ガチャ。
白髪混じりの分け目もどこがどうなってるか分からない眠そうな父。まだ瞼も半開き。
「おはよ。」
「お。早いな。いつも起きれないくせに。」
「うるさいな。」
「お母さん、お茶。おい、新聞は。」
「はいはい、ご飯も持ってきますからね。新聞は椅子のとこです。」
「ふんっ。」
読んでんのか、そもそも見えてんのか分からないような顔で紙面を見ている。
「はい、どうぞ。お父さん、醤油使うわよね。」
「ん。」
おい、親父には味噌汁あんのかよ。いいけど。
「この人、結婚したんだな。かわいいもんな。」
「あ?あぁ。そうみたいだね。」
「お前も早く結婚しなさい。お父さんもお母さんも孫の顔が見たいんだから。」
「残念だけど、まだまだずっと先だね。ごめんだけど。」
ツツー。ゴクッ。
「母さん、味噌汁美味いな。」
「あら、いつもよ。」
「そうか。そりゃすまんな。」
何だこのほのぼの夫婦は。
「あのさ、今日で俺この家出ちゃうけど元気でやれよ。電話するけど。」
「母さん、お茶がない。」
「はいはい。」
「って聞けよ!」
「聞いてるわよ。あんたがいなくったってお母さんもお父さんも元気よ。電話はたまにしなさい。頻繁にしなくていいから。」
「お、おう。そろそろ行くわ。電車あるし。」
ごとっ。
荷物を玄関に置く。靴紐が片方解けていたので丁寧に結ぶ。
奥から2人が慌てて出てくる。
「あんた、これ。」
「何だよ、何も忘れてねーよ。」
「ミートソースよ。あんた好きでしょ。」
「何で?俺好きとか言ってないじゃん。」
「分かるわよ、あんた顔に出るもの。」
「えぇ?出ねーよ。まぁ、サンキュ。」
バレんだな、こーゆーのって。嬉しかったな。
「おい、これ持って行きなさい。」
「何これ。」
「手帳だ。」
「使わないよ、めんどい。」
「これから社会に出れば何かと必要だ。書く事で覚えるし見返そうと思う。使いなさい。いらなくってもいつかいる時が来るから持って行きなさい。」
「あー、ありがとうございます。」
親父は昔からそういう人だった。外に出れば人が変わったように何でも出来て人様には迷惑かけぬ様にキッチリしていた。
「じゃあ、行ってきます。」
「頑張んのよ。そして、笑うのよ。騙されなさんなよ。あんた顔は恐いのに人がいいんだから。」
「はぁ?けなしてんの?ほめてんの?笑」
「お前はお父さんとお母さんの子だ。乗り越えていける男だ。素直で優しく頑張りなさい。」
え。
今まで言ったことないじゃん、そんなこと。
今ゆーかなぁ。
「お。頑張るわ。二人とも風邪とか気をつけろよ。」
ドアノブに手を掛ける。
グスッ。グスッ。
後ろからすすり泣くような声が聞こえた。
多分母さんだ。
でも、その時すでに俺が涙を堪えていたから振り向かなかった。この顔だけは見せられない。
ガチャッ。
寒い朝だった。
そう思ったはずなのに
手にはそれらがあって
それを感じることなく。
電車でそれらの包みを開ける。
2人のに同じカードが入ってた。
「うまれてきてくれてありがとう。母」
「自慢の息子だ。父」
グゥスッ。
ばっか。泣かせんなよ。
これから大切にしなきゃいけないものに気付けました。
僕は頑張ります。
白髪混じりの分け目もどこがどうなってるか分からない眠そうな父。まだ瞼も半開き。
「おはよ。」
「お。早いな。いつも起きれないくせに。」
「うるさいな。」
「お母さん、お茶。おい、新聞は。」
「はいはい、ご飯も持ってきますからね。新聞は椅子のとこです。」
「ふんっ。」
読んでんのか、そもそも見えてんのか分からないような顔で紙面を見ている。
「はい、どうぞ。お父さん、醤油使うわよね。」
「ん。」
おい、親父には味噌汁あんのかよ。いいけど。
「この人、結婚したんだな。かわいいもんな。」
「あ?あぁ。そうみたいだね。」
「お前も早く結婚しなさい。お父さんもお母さんも孫の顔が見たいんだから。」
「残念だけど、まだまだずっと先だね。ごめんだけど。」
ツツー。ゴクッ。
「母さん、味噌汁美味いな。」
「あら、いつもよ。」
「そうか。そりゃすまんな。」
何だこのほのぼの夫婦は。
「あのさ、今日で俺この家出ちゃうけど元気でやれよ。電話するけど。」
「母さん、お茶がない。」
「はいはい。」
「って聞けよ!」
「聞いてるわよ。あんたがいなくったってお母さんもお父さんも元気よ。電話はたまにしなさい。頻繁にしなくていいから。」
「お、おう。そろそろ行くわ。電車あるし。」
ごとっ。
荷物を玄関に置く。靴紐が片方解けていたので丁寧に結ぶ。
奥から2人が慌てて出てくる。
「あんた、これ。」
「何だよ、何も忘れてねーよ。」
「ミートソースよ。あんた好きでしょ。」
「何で?俺好きとか言ってないじゃん。」
「分かるわよ、あんた顔に出るもの。」
「えぇ?出ねーよ。まぁ、サンキュ。」
バレんだな、こーゆーのって。嬉しかったな。
「おい、これ持って行きなさい。」
「何これ。」
「手帳だ。」
「使わないよ、めんどい。」
「これから社会に出れば何かと必要だ。書く事で覚えるし見返そうと思う。使いなさい。いらなくってもいつかいる時が来るから持って行きなさい。」
「あー、ありがとうございます。」
親父は昔からそういう人だった。外に出れば人が変わったように何でも出来て人様には迷惑かけぬ様にキッチリしていた。
「じゃあ、行ってきます。」
「頑張んのよ。そして、笑うのよ。騙されなさんなよ。あんた顔は恐いのに人がいいんだから。」
「はぁ?けなしてんの?ほめてんの?笑」
「お前はお父さんとお母さんの子だ。乗り越えていける男だ。素直で優しく頑張りなさい。」
え。
今まで言ったことないじゃん、そんなこと。
今ゆーかなぁ。
「お。頑張るわ。二人とも風邪とか気をつけろよ。」
ドアノブに手を掛ける。
グスッ。グスッ。
後ろからすすり泣くような声が聞こえた。
多分母さんだ。
でも、その時すでに俺が涙を堪えていたから振り向かなかった。この顔だけは見せられない。
ガチャッ。
寒い朝だった。
そう思ったはずなのに
手にはそれらがあって
それを感じることなく。
電車でそれらの包みを開ける。
2人のに同じカードが入ってた。
「うまれてきてくれてありがとう。母」
「自慢の息子だ。父」
グゥスッ。
ばっか。泣かせんなよ。
これから大切にしなきゃいけないものに気付けました。
僕は頑張ります。