ー 年金の行方 ー
「社会保障クライシス」
野村総合研究所 山田 謙次
(田舎ぐらし(36)から続く)
国の借金がこんなに膨らんでしまった原因は「甘やかし」にあるのではなかろうか。子どもはあれも欲しい、これも欲しいと言う。すると親、つまり国は借金してまで買ってやる。この子はこういう子に育てようというきちんとした考えを持っていないから、際限なく子に振り回される。
甘やかしと言えば、ウォーキングの途中よく公園に寄る。ワン公がたくさん歩いている。ほとんどが小さい愛玩犬である。ある時、危うく吹き出しそうになる光景を見た。飼い主がリードを引っ張っているのに、ワン公は前足を突っ張ってどうしても歩こうとしない。何度引いても言うことを聞かない。飼い主はあきらめてしゃがむと、両手を出した。途端にワン公は矢のように腕の中に飛び込んだ。
国の借金についてはいろいろ言われている。
借金と言っても日本の場合は家族マージャンみたいなもので、家族全体でみればプラスマイナス零だ。他国が借金を返せと踏み込んでくることはないのだからいくら借金しても心配ないとか、現代貨幣理論だとか、ベーシックインカムだとかいう妙案、珍案が紙面や画面をにぎわしている。どれも「甘やかし」の域を出ない。
中には恐ろしいほどのインフレを連れてくる案もあるらしい。
これ以上借金を増やさない、つまり年金をこれまでどおりもらい、消費税を今のまま10%に押さえ、病院で払う治療費の自己負担を今のまま2割、3割に押さえておきたければ、あるいは借金を少しづつでも減らしたければ、みんなして働くしかない。昔は中学校を出てすぐに働くのは珍しくなかった。勉強したい者は働きながら定時制や通信制や夜間の高校へ通った。父母に仕送りもした。
少し前、著名な仏の人口学者で、大の親日家のエマニュエル・トッドさんが日本に来て、それをNHKが特集して放映した。
東京の公園に出かけ、そこで若い母親たちが子どもを遊ばせているのを見た。そしてフランスではこの時間にこういう光景は見られない。子どもは施設に預けて母親たちは働いている、このままだと日本は悲惨なことになると言った。
この先も公園の様子は多分変わらない。よって年金も悲惨なことになる。
・・・ ついでながら、ベーシックインカムというのは基本所得補償のことで、大人も子供も働いていようがいまいが一律、例えば月7万円支給する、というものらしい。
これについては反対の立場から、「私が一番気になるのは、働くことによって給与を得るという、勤労と報酬の対応関係がなくなることだ。働くことはつらいこともある反面、報酬を受け取る喜び、やりがい、社会的承認を獲得し、自立心と自尊心が持てる。」とのご意見がある。(上智大学名誉教授 大和田 滝恵「ベーシックインカムの是非」2020.12.10 フジサンケイビジネスアイ 論風欄 )
(次回はー なぜ家庭菜園をやってるの? ー )