラデシュ料理店「ベンガルキッチン」等を経営するバングラデシュ人のニアズ・アハメドさんや林議員らが、部活動で使用し卒業のために不要となった衣類やシューズ等を市内の高校生らから提供を受けてバングラデシュに送る活動を始めたことをきっかけに設立されました。この活動は教育委員会等のご協力は頂いているものの、基本的には、民間企業や一般の方々のボランティア・支援により行われており、非常にいい形での活動だと思います。川勝知事は地域外交の推進を主要政策の一つに位置付けていますが、こうした草の根、民間の活動を行政や議員がバックアップしていくというのが、あるべき地域外交だろうと考えます。

 パーティでは、バングラデシュの現状等についても話を伺いました。そこで、改めて思いましたのは、インドはもちろん、最近ではミャンマーも報道されることが多くなりましたが、その隣国のバングラデシュについては、名前は良く知っていても、どういう状況かは殆ど報道されていないなあということです。人口が1億4千万人以上いる大国であるにもかかわらず報道されないのは、日本との関係が深くない、そして、まだまだ貧しい国であるからということだと思いますが、ニアズさんらによれば、インフラ整備が不十分で頻繁に停電するために、日本も含めた海外の工場が進出しにくいということのようです。逆に言えば、企業進出や交流促進の余地・可能性が非常に大きいということになりますので、今回の活動をきっかけに、静岡とバングラデシュとの友好や交流が深まればお互いにとって有益だろうと思います。私も出来るところから関わっていきたいと思います。

 ちなみに、パーティ会場となった「ベンガルキッチン」は、両替町のドン・キホーテの東向側にあります。ぜひバングラデシュ料理を楽しんでみて下さい!

 お読み下さり、ありがとうございます。



すずき関連記事2つ

2012-05-13 | 活発!な活動報告
 この度、私関連の記事が2つ掲載されました。


※2012年5月10日静岡新聞記事

 1つ目は、静岡新聞が県内の経済人や政治家等の考え・近況について掲載する「政経プラザ」です。昨年6月に続く2回目となりました。「政経プラザ」は以前より字数が減りましたので本当に簡単な記事ですが、取材は10分位は受けたと思います。相変わらず記者さんは上手に要点をまとめるなと再認識しました。


※プレス民主2012年5月11日増刊号記事
(記事内の写真に写っているのは林芳久仁・県議会議員

 2つ目は、民主党が月に2回発行している機関誌「プレス民主」の記事です。民主党本部から静岡県連に地方議会での取り組みに関する投稿の依頼があり、私が担当しました。

 どちらも「食の安全・安心推進条例」の検討・策定に関する内容が中心となりました。次は、同条例案が可決されたとの記事がなるべく早く掲載されるよう頑張ります!

 お読み下さり、ありがとうございます。


条例を作る!

2012-04-24 | 活発!な活動報告
 現在、県議会では、議員提案による3つの条例の策定を目指し、検討委員会を設置しています。その1つが、私が所属する民主党・ふじのくに県議団が提案会派となっている「ふじのくに静岡県食の安全・安心推進条例(仮称)」で、第1回目の検討委員会が昨日開催されました。


※4月24日 静岡新聞記事

 昨年来の福島第一原発事故による放射能汚染問題に加え、生肉食中毒事件等の食の安全・安心にかかわる深刻な事件・事象が続いていることが、こうした条例の制定を目指す大きなきっかけとなっています。静岡県には既に「しずおか食の安全推進のためのアクションプラン」があり、これに基づいて様々な対策を実施しています。ただ、このアクションプランを策定・実行しなければならない根拠があるわけでなく、言い換えれば、県側が止めようと思えば止められるものです。継続的に食の安全・安心を確保するための対策を実施していくには、今回のような条例がやはり必要であると考えました。また、この条例では、県独自の罰則規定も設ける予定ですので、より実効性のある対策の実施が可能となると考えています。

 検討委員会の委員は全10名。我が会派からは会派の会長である野澤義雄議員小長井由雄議員と私の3名が委員となっています。条例の策定を提案するに当たり、我が会派では昨年6月にプロジェクトチーム(計10名)を作り、小長井議員が座長で私が事務局長を務めながら素案作りを進めてきました。今回の検討委員会では提案会派として野澤会長が委員長、小長井議員が副委員長に就任し、第1回目の委員会では小長井議員が提案理由の説明や質疑に対する答弁を行ないました。

