少し間が空きましたが、昨年12月9日の一般質問の概要について簡単に解説したいと思います。
①東海地震の予知観測体制の強化について
問(鈴木) 現在、唯一予知が可能とされている東海地震の予知観測体制は、基本的には地震発生後の現象を観測するのに適したものであり、本来行なうべき短期予知には不向きである。気象庁も認めるように東海地震を実際に予知できるかどうかわからない以上、予知の可能性や精度を上げるために、東海大学地震予知研究センター等が僅かな予算の中で行なっている地電流・地磁気等の前兆現象の観測や研究についても、静岡県として総力を挙げて支援すべきではないか。
答(県) 地殻ひずみ以外の、地磁気・地電流・地下水等における変化から地震を予知しようという研究や観測は地震の直前予知の可能性を高めるためにも必要である。しかし、そうした前兆現象と地震との因果関係は明白でなく、基礎研究の積み上げが必要である。よって幅広い分野からの英知を集めるために国家プロジェクトとして基礎から実用化までの研究が行なわれるべきであり、引き続き国に研究の推進を訴えていく。また県としては、地震防災センターの機能強化等の中でどのような支援が可能か研究していきたい。
解説: 昭和51年(1976年)に当時の東京大学理学部助手の石橋氏が「東海地震説」を発表しました。その2年後の昭和53年には大規模地震対策特別措置法が制定されて東海地震が唯一同法の対象となって以来、唯一予知ができるかもしれない地震として東海地震の観測体制は強化されてきました。現在、静岡県内には約500箇所に観測施設が設置され、気象庁が24時間体制で観測を続けています。
そうした観測により短期予知のために捉えようとしている前兆現象が「地殻ひずみ」です。昭和19年(1944年)12月に発生した東南海地震の前日と当日に、偶然ながら地殻変動が掛川付近で観測されていたことが地殻ひずみの観測による地震予知の可能性の根拠の一つとなっています。
しかしながら、東南海地震とは震源域も異なるであろう東海地震を現在のように精密に観測したことも、あるいは予知したこともこれまでありません。また、現在想定した形で東海地震が発生するとは限りませんから、気象庁も東海地震を短期予知(数日前あるいは直前の予知)できる可能性はあるがどれ位の確率かはわからないとしています。
そうであれば、地殻ひずみだけでなく、地電流、地磁気等の前兆現象についても、24時間体制で観測・分析をする体制を整えれば、短期予知できる可能性が少しかもしれないが高まるのではないか。そのための支援を国が進めるのを待つのではなく今から県独自にでも行なうべきではないのかと、問題提起をしました。
いくら生命や財産を守るための地震予知の研究とはいえ、新たな研究に数千億、数兆円もかかるというのであれば、県独自はおろか、国としても、かなりの根拠や成功の見込みがなければ支援できないでしょう。しかしながら、東海大学地震予知研究センター長の長尾教授によれば、既に収集されているがリアルタイムでは観測・分析されていない電離層総電子数(TEC)等を24時間体制で監視するだけでも予知の可能性を上げることが期待でき、そのための予算は年間5千万円もあれば十分な効果が得られるということです。もちろん、そうした観測を行なっても予知できない可能性はありますが、予知に成功した際の成果を考えれば、投資するに十分値するのではないでしょうか。
昨年の東日本大震災は予知どころか予測や想定すら出来ていませんでした。東海地震の場合は既に大規模な観測網があること、そして、東日本大震災のように震源地が沖合いではなく、陸地に近いあるいは直下であることが予想されることから、引き続き、東海地震は予知が可能とされています。しかし、文部科学省の地震火山部会観測研究推進委員会等によれば、実は、東日本大震災においても本震発生の約40分前から、震源域の上空の電離層で前述の総電子数(TEC)の異常があったことが明らかになっています。同様の異常は、2004年のスマトラ地震(マグニチュード9.1)や2010年のチリ地震(同8.8)でも認められたとのことです。つまり、因果関係ははっきりしていませんが、そうした前兆現象を24時間体制で観測していたら、2・30分前には東北地方の方々に警戒宣言を出せていたかもしれないのです。
専門的な点は十分に理解しているわけではありません。しかしながら、これまで地殻ひずみ以外の前兆現象の研究や観測を疎かにしてきたことは、もしかすると東日本大震災で行方不明の方も含め2万人近い犠牲者を出したことに少なからず関わっているのではないかと思えてなりません。
※約7割の生徒と教職員が犠牲となった石巻市立大川小学校前にて
※正門前のお供え物と母子像
