ー これがまあ終の栖か“茅千本” ー
スコップを足でぐいっと土に突き刺す。長靴の下でジョリッと茅の根が切れる音がする。スコップを起こし、土の塊りをふるいに放り込む。家内がふるいの向こうを持ち、私はこちらを持って揺する。土が落ちて茅の根が残る。根を向こうへ放る。
ー 定年。東京のアパートを引き払って田舎に家を建てた。家の前に200坪ばかり所有の畑がある。畑といっても10年も放っておかれたせいで茅が一面に生い茂っている。向こう見ずにもここをちゃんとした畑にしてキャベツやダイコンを植えようと考えた。
まず茅を刈らなければならない。金属棒の後ろにエンジン、先に回転刃がついている草刈り機を買った。エンジンをかけて刃を右から左に払う。茅が次々と倒れていく。実に気分がいい。鎌を使うより余程楽だ。
次は地面の下の根を取らなくてはならない。根が1本でも残っているとまたすぐに茅だらけになってしまうらしい。スコップの出番である。準備万端、スコップの先はヤスリをかけてナイフのように鋭く研いである。 ー
(次回は ー それでも除草剤は使わない ー )