ー 今どき、農家の後継ぎ ー
放置された隣の畑
ウォーキング中にふと足を止めて話し込むことがある。
先日2日続けてそんな機会があった。
最初は畑で切った枝を燃やしていたおやじさん。
昨年知り合った。同年配である。こちらが野菜作りは素人だというと、種まきから水やり、肥料のことまで細かく教えてくれた。
あたりには所々葉物が残る5~6反の畑が広がっている。
「この畑、先々どうするの?」「子供さんいるんでしょ?」
いささか無遠慮は承知で聞くと、「子供はいるけど、農家を継ぐ気はないらしい。だから、機械は全部処分してしまった」、「向こうにも田んぼが1町歩ばかりあるが、そこは人にやってもらっている」と半ば投げやりである。
次の日は畔の枯草を焼いていたおやじさん。
初対面である。見たところこちらも同年配。畑には丈の低い麦の緑が一面に広がっている。足を止めて火に手をかざしながら、「いつもきれいにされてますね」と声をかけた。
麦を植えるのは、まわりの畑や家の方に土ぼこりが飛んでいかないようにするためらしい。そこまで気を使うんだ、と思いながら話していると、「この畑、なにか作る気はないかね。貸してやるよ」という。
昨日の話が頭にあるものだから、つい後々のことを聞いてみた。やはり子供には農家を継ぐ気がないらしい。あたりを見ると、おやじさんの所有ではなさそうだが、もう何年も機械を入れていないような畑が2~3枚ある。枯草が茫々として見る影もない。
他人事ながら考えた。
農家をやる人間がいなくなると田んぼや畑はどうなる? 狐や狸の棲み家になる。
いや、待て待てと自分にブレーキをかけて、後継ぎのいない農家ばかりではなかろう。定年になったらやるという子供もいるだろうと思い直す。
そうは言っても、と 狐 が言う。
爺になって果たして米や野菜をつくるノウハウが身につくだろうか。水や肥料でしくじったら、とれた米は牛か馬のエサにするしかない。
狸 も口を出す。
それより儲かるの? 枯草のおやじさんはこのところ米も安くしか売れないと言っていたじゃないか。トラクターなど機械一式を買うとなると、2千万円はかかるらしい。
狐狸が口をそろえる。
そうすると、行きつく先は廃業だ。
農家はスーパーに米を買いに行く。棚に並んでいる米は多分外米だ。そういえば昔、黄変米というおそろしくまずい米があったよな。
( 次回は ー 住宅ローン ー )