お読み下さり、ありがとうございます。
①東海地震の予知観測体制の強化について
問(鈴木) 現在、唯一予知が可能とされている東海地震の予知観測体制は、基本的には地震発生後の現象を観測するのに適したものであり、本来行なうべき短期予知には不向きである。気象庁も認めるように東海地震を実際に予知できるかどうかわからない以上、予知の可能性や精度を上げるために、東海大学地震予知研究センター等が僅かな予算の中で行なっている地電流・地磁気等の前兆現象の観測や研究についても、静岡県として総力を挙げて支援すべきではないか。
答(県) 地殻ひずみ以外の、地磁気・地電流・地下水等における変化から地震を予知しようという研究や観測は地震の直前予知の可能性を高めるためにも必要である。しかし、そうした前兆現象と地震との因果関係は明白でなく、基礎研究の積み上げが必要である。よって幅広い分野からの英知を集めるために国家プロジェクトとして基礎から実用化までの研究が行なわれるべきであり、引き続き国に研究の推進を訴えていく。また県としては、地震防災センターの機能強化等の中でどのような支援が可能か研究していきたい。
解説: 昭和51年(1976年)に当時の東京大学理学部助手の石橋氏が「東海地震説」を発表しました。その2年後の昭和53年には大規模地震対策特別措置法が制定されて東海地震が唯一同法の対象となって以来、唯一予知ができるかもしれない地震として東海地震の観測体制は強化されてきました。現在、静岡県内には約500箇所に観測施設が設置され、気象庁が24時間体制で観測を続けています。
そうした観測により短期予知のために捉えようとしている前兆現象が「地殻ひずみ」です。昭和19年(1944年)12月に発生した東南海地震の前日と当日に、偶然ながら地殻変動が掛川付近で観測されていたことが地殻ひずみの観測による地震予知の可能性の根拠の一つとなっています。
しかしながら、東南海地震とは震源域も異なるであろう東海地震を現在のように精密に観測したことも、あるいは予知したこともこれまでありません。また、現在想定した形で東海地震が発生するとは限りませんから、気象庁も東海地震を短期予知(数日前あるいは直前の予知)できる可能性はあるがどれ位の確率かはわからないとしています。
そうであれば、地殻ひずみだけでなく、地電流、地磁気等の前兆現象についても、24時間体制で観測・分析をする体制を整えれば、短期予知できる可能性が少しかもしれないが高まるのではないか。そのための支援を国が進めるのを待つのではなく今から県独自にでも行なうべきではないのかと、問題提起をしました。
いくら生命や財産を守るための地震予知の研究とはいえ、新たな研究に数千億、数兆円もかかるというのであれば、県独自はおろか、国としても、かなりの根拠や成功の見込みがなければ支援できないでしょう。しかしながら、東海大学地震予知研究センター長の長尾教授によれば、既に収集されているがリアルタイムでは観測・分析されていない電離層総電子数(TEC)等を24時間体制で監視するだけでも予知の可能性を上げることが期待でき、そのための予算は年間5千万円もあれば十分な効果が得られるということです。もちろん、そうした観測を行なっても予知できない可能性はありますが、予知に成功した際の成果を考えれば、投資するに十分値するのではないでしょうか。
昨年の東日本大震災は予知どころか予測や想定すら出来ていませんでした。東海地震の場合は既に大規模な観測網があること、そして、東日本大震災のように震源地が沖合いではなく、陸地に近いあるいは直下であることが予想されることから、引き続き、東海地震は予知が可能とされています。しかし、文部科学省の地震火山部会観測研究推進委員会等によれば、実は、東日本大震災においても本震発生の約40分前から、震源域の上空の電離層で前述の総電子数(TEC)の異常があったことが明らかになっています。同様の異常は、2004年のスマトラ地震(マグニチュード9.1)や2010年のチリ地震(同8.8)でも認められたとのことです。つまり、因果関係ははっきりしていませんが、そうした前兆現象を24時間体制で観測していたら、2・30分前には東北地方の方々に警戒宣言を出せていたかもしれないのです。
専門的な点は十分に理解しているわけではありません。しかしながら、これまで地殻ひずみ以外の前兆現象の研究や観測を疎かにしてきたことは、もしかすると東日本大震災で行方不明の方も含め2万人近い犠牲者を出したことに少なからず関わっているのではないかと思えてなりません。
※約7割の生徒と教職員が犠牲となった石巻市立大川小学校前にて
※正門前のお供え物と母子像
お読み下さり、ありがとうございます。