むらやわたる57さい

千文字小説の未来について

約千文字小説の未来について(地球板RT2V⑥)

2019-02-05 16:17:44 | 小説

 昭和一四年五月未明。北京の町で「自転車で歩道を走ってはいけない」という規則は、ないけど自転車は車道で「若さを勝ちとるように乗るんだ」が当然とされている。歩道で自転車に乗っていて、通行人にヌンチャクで殴りつけられることもあるのは確かだが、知らず知らずのうちに「若さをさらに勝ちとろう」として歩道を走る者もいた。そんなある日に、自転車で歩道を走っていた不幸な男に事件が起きる。目撃者の証言によると、自転車に乗っていた男が突然、空へ舞い上がって自転車が回転しながらビルの五階にある窓へ吸い込まれて、直前に乗っていた男が転落したという。公安(中国の警察)はビルの五階に踏み込む。がらんとした部屋に、ロープを回転させながら巻きとる動力装置とロッカーがあって、ロープの先に自転車がひっかかっている。動力装置は巻きとる装置を別な装置で振りまわすように回転させる構造だった。犯人はビルの下に、ロープのわなをしかけて、ここで動力装置を操作していたようだ。そのとき「がたん」という音がした。ロッカーに誰かいる。公安が「出てこい」と、言うとヌンチャクを持った若者がロッカーから飛び出してきた。公安のカンフー(合気道のような武道)が炸裂する。たちまち犯人は逮捕されて洗いざらい白状した。犯人の若者は、「新世界思想集団」のメンバーで「通行人を驚かすつもりでやってる」と言う。男は「代理店」ということばをしきりに、口にしていたが男自身もよくわからないらしい。公安は手帳に「・・代理店に、行くために。代理店から連絡を受けて・・」と書く。夕方に北京市内で同様の事件がまた起こる。公安が現場に向かった。目撃者の証言によると、「園芸用のロープが歩道に落ちてて、それを踏んだ自転車が高速回転しながらビルの七階に吸い込まれたよ」と言う。公安が「乗ってた男は」と、聞いたら目撃者は「あそこの木にひっかかってから地面へ落ちて、さっき病院に運ばれたよ」と言った。公安はビルの七階に踏み込む。そこには動力装置と金属の太い棒をいじくっている男がいた。公安が「その、金属の棒は、なに」と、聞いたら男は「このオルゴールシャフトを使えば不規則に巻きとることができる」と言う。急に動力装置が動き出して、男の腰付近に当たって男が倒れた。公安がスイッチを切って、男を逮捕する。公安が「不規則に巻きとっていいことがあるのか」と、聞いたら「人生の最終段階における不規則性をこれで制御できる」と言う。

   おわり