 野澤会長、小長井議員とも農家の方であり、また以前に条例作りを行なった経験もある一方、私は条例作りが初めてということもあり、まだまだ事務局長らしいことは出来ていません。今回は小長井議員が中心的な役割を果たしており、私もこれからしっかりやらねばと思っています。ただ、正直、これは本当に大変だと思いましたのは、国会と比べ、議員提案で条例を作るための体制が極めて貧弱であるところです。

 国会では、野党側が提案する法案は、当然ながら、議員が作成し提案する議案です。また政府が提案しにくい法案を、与野党の超党派の議員で作成することもあります。他方、政府が提案する法案は「内閣提出法案」であり、各省庁が作成(もちろん政府内の議員だけでなく与党議員も作成に加わります)し、内閣法制局のチェックも受け、最終的には閣議決定されて提案されます。議員提案の場合には、各政党の政策調査担当の職員も作成に加わるだけでなく、衆議院・参議院にある調査局や法制局そして国会図書館等の協力も得ながら法案を作っていきます。それでも政府側に比べれば情報量や作成能力に差がありますが、両院の調査局や法制局、国会図書館の調査員はかなりの専門家ですので、結構な数の法案を議員提案でも作ることが可能となっています。

 それに比べ、地方議会では、残念ながらそうした体制は殆どないというのが現状です。議会事務局に調査担当の職員はいますが、数は決して多くなく、また法制局のような法律・条令の専門家が静岡県議会の場合には配置されていません。図書館は静岡県議会にもありますが、調査員はゼロです。ですから、専門的な情報は執行部(県)側に頼るしかなく、それでは県側に都合の良い情報しか手に入らない可能性がありますので、あとは議員自身で探してくるしかないのです。もちろん、議員自身が勉強や調査をしなければいけないのは当然ですが、専門家ではない議員だけでの作業には限界があります。地方議会の改革が叫ばれている中、議員自身の変革と同時に、そうした議会事務局の体制の強化もやはり必要です。今回改めて実感しています。

 ただ、無い物ねだりばかりしても仕方ありません。幸い、今回の「食の安全・安心」に関する条例は既に28都道府県で制定されていますので、そうした先進県の例を大いに参考にしながら、しっかり作っていきたいと思います。是非ともご意見、ご助言をお寄せ下さい!

 お読み下さり、ありがとうございます。

海外視察報告-台湾・鳥山頭(うさんとう)ダム、八田與一(はったよいち)記念館

2012-04-19 | 活発!な活動報告
 この3月下旬に、上海と台湾をそれぞれ県議会の議員連盟の一員として視察に行ってきました。その報告を何回かに分けて行いたいと思います。

 まず、議員連盟(静岡県議会日華友好議員連盟)で作成した台湾視察報告書の中で、担当として以下の報告を書きましたので掲載致します。

 報告資料 「鳥山頭ダム・八田與一記念館

 日本統治下の台湾で、「鳥山頭ダム」と「嘉南大圳」の建設を指揮した八田與一氏の功績を解説した資料館、記念館、銅像等と、それらが設置されている鳥山頭ダムを視察した。

 鳥山頭ダムは貯水量1億5千万立方メートルを有し、その水は総延長1万6千キロメートルの水路「嘉南大圳」を流れ、15万ヘクタールの田畑を灌漑するという大規模なものである。当時としては珍しい工法を採用し、アメリカで使われていた大型土木機械の導入や、工事現場の近くに作業員の宿舎や福利施設を設けるなど、様々な点で注目すべき大型プロジェクトだったのは間違いないようだ。しかし私が特に関心を持ったのは、八田與一氏がどのような理由・背景から台湾で称えられているかという点である。

 八田與一氏の技術者としての高い才能、統治される側だった現地の台湾人を差別することなく扱ったり、作業員の福利厚生にも十分配慮したという人柄、あるいは、太平洋戦争中に軍の命令でフィリピンに向かう途中アメリカ軍の潜水艦による攻撃に遭って死亡、その遺体は偶然にも山口県沖で漁師に発見され、遺骨は鳥山頭に「帰郷」、そして終戦直後に妻の外代樹さんが夫の後を追うかのように鳥山頭ダムの放水口に投身自殺した等、八田氏の人格や生涯は非常に「劇的」であり、人の心を打つ要素が豊富である。現地での賞賛の様子を実見し、同じ日本人として大変嬉しくもあり、また誇りにも思えた。

