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田舎ぐらし(34)

ー 中学の頃 ー


   中学校の校舎は木造わら葺

 中学校に上がって最初にビンタを食らった生徒は私だと思う。一学期が始まって3日目くらいだった。
机は前から3番目あたりで、教壇に向かって一番右の列。ガラス窓を挟んで外には廊下がずっと向こうへ延びていた。
 先生は教壇の椅子に座ってなにやらしゃべっていたらしい。
私は何気なく廊下の方に目をやり、教壇の方に目を戻した。すると先生の腕が真っすぐ私の方に伸びているのが見えた。手首の先がこっちへ来いと言っている。

 出ていくと、いきなりパンパンと往復ビンタがきた。教室は静まりかえった。

 なぜ叩かれたのか分からなかった。それより自分の迂闊さが情けなかった。というのは、6年生の時、中学にはすぐ叩く先生がいるから気をつけろという警報が友だちの間に出ていたからである。

 しかし、この一件で教室が縮こまることはなかった。悪童連はすぐに息を吹き返した。授業がはじまる前には、入り口の引き戸の上にチョークの粉をたっぷり付けた黒板消しを忘れずに挟んでおいたし、椅子には画びょうを置いた。休み時間には毎日廊下で騎馬戦をやった。

 放課後、3~4人で黒板に落書きしていたことがある。そこを校舎の外を歩いていた別の先生に見つかった。先生は花壇を飛び越え、空いていた窓を乗り越えて教室に入ってきた。そして、私たちを横に並ばせると、続けさまに頭にゲンコツをくらわせた。この先生のゲンコツは横に走るのでコブはいつも博多メンタイコを乗せたたように横長になった。悪童連は互いのコブを触り合い、べそをかきながら笑った。

 学校で叩かれても親に言いつける子はいなかった。うっかり父親に知れようものなら、もうひとつコブが増えるのが関の山だったからである。

 先生は叩くばかりではなかった。小学校の先生は行儀作法も教えてくれた。私は先生に言われたとおり、寝る前には寝床の横にきちんと座り、囲炉裏の火をつついている父親に向かって「お父さん、おやすみなさい」とお辞儀をして布団にもぐりこんだ。これは大抵の友だちがやっていた。

 だから、卒業式では皆 “ 仰げば尊しわが師の恩・・・ ” と大きな声で合唱し、女生徒たちは涙をぬぐった。

( 次回は ー 中学の頃 ー )
 


 

 

 
 
 
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