ー トゲ ー
近頃はウォーキングをしていると、よく道路に栗が落ちている。イガイガの中に実がふたつ、ぴっちり寄り添っているのはまるで仲のいい夫婦だ。
さて、このままおとなしく一生添うていれば何の問題も起こらない。
ところがある時、実の間をスッとすき間風が吹き抜ける。風の原因は星の数ほどもある。そばに咲くきれいな花につい目が行ったというのは一因にすぎない。
月日が経つにつれ、吹く風は回数を増し、勢いを増し、とうとう別れ話まで持ち上がる。何年か前、相続の調停につきあって家庭裁判所に行った際、待合室で離婚の問題で来ているという若い女に出会った。行きづまればコトは家裁へ持ち込まれる。
もつれにもつれて最高裁判所まで行ったケースは珍しくない。判決まで何年かかるかわからないし、期待どおりの判決が出るとは限らない。３０数年裁判をした末、離婚が認められなかったケースもある。しかもこの間は再婚もできないのである。四面楚歌ならぬ四面トゲ。
対策はあるか。
生涯独身はさておき、５０歳になって結婚するという方法がある。人間５０歳にもなれば、人を見る目もできる。生活基盤もしっかりしてくる。体が健康なら子どもだって作れないことはない。現にそういう知人がいる。子どもにかかる費用は独身のうちから貯めておけばいい。
経済的に自立している者同士が一緒になるというのもいい選択である。子どもが学校から帰った時、親が家にいなければならないという決まりはない。一方が他方の収入に頼って暮らす専業主婦（専業主夫）の場合より、仮にコトが起きたとしても問題の解決は早いのではなかろうかと思う。
金は諸悪の根源だという人がいるが、金は世の中の問題の９割を解決してくれるというのも現実だ。