 他方、やや過剰な賞賛の様相も感じなかったわけではない。そこで帰国後、短時間ながら調べたところ、『植民地台湾を語るということ-八田與一の「物語」を読み解く』(胎中千鶴著・風雲社)がその一端を説明しているように思われるので、その要旨を紹介したい。

 ダム完成(1930年)後間もなく作られた八田氏の銅像が戦中・戦後を「生き延びた」ことからもわかるように、八田氏の「物語」は、現地の方や関係者には語り継がれていたものの、台湾で広く知られるようになったのは、1997年に発行された中学生向けの歴史教科書で八田氏が紹介されてからという。実は意外にも最近のことである。またそうした歴史教科書の発行に大きく影響しているのが、1988年に初の台湾人総統に就任した李登輝氏である。李登輝氏は総統就任後、台湾の民主化を進めたが、民主化と同時に「台湾人意識」が高まった。つまり、大陸中国とは違う台湾人としてのアイデンティティが強く意識され始めた中で広く語られるようになったのが八田氏の物語だということである。

 胎中氏によれば、そうした八田氏の物語は台湾人の主体性という観点から語られているものであり、八田氏が日本人であるということはあまり重要ではない。嘉南地域あるいは台湾に大きな貢献をした人物が八田氏であり、その人物がたまたま日本人だったということである。台湾はとても親日的だから八田氏も賞賛されていると考えてしまうことは、大きな誤解につながる可能性があるのである。

 また、八田氏の物語を観光の目玉として活用しようという動きも、恐らく、八田氏の物語の「ドラマ化」につながっていることと推察する。ダムの隣には八田氏を顕彰する記念館や公園が整備され、今もなお建設中の部分もあったが、多額の資金が投入されているように思われた。ダムも含め一連の施設は「嘉南農田水利会」という民間団体によって経営されている。作る以上はそれなりの観光客も呼び込まなければならない。そのためには八田氏の物語を劇的に演出する必要もあるだろう。

 いずれにしても、八田氏の功績が日台間の距離を縮めていることは間違いない。今後ともお互いの歴史や想いへの理解にも努めながら、八田氏の功績が語り継がれることを望みたい。


※八田氏の銅像と八田夫妻の墓(奥)。八田氏は「神」であるため、墓碑の文字には最高の色である朱が入れてあるとのこと。


※外代樹さんが投身自殺した放水口と資料館(左上の四角い建物)


※記念館に掲げられている八田夫妻を説明した看板


※ダム・記念館の前を通る「八田路(通り)」

 お読み下さり、ありがとうございます。

一般質疑を終えて⑤-質疑の概要と解説③

2012-02-02 | 活発!な活動報告
 これで最後です。お付き合い下さい。

③富士山静岡空港の国際便増加に向けた取り組みとシンガポールとの関係促進について

問(鈴木) 人口減少や空港間競争の激化という状況の中、静岡空港に残された時間はあまりない。格安航空会社(LCC)による国際便の誘致やシンガポールとの定期便就航の早期実現を目指すべきではないか。

答(県) LCCの新規就航については、できる限り早期に実現するよう粘り強く誘致を続ける。シンガポールとの関係促進については、現地の外部人材を活用するなどしてシンガポールにある県の駐在員事務所の機能強化を図りながら、幅広い経済を中心とした交流を促進したい。また、そうした交流の発展を見極めながら、航空会社に路線就航を働きかけていきたい

解説: 妻がシンガポール人ということもありシンガポールにはほぼ毎年のように行っています。行く度に感じるのは、常に変化し続ける、人や情報が日本では考えられないほど行き交う都市国家だということです。日本は1億2千万人を超える人口をかかえるにもかかわらず、日本を訪れる外国人は平成22年で約950万人(平成23年は大震災等もあり約714万人)です。一方、シンガポールは国籍や永住権を持つ人口が約380万人と静岡県と同程度ですが、年間の外国人入国者数は1千万人を超えています。国土も小さく、資源らしい資源が日本以上に無いシンガポールにとって、とにかく多くの人や情報(そしてモノやカネ)を引きつけて関係を深化させることが同国の生き残りには欠かせないのです。そうしたシンガポールとの関係を発展させることができれば、とても「効率よく」人脈や情報等を得ることができるのですから、シンガポールと静岡そして日本との関係促進に、私も微力ながら貢献していきたいと考えています。


※本国のシンガポール航空事務所を訪問し静岡空港をアピール!(平成23年8月)


※1月26日静岡新聞夕刊記事。ついに本腰を入れるか!と思い、具体的に何をするのか県の担当者に確認したところ、来年度も引き続きLCCも含め新たな就航便の実現に向けて努力するが、記事が言うように何か新たに取り組むという訳ではないとのことです。ただ、既にある需要をかき集めるだけの取り組みでは大したことはできないのですから、新たな静岡への観光需要をアジアで大々的に創り上げるつもりで取り組んで頂きたく思います。自分も微力ながら頑張ります。

 お読み下さり、ありがとうございます。






一般質疑を終えて④-質疑の概要と解説②

2012-01-29 | 活発!な活動報告
 昨年12月9日の一般質問の概要について引き続き解説したいと思います。

②ニホンジカ等による被害対策としてのオオカミ再導入について

問(鈴木) ニホンジカ等による被害は全国的な問題だが、管理に成功している例はない。狩猟の強化や柵等の設置による対策は対処療法に過ぎず、特に、世界文化遺産登録を目指す富士山周辺や三千メートル級の南アルプスのような地域ではおのずと限界がある。被害対策の一つとして、日本オオカミ協会が提唱するオオカミ再導入の可能性について、近隣県と連携して調査研究すべきではないか。

答(県) オオカミ再導入については、中山間地域の居住者や家畜、あるいは登山者等への安全対策、オオカミが増えすぎた場合の捕獲手段、オオカミの行動範囲が広いため県境を越えた対策など解決すべき課題が多いことから、再導入の可能性については日本オオカミ協会も含めた関係者の意見を聞きながら研究していく。また、機会があれば、米国のイエローストーン国立公園等の先駆事例の現場を調査したい。

解説: 現在、静岡県には4万頭以上のシカが生息すると推定され、その被害は深刻です。特にシカが適正頭数以上いるとされているのが、伊豆地域、富士山周辺及び南アルプス地域です。伊豆地域においては平成16年度から特定鳥獣保護管理計画に基づいてニホンジカを適整頭数にまで戻す努力を続けていますが、富士山周辺や南アルプス地域については現在策定中の保護管理計画に従って今年の4月から本格的な対策を実施する予定です。

 「オオカミ再導入」について触れると「人を襲ったらどうするんだ」という反応が必ずと言っていいほどあります。オオカミは例えばヨーロッパ28カ国に2万頭以上生息していると言われています。ドイツ、イタリア、スペイン等、旅行でもよく訪れる国にも生息していますが、そうした国に行かれる際「オオカミに襲われるかもしれないから気を付けろ」と言われることはないでしょうし、「オオカミが人を襲った」というニュースを聞いたこともないと思います。オオカミは生息する地域で食物連鎖の頂点に立つ動物です。オオカミにとって怖いのはオオカミ自身であり人間です。ですから、わざわざ恐ろしい人間を安易に襲うのは理にかなった行動ではありません。あるとすれば、自分の子どもや巣が人間に襲われた場合、餌付け等により人間に慣れてしまった場合、人間以外に食料が全くない場合、そして狂犬病に罹った場合等とされています。例えば、小さな森と市街地が混在するドイツのラウジッツ地方では東西ドイツの再統一以降、保護運動のおかげでオオカミが徐々に住み着くようになってきていますが、そこでは、道端に設置された自動カメラに、車、自転車、歩行者と共に、道を横切るオオカミが写るそうです。それだけオオカミと人間が混在した形で共存しているのですが、人に慣れないようにオオカミを威嚇することはあっても、住民がオオカミに襲われた例はないとのことです。

 日本では1905年に奈良県で捕獲されたのが最後とされ、現在では動物愛護管理法の下で危険な「特定動物」としてオオカミは指定されています。つまり勝手にオオカミを野に放すことは法律違反です。しかしながら、オオカミが日本から絶滅して100年余りという状況は、日本のあるいは地球の長い自然史からすればむしろ「異常」と言えます。ですから、課題は山積ですが、先入観に囚われずに、シカ対策あるいは生物多様性を守るための手段として「オオカミ再導入」の可能性や課題等を研究することは、人間の勝手かもしれませんが、あるべき自然を取り戻す第一歩ではないかと考えます。


※ドイツ・ラウジッツ地方におけるオオカミ保護と住民との共生について解説する自然・生物多様性保護連合(NABU)のマグヌス・ヴェッセル氏(右)(平成23年10